Philosophy of the gentleman

Mr.紳士の哲学

紳士の哲学では、紳士道を追求するにあたり、
是非参考にしたい紳士の先人たちのインタビュー・記事を通して学んでいきます。

野澤隆之

実業家

ファッション哲学

自分なりの流儀であり、周りの人を楽しくするもの

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【夢を創り出す】
自家用ジェットで飛行場に降り立ち、そこからヘリでヴィラやホテルにやってくる。そこではクルーザーに乗ったり、バーベキューをしたり、ホームパーティを開いたりと充実した優雅な時間を過ごす。そんな生活シーンを現実化するための町づくりをしようとしているのが、野澤隆之さんだ。
現在、下田と三浦に計画中で、三浦の模型を見せていただいた。広大な敷地に、ヘリポート、ヴィラ、大小のホテル、クルーザーのポート、クラブハウス、アートギャラリー、ミュージアム等をつくる構想である。
「このラグジュアリーな町に誰が住んでいるんだろうという強烈な印象で周辺地域を引っ張りあげていく。その象徴的な場所になればなと思っています」(野澤氏)。
海際のリゾート開発のためには、土地を取得し、漁業者たちと理解し合い地域の人たちの共感を得て、といった乗り越えなくてはならないたくさんの壁がある。野澤さんが、何年もかけて粘り強く地域に浸透しようとしているのは、単に開発ではなく、地方創生をしたい、国全体をよくしたいという思いが込められているからだ。「国をよくしたいという思いには、絶対に諦めるっていう概念がありませんからね」。

地主の家に生まれて】
「基本の基本に不動産業がある」と言う野澤さん。ご実家が群馬の不動産賃貸業で大学卒業以来、不動産業、不動産コンサルタント業に携わってきた。しかし、それだけに留まらなかった。ご本人曰く「世界をふらふらしながらラグジュアリーを勉強してきて」まずは、1998年に安田造船所の代表取締役CEOになる。約100年の歴史を持つ安田造船所は、現在クルーザーのオリジナルブランド「BREAKERS」建造販売のほか、世界最高峰のイタリアのクルーザー「AZIMUT」日本総代理店、アメリカの「BERTRAM」輸入販売元、フランスの「IGUANA  Yacht」の独占輸入販売元であり、船に関するすべてに対応する。
そして、2008年にはアトランティックカーズの代表取締役CEOに就任。この会社は1952年創業で、映画『007』でジェームズ・ボンドの乗る車として知られる高級英国スポーツカー、アストンマーティンやロータスの輸入元だったが、今年2017年からはスーパースポーツカーやヘリテージカービジネスに特化する。
2015年に安田造船所とカルチュア・コンビニエンス・クラブとの共同出資でつくった会社progetto81は、イタリアのモダン家具の最高峰B&B ITALIA / MAXALTOの日本正規総代理店で、ここの代表取締役CEOも兼任している。
「船はど素人で始めましたが、それまでにマニアックで暇なので色んな船の工場を見に行ったりデザイナーに会ったりしていました。ずっと追求して積み重ね、よい船があれば輸入をし、また造れそうだなぁと思ったら自分で造る」(野澤氏)。それが世界に誇るヨットブランドを生み出すことにつながっていく。車や家具に関しても同じように極めていくのだが、その探究心は、恐怖心やコンプレックスからきているというのだ。

青山にあるB&B ITALIAのショールーム

 【遊びのプロとして】
「少しでも知らないことがあるというのは恐怖心につながる。それを消すために勉強するという繰り返しかもしれないです」(野澤氏)。
「怖がって尻込みするのがイヤ」と22歳の時から思い続け、「遊びのプロとして研究もし、説得力と信頼だけは得るようにしています」と、最先端でいるために世界中を飛び歩く。
それぞれのスペシャリストに任せつつ、細部にも詳しく、かっこいい「遊び」を実践して見せるエグゼクティブプロデユーサー的な存在だ。
「海際の不動産はもちろん、船の事は日本で一番詳しい」と自負し、海洋土木の会社も所有しているため埋め立てや桟橋づくりに関してもプロ。さらに、安田造船所で企業再生も成功させているため地域再生のノウハウもある。「理想とするライフスタイルの実践へ一直線の人生なんですよ」と語るように、それらがすべて集約して今がある。

ライフスタイル=ファッションを、トータルで提案しています

地方創生をJAPANラグジュアリーから】
「マスの発想で地域経済が活性化したというのは、ほとんど成功例がない」からと、野澤さんご自身が「心地よいと感じるラグジュアリーから」地方創生を仕掛ける。日本ならではの美しさを活かし、JAPANラグジュアリーとして憧れの場所になるような地域ブランドを創出して地域の価値を上げ、住む人を増やしていこうという提案だ。また、そこに住んでいる人たちに海や船、レジャーに関わる仕事を創り出し、その地域のプライドを持って暮らしていける仕組みをつくることも大事だと、職の創出も考えている。
「今までの枠組みにとらわれず多目的利用に変えると、より力のある企業や人間の参入を促進するきっかけづくりができます」(野澤氏)。
硬くなっている頭や心を柔らかくし、様々な発想や視点、アイデアを受け入れ、柔軟になることが日本の将来にとって最も必要なことかもしれない。
「次に仕掛けるものを考えているときがワクワクするし、緊張感の中に心地よさがあります」という野澤さん。遊びのプロが、ラグジュアリーから日本の魅力の再構築を試みる。

 

文:岩崎由美

野澤隆之

野澤隆之
1963年群馬県・桐生市生まれ。日本大学卒業後、不動産ビジネスに従事。1998年安田造船所代表、2008年アトランティックカーズ代表に就任。2015年progetto81設立、代表に就任、同じく2015年三浦地所設立代表に就任。

https://www.yasuda-shipyard.com/
https://bebitalia.co.jp/

<座右の銘>
知行合一 考えたらすぐ行動することを心掛け、行動と考えが一致していなくてはいけないと常に思っています。
<おススメの本>
乱読で忘れちゃうんですが、世界の哲学、宗教書の中でも特に中国の『陽明学』からの影響が大きかったですね。心を鍛えるのは、良き言葉に出会うこと以外にありません。
<おススメの映画>
機内で観るぐらいなので・・・。

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。