Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのお出かけエンタテインメント

「写真家ドアノー/音楽/パリ」Bunkamuraザ・ミュージアム

あぁ、パリに行きたい。

あの街並み、あの空気。シャンソンが流れ、街角のカフェで人々がおしゃべりをし、おしゃれを楽しむ。そんな空気感が伝わってくる作品だ。いま、もし行けたとしても、そんな情景は夢の中にしかないのに、行きたい欲求に掻き立てられる。

フランスの著名な写真家で「パリ市庁舎前のキス」が代表的な作品として知られるロベール・ドアノーは、数々の傑作を生みだしている。

「ヴォーグ」「ライフ」でファッション写真をはじめ多くの作品を発表して国際的に注目され、パリの日常をとらえた写真で高い評価を得る。

この展覧会は、シャンソンやオペラ、ジャズ、ロックなど様々な音楽を題材に、1930年代から90年代にかけて撮影された約200点のパリが舞台の作品が集められた。

 

2018年末から翌年春にかけてフランスで開催された展覧会を、日本に再構成してもってきた。作品は年内に来るはずだったのがパリの空港で足止めされ大幅に遅れて来日。主催者はどれだけ不安だったか。海外からの作品が並ぶのは、いまの状況ではとても貴重な機会だからじっくりと堪能したい。

ドアノーがいかにたくさんの人に出会い影響を受けているか。そして時代のアーティストたちがその時代とともに映し出されている。

第1章は「街角」。アコーディオンを弾いているのはパリの流しだ。残念ながら私はパリで流しに出会ったことがない。星付きレストランに行っている場合ではなかったのだ。ビストロや酒場で街を彩るシャンソンを聴いてみたかった。

第2章は「歌手」。バルバラの美しさに目を見張る。

ロベール・ドアノー 《レクリューズのバルバラ》パリ6区  1957年12月 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

 

ドアノーの仕事は職業写真家であったため、発注されて撮影したものばかりで、ここに展示されるポートレートは雑誌に掲載されたものだ。

中でも秀逸なのが、サン=ジェルマン=デ=プレ教会前で、偶然に撮影したデビュー前の歌手ジュリエット・グレコと犬の写真。この地域で人気者だった犬が主役の撮影で、たまたま通りがかった女性と犬を撮ったら、その女性がのちにジュリエット・グレコとして有名になっていく。

ロベール・ドアノー 《サン=ジェルマン=デ=プレのジュリエット・グレコ》 1947年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

第3章「ビストロ・キャバレー」。第4章「ジャズとロマ音楽」。第5章「スタジオ」はマリア・カラスの録音中のスタジオで撮影されている。20世紀最高のソプラノ歌手マリア・カラスの舞台を圧倒する歌声が聞こえてくるような気がする。

第6章「オペラ」は、パリオペラ座でのルポルタージュ。バレエ「カルメン」の衣装合わせでジジ・ジャンメールとイヴ・サン・ローランの姿が見られる。ジジ・ジャンメールはフランスショービジネス界の女王と呼ばれた世界的バレエダンサー。彼女の出世作になったバレエ「カルメン」の衣装合わせの一枚だ。

第7章「モーリス・バケ」。モーリス・バケは、俳優でチェロ奏者でスキー選手という才能を併せ持ちドアノーと生涯親交を深めた。第8章「80-90年代」。新しい世代のミュージシャンのレコードジャケットやグラビア撮影なども多く手掛けている。

お勧めなのが、展覧会HPにも掲載してあるが、この展覧会に登場するアーティストの曲をSpotifyで無料で聴くことができる公式プレイリスト。ジュリエット・グレコ「パリの空の下」やイヴ・モンタンの「枯葉」で色気を感じ、バルバラやエディット・ピアフ、マリア・カラスの「トスカ」や「カルメン」など耳でパリを味わいながら、ドアノーの写真空間に身を置けばパリにトリップできる。

大丈夫。これで、しばらく蟄居生活を楽しめる。

 

写真家ドアノー/音楽/パリ Bunkamuraザ・ミュージアム 2021年2月5日(金)~3月31日(水)*会期中無休 HPはこちら

お問合せ:051ー5541-8600(ハローダイヤル)*3月20日(土・祝)、21日(日)、27日(土)、28日(日)のみオンラインによる入場日時予約制

*2021年2月9日現在の情報です*写真・記事の無断転載を禁じます

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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