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「大ゴッホ展」がついに上野の森美術館へ!ゴッホが色彩に目覚める前と後のドラスティックな違いに注目してみて 8月12日まで

世界屈指のファン・ゴッホ・コレクションを誇るオランダ・クレラー=ミュラー美術館。その所蔵作品のみで構成される、豪華な「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」 が上野の森美術館にてスタートしました。2026年 8月12日まで開催。

目玉は約20年ぶりに来日する「夜のカフェテラス(フォルム広場)」。星が輝く夜に、ゆっくり始まるディナータイムへのトキメキが感じられて、私も大好きな1枚です。驚くべきは、この華やかで生きる喜びに満ちた「夜のカフェテラス」が、かの「耳切り事件」のたった2ヶ月前(という事は亡くなる2年前)に描かれたということです。

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フィンセント・ファン・ゴッホ <夜のカフェテラス(フォルム広場)) 1888年9月16日頃、油彩/カンヴァス、 80.7×65.3cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands 

そもそも、ファン・ゴッホが画家として活動したのは、画家になる決意を固めた1880年27歳の時から亡くなるまでのわずか10年間。そのうち、私たちがよく知る色彩豊かな作品をファン・ゴッホが描いたのは、後半の4年間だけ。要するに、ファン・ゴッホは、画業の半分以上は、モノクロまたは色数の少ない暗めの作品を描いていました。今回、ファン・ゴッホが色彩に目覚めて劇的に画風を変える前の名作が多く出展していて、両方の時代の思索や工夫が浮かび上がってきたことで、よりファン・ゴッホが魅力的に思えてきました。
そのようなわけで、今回は、ファン・ゴッホが色彩に目覚める前の時代と目覚めてからの時代から、印象的だったものをいくつかご紹介します。
ファン・ゴッホの画家時代は主に、オランダ時代、パリ時代、そしてアルル時代の3つの時代に分けられます。色彩があまりなく、宗教的な精神性や思索の重厚感を感じるのがオランダ時代で、ハーグ派とバルビゾン派の影響を強く受けています。

色数少ないオランダ時代の絵と思索の魅力

画家になって2年ほど経った、オランダ時代の前半の作品がこちらです。

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フィンセント・ファン・ゴッホ 〈大工の仕事場と洗濯場〉1882年5月下旬 鉛筆、黒チョーク、黒インクのペンと筆、茶色の淡彩、不透明水彩、引っかき傷、升目状の跡/簣の目紙 28.6 x 46.8 cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

貧しくても地道に働いて懸命に生きる人々に敬意を払い、彼らの崇高さを描いていた時代。この絵もそのような大工さんの仕事場と洗濯場を描いています。色は茶色と白と黒。色彩はなんとも控えめなのですが、前景から後景への広がり、人々や動物の絶妙な配置、ポイントで乗せた白のおしゃれさに惹かれました。そして何気ない風景なのに、なんとなくもっと知りたくなるストーリーを感じる。手前にはためく洗濯物は、画面真ん中で働く大工さん達のものなのかしら?仕事が終わったら大工さん達と洗濯女さん達は交流するのかな?などなど。

こちらはファン・ゴッホが画家になると決心してから約1年ほど経った28歳の時のある秋の絵。

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フィンセント・ファン・ゴッホ 〈植える男〉 1881年秋 黒チョーク、茶色の淡彩、不透 明水彩/賃の目紙 38.5 × 41.5 cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

やはり色は茶色と黒と白くらいで渋めです。この絵の説明書きで面白いなと思ったのは、ファン・ゴッホはこのように仕事をしている農民達にポーズをしてもらっていたことです。そしてキャプションからは、ゴッホのクールな考察が伺えました。

「僕が言いたいのは、掘る人を写真に撮っても、掘っているようには見えないということ、ミケランジェロの描く人物は、脚は明らかに長すぎるし、腰や尻は大きすぎるが、それでも素晴らしいと思うということ(・・・)僕が切望しているのは、そのような不正確さ、現実の逸脱、改作、変更をなす術を学ぶことであり、それが嘘だと言われようと、文字通りの現実以上に現実感を感じさせるものを生み出すことだ」。

単純に見えているありのままをリアルに実直に描こうとしていたのではなく、不正確でもいいから現実以上に現実感を感じさせるものを生み出そうとしていたのですね。 まだ描き始めたばかりなのに、見えないものを抽象的に描く現代アートにも通じる先鋭的な考え方をしていたファン・ゴッホってかっこいい。

