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「ゴッホ展ーー響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が9月18日から始まりました。

ヘレーネが、心を込めて選んだ一枚一枚の集積が見られる「ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が上野の東京都美術館で9月18日から始まりました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《黄色い家(通り)》1888年9月 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵

実業家の夫のバックアップで、ヘレーネ・クレラー=ミュラーが絵画を集め始めたのは37歳頃の時です。教師で批評家のヘンク・ブレマーと出会い、傾倒し、彼をアドバイザーに多くの作品を集めました。

19世紀から20世紀のフランス、オランダの珠玉の作品たちは1万1000点を超え、中でも、当時それほど評価されていなかったファン・ゴッホを1908年からおよそ20年かけて集め世界最大の個人収集家となりました。ヘレーネは、ほかのどの画家よりも、ゴッホの作品に人間の内面が現れていると感じていました。

ヘレーネは自分のコレクションを多くの人と共有したい、感動を分かち合いたいと美術館を作ることを計画します。国内外の展覧会に貸し出し、コレクションを公開しつつその道を模索しました。第一次世界大戦や世界恐慌、そして夫の会社の経営危機などがありコレクションをオランダ政府に寄贈し1938年に美術館が開館。初代館長に就任し、その翌年に亡くなります。

今回、《夜のプロヴァンスの田舎道》《種まく人》といった選りすぐりのファン・ゴッホの油彩画28点と、素描・版画20点、さらにルノワールの《カフェにて》やルドンの《キュクロプス》、スーラの作品なども見られます。ファン・ゴッホ美術館からは、コバルト色の空が印象的な《黄色い家(通り)》《サント=マリー=ド=ラ=メールの海景》などが来ています。

俄然、ヘレーネという人に興味がわきました。芸術は大自然に包まれたところで観賞するほうが堪能できると、緑多い地に美術館を設置することにしました。オランダ・アムステルダムから80キロ、ホーヘ・フェルウェ国立公園内にあります。1961年には、ヨーロッパ最大級の彫刻庭園もオープンしました。行ってみたい。

クレラー=ミュラー美術館

2章は「ヘレーネの愛した芸術家たち:写実主義からキュビスムまで」

これもまた、豊かな作品群です。スーラやシニャックといった新印象派、象徴主義のルドン、オランダ抽象主義のモンドリアンも優しい色合いです。「社会に幸せと喜びをもたらすために、公開と継承を意識した」と言うことですが、ヘレーネが人生に求めたであろう穏やかさや温かさ、芸術への深い愛情が伝わってくるような収集です。1枚1枚、全部ここでご紹介したいぐらい。

展示風景

次の3章からが「ファン・ゴッホを収集する」

まずは、多くの素描が見られます。牧師の家に生まれ、27歳にして画商の弟テオの勧めで画家になることを決意したゴッホ。ミレーなどの版画作品や教本の模写をスタートさせ、人物画家を目指して農作業や手仕事をする人物を描きます。地道に練習を積み重ねていくさまは、狂気の画家という私のイメージからは、かけはなれています。

展示風景

画家である義理の従弟から指導を受け、はじめて油彩画を描き、様々な材質を描き分ける訓練をしました。暗い色調のバルビゾン派やハーグ派の画家の作品を手本としました。

それから5年後、パリに暮らす画商の弟テオと暮らし始めます。ここで自分の描き方が時代遅れであることに気づき、明るい色調で、新しい筆遣いで描き始めます。

南仏に移り、明るい空と太陽に熱心に取り組みます。畑の紫、麦と太陽の黄色が印象的な《種まく人》は、このころ描かれます。ここで、ゴーガンと合流し2か月ほどで共同生活が終わり、アルルを離れることにしました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888年6月17日-28日ごろ クレラー=ミュラー美術館蔵

自ら移った療養院で、体調が許せば庭や田園風景を制作しました。《サン=レミの療養院の庭》には、心の安らぎを感じます。退院して移り住んだ北仏で人生の幕を閉じます。

フィンセント・ファン・ゴッホ,《サン=レミの療養院の庭》1889年5月 クレラー=ミュラー美術館蔵

ファン・ゴッホ美術館からきているコレクションは、アルルでゴーガンと共同生活を送った《黄色い家(通り)》や、アルル滞在中に地中海沿いの漁村を訪れて描いた《サント=マリー=ド=ラ=メールの海景》など傑作ばかりです。

37歳でこの世を去ったゴッホの人生を思い、そのゴッホの作品を愛したヘレーネが散逸させないように美術館をつくった情熱に思いをはせ、アルルの明るい陽射しを思い出し、日本でこれだけの作品に出会えることに感謝しました。

ゴッホ展ーー響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 東京都美術館 2021年9月18日(土)~12月12日(日)日時指定予約制 詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。公式サイトHP:https://gogh-2021.jp/ お問合せ:050-5541-8600 (ハローダイヤル)

 

*特別に許可を受けて撮影しています*記事写真の転載を禁じます*2021年9月18日現在の情報です

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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