Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのお出かけエンタテインメント

「幕末土佐の天才絵師 絵金(えきん)」サントリー美術館 9月10日(水)~11月3日(月・祝日)

土佐の高知で生まれた絵金(絵師の金蔵)は、幕末から明治初期にかけて芝居絵の屏風をたくさん残し、その数、約200点とも言われています。その絵金の、東京の美術館で初めての大規模展が開催されています。

芝居絵の場面は、歌舞伎や人形浄瑠璃・文楽の見せ場です。会場に入って一枚目から、お芝居の世界に取り込まれてしまいます。私は歌舞伎や、文楽が好きでよく見に行くのですが、「あの場面が・・・」と、見たことのある舞台が脳裏に浮かび、絵の前から離れられなくなってしまいました。

芝居絵屏風には物語が凝縮されて表現されています。物語そのものがドラマチックだということもあり、色彩も激しく感情豊かにすごい表情。血しぶきが飛び、おどろおどろしい場面が多いのですが、怖いはずなのになぜか魅力的で目が離せません。

<伽羅先代萩御殿(めいぼくせんだいはぎごてん)香南市赤岡町本町に区【通期展示】>

この屏風に描かれているのは仙台伊達家で起こったお家騒動を題材にした芝居「伽羅先代萩御殿」。

家督を相続した鶴千代は、お家乗っ取りをたくらむ者たちに命を狙われています。乳母・政岡は、鶴千代を守るため、我が子の千松と共に側に仕え、毒入りを警戒して出されたお膳には手をつけさせません。そこに幕府の高官の妻が、毒入り菓子を持ってやってきます。鶴千代に何かあってはいけないと、何かの時には犠牲になるようにと千松に言い含めておいたので、その時千松は飛び出してきてそのお菓子を食べてしまいます。毒入りを持ってきた悪者たちは、証拠隠滅をはかるために千松をなぶり殺しにします。政岡が、その様子を冷ややかに見ていたため、悪者たちは、鶴千代と我が子を取り替えていたと合点。鶴千代を亡き者にしたと解釈します。政岡は、彼らが帰った後、不憫な息子の死に泣き崩れるのでした。

私が歌舞伎で見た時は、政岡を坂東玉三郎が演じ観客の涙を誘っていました。この屏風では悪役がいかにも悪役らしい顔をして着物にはどくろ柄が描かれています。

すべての屏風の芝居に思いを馳せ、想像を張り巡らしているといくら時間があっても足りません。

<花衣いろは縁起 鷲の段 香南市赤岡町本町二区 【通期展示】>

絵金は、地元高知では「絵金さん」として親しまれ、今もお祭りの時に神社や商店街の軒下に飾られ生活の中に根付いています。提灯や蠟燭の昔ながらの明かりで見る絵は、時代をさかのぼらせてくれます。

<会場で流れている祭りの時の映像「高知の祭礼をめぐる」>

現在、約10か所の神社で昔ながらの夏祭りが行われ、絵馬を乗せる櫓(やぐら)「絵馬台」が組まれています。その絵馬台が再現され、さらに夜の状況もわかるように会場では一定時間で照明を落とし臨場感を出します。

<絵馬台が組まれた会場>

実際には、高知市朝倉の朝倉神社では山門型の絵馬台が6台組み上げられます。香美市土佐山田町の八王子宮には大型の「手長足長絵馬台」があり、それは展示会場で見られるのでお楽しみ。高知市春野町芳原の愛宕神社では2024年に数年ぶりに絵馬台が組まれました。

また、高知の夏祭りのもう一つの風物詩が絵馬提灯です。蠟燭の炎で見せるため、紙が薄いこともあり現存しているものはわずかしかありません。

<絵馬提灯 釜淵双級巴(かまがふちふたつともえ)アクトミュージアム【通期展示】>

ここには、石川五右衛門の生涯を描いた24点の絵馬が展示されています。「釜淵双級巴」は、石川五右衛門が生まれた時から釜ゆでになるまでのストーリーです。

それにしても地域に根付いたお祭りの中に、200年前の日本文化が生きづいていることが奇跡のように感じられます。今回の展覧会の音声ガイドを担当した歌舞伎役者の中村七之助さんは、お兄さんの勘九郎さんと一緒に夏祭りの時に現地に見に行ったことがあるそうです。ぜひ、行ってみたいものですね。

絵金は、子供のころから画才があり、町人から大出世をして土佐藩の御用絵師として働いていましたが、33歳の頃に身分をはく奪され追放されてしまいました。その後、町絵師となり、「芝居絵屏風」や「絵馬提灯」を多く残しました。数百人と言われる弟子たちを育てたといいますから、土佐藩への貢献度はどれほどのものでしょうか。

高知県の外での展覧会は、半世紀ぶり。各地を回って、いよいよ東京にやってきました。

 

「幕末土佐の天才絵師 絵金(えきん)」サントリー美術館 2025年9月10日(水)~11月3日(月・祝日)

*2025年9月11日現在の情報です*写真は特別な許可を得て撮影しています。記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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