次のライフスタイルは“ほどほど生活”
「冬はフラノのグレーのパンツが着回しがよくてね、濃淡で3色持ってます。ほとんどが衝動買いで、どこででもパッと見つけて、ウキウキと飛びついて買いますよ。値段は“ほどほど”がいいですね。」(石津)
石津祥介さんは、アメリカの学生のスタイルIVY(アイビー)を日本に紹介し、日本中の若者がその文化に憧れアイビールックに身を包んだ「VAN」の創設 者、石津謙介さんのご長男である。今、私達が普通名詞として使っているTPOやトレーナーという言葉も石津謙介さんがつくったもの。1951年に大阪で起 業し1978年東京で会社が一度倒れるまで熱狂的に支持され、一つの時代をつくったお父様を支え続けた。
その石津さん、次の世代のライフスタイルのきっかけをつくりたいと言う。
「これからの日本人のライフスタイルは、ほどほど生活。そこそこ生活。なかなか生活。そういうのが向いているんじゃないでしょうか。食べることも着ること も日本は頂点に上り詰めちゃったんだから、スピードをゆるめて使い捨ててきた無駄を増やすのがいい。」(石津)
軟派が文化を進める
「戦後、頭の良い硬派の人たちが日本の中心になって頭脳競争をしてきた。美学はないけれど知学がある彼らが文明を進め、異性を意識すると いうことが生き方の中心になっている軟派が、文化を進めます。戦後50年、軟派は硬派から批判されやすく、小さくなって生きてきたから文化は進んでいませ んよね。日本が世界的に評価されているのは子供っぽい文化だけです。」(石津)
「恋愛感情が根底にないと、あらゆるものが成り立たないでしょ。僕もあと少しで80歳ですが(2014年11月現在)、いくつになってもガールフレンドは 10人くらいは用意しておかないとね。狙ったら会話できるように、きっかけをつくるんですよ。最近は、百貨店なんかでも会話がないですよね。それじゃあ、 楽しくない。話をして相手からほめられたりすると楽しくなるし、若返る。こんなに効く健康薬、他にないよね。」(石津)
これからは電子人の世界
「これからは『電子人』という電気がなければ生きていけない動物たちの世界になります。スマホはおもちゃとしての価値が高い。そういう彼らには、ますます『異性』も『心』も必要ないからね。」(石津)
街を歩き、始終そういうことを考えるのが楽しみだという石津さん。
「僕の夢はね、誤解されると困るんだけど、新しい『遊ぶ』ための場所をつくりたいよね。できれば65歳以上の老人の遊び島。そこで85歳で死ぬのが夢ですよ。」
いえいえ、まだまだ、たくさん恋をして日本の文化を発展させていただきたい。
文:岩崎由美