また、人の頭部ばかりを実験的に描いている時期もあったようで、そのコーナーも迫力ありました。ここでもファン・ゴッホは、対象を正確に描くことよりも本質を捉えることの重要さを次のように語っています。

「数学的に正確な頭部ではなく、大まかな表情だ。たとえば掘る人がちょっと顔を上げて風の匂いを嗅ぐときの表情とか、話している時の表情とか。つまりは生命だ。」

パチパチ。思わず拍手。後に、パリ時代に描いたカラフルな自画像が出てきますので、見比べてみてください。

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「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」、展示風景、上野の森美術館 2026年

印象派との出会い

さあ、それではなぜファン・ゴッホは色彩に目覚めたのでしょうか?それは、弟のテオの勧めもあってパリにやってきた33歳のファン・ゴッホが、同じ時期に活躍していたマネ、モネ、ルノワール、セザンヌといった印象派たちの絵に惚れ込んだからです。会場では、そのような印象派の巨匠たちの名作をいくつか鑑賞することができます。例えばモネのこのような作品。

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クロード・モネくモネのアトリエ舟>1874年、油彩/カンヴァス、50.2✕65.5cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

鏡面のように輝く水面に絵本から飛び出てきたかのように可愛らしいターコイズブルーのアトリエ舟が浮かんでいます。このように魅惑的な色彩の数々を魔法のように操る印象派達の名作を色々と目にしたら、確かに自分も取り入れてみたくなりそう。ちょっと頑固そうなイメージがあったファン・ゴッホですが、美しいものには素直に感動してのめり込む純度の高い感性を持っていたのだと思うといとおしい感じがしました。

ザ・ゴッホになる

33歳の6月頃に印象派の第8回展を見たファン・ゴッホは、その夏から色彩豊かな花の静物画を描き始め、約1年後に描いた花はこちらです。

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フィンセント・ファン・ゴッホ〈青い花瓶の花〉1887年6月頃 1887 油彩/カンヴァス 61.5 x 38.5 cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

思わず手に取りたくなるほど魅惑的に艶めく青色の花瓶に、赤、黄色、ピンク、水色の花が豊かに咲き誇っています。ファン・ゴッホお見事!色彩もさることながら、点描を応用したような力強い筆遣いも、オランダ時代とは全く違います。

本展担当学芸員の斎藤菜生子さんによると、この時期ファン・ゴッホは集中して色彩理論を研究し、補色などの効果を積極的に試しながらたくさんの静物画を描いたそうです。そして登場するのがこちらの自画像。

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フィンセント・ファン・ゴッホ<自画像)1887年4-6月、油彩/厚紙、32.4✕24cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

いかがですか?色彩も筆致もザ・ゴッホ!印象派に感銘を受けてから1年足らずで印象派を超越し、オリジナルの絵描き方を獲得したファン・ゴッホ。その情熱と才能に心酔してしまいました。前出のオランダ時代の頭部のシリーズと見比べてみていかがですか?

そしてラストのアルル時代に迎えるクライマックスが「夜のカフェテラス(フォルム広場)」です。先程の自画像を描いてから約1年後の秋に描いた作品。ブルーの夜空に、昼間のひまわりとは違う輝きを放つカフェの黄色が、手招きをするように浮かび上がるパーフェクトな色のコントラスト。そこに心地よいリズム感で敷き詰められた石が広がる石畳。三々五々カフェに集まってくる人々。夜空ににじむ星星。秋の風が心地よい幸せな夜の空気に酔いそう。

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フィンセント・ファン・ゴッホ <夜のカフェテラス(フォルム広場)) 1888年9月16日頃、油彩/カンヴァス、 80.7×65.3cm クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

オランダ時代に頭部をたくさん描いていたファン・ゴッホが「描くのは生命だ」と言っていたのを思い出してみましょう。画風はずいぶん変わりましたが、このカフェテラスの情景も、すみずみまで生命そのものを描いているように見えました。想像するに、喜怒哀楽の感情が激しかったであろうファン・ゴッホ。貧困や精神の病にさいなまれながらも、生命あるもの、そして自分自身が生きることを愛していたのだろうなと感じる1枚でした。
ぜひ会場で対面してみてください。

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作品は全てクレラー=ミュラー美術館所蔵 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

【展覧会基本情報】
タイトル「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」
会期:2026年5月29日~8月12日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル/9:00~20:00)
開館時間:10:00~17:30(金土祝は9:00~19:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:平日一般 2800円 / 大学・専門学生・高校生 1600円 / 中学生・小学生 1000円、土日祝は+200円 ※詳細は公式サイトを確認

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菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
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菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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