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紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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【成田悠輔×小松美羽】8000年後の平均寿命は10歳?!成田さんも思わず納得♪だからアート思考はすごい!

つい最近、データサイエンティスト・成田悠輔さんとアーティスト・小松美羽さんとの対談動画が面白すぎる!と友人から送られてきました。それは、雑誌『with』に掲載された話題の企画「成田悠輔と愛すべき非生産性の世界」で繰り広げられた対談をノーカット動画にしたものでした。

普段、テレビもYouTubeも見ない私ですが、天才研究者・成田悠輔とあの小松美羽とのスペシャル対談ということであればスルーできない!ということで、視聴スタート。

35分ほどの内容でしたが、現在、自分が2022年に「人間」として生きているという前提が一気に吹っ飛ばされて、超越的な目線をゲットできたような感覚。

「混沌から始まり、異なる思考のプロセスを経て、なぜか似た未来像へと辿り着く」宇宙旅行のような体験でした。もちろん和気あいあいとした対談だったのですが、お二人の対話をあえて「ロジカルシンキング」VS「アート思考」として紹介してみます。

【名場面:ラウンド1】

「作品を描く時って、描く前にはっきりイメージが頭の中にあるものなんですか?」という成田さんの質問から、ごく普通な雰囲気で始まった対談ですが。。。

「私はエスキース(下絵)を描かないんですね。瞑想状態で描くのですが、ニミットというミニシアターみたいのができて(おでこの辺りを指して)、この辺りに指示が出てくるんですよ」と小松さん。

ん?早くもちょっと不思議な感じになってきた?

「それってARとか拡張現実っぽいんですか?SF映画とかでスマートグラスをかけて見るといろいろなコンテンツや指示が出てくるみたいのありますよね?そんな感じ?」

と自らの経験や情報に寄り添わせて理解しようとする成田さん。ちょっと怪訝そうながらも否定はせず、探るような目つきです。

「そうそう『ぶーん』とでてくる感じ」と小松さん。 

いきなりキター!「アート思考」パンチ。
ARだとかSFだとか、文脈はもはや関係ない。
「ぶーん」という擬音語で全てを理解させようとする一撃が出ました。

「ぶーん」???成田さん、とまどいの笑み。「それは出てきたイメージをなぞってる感じ?」

小松さん:「指示いただいているんです」
成田さん:「???誰に?ひと?」←至極まっとうな疑問です。

話しているうちに、それが「第三の眼」であることが分かってきます。
それは、非物質的なエネルギー同士が交わるもので、必要な助言をくれる何かと接続してくれるとのこと。その第三の目が眉間の辺りにあって、後頭部あたりから通路が繋がっていて伝達が来るのだそうです。

ロジックやサイエンスは吹っ飛んでいるのですが、眉間や後頭部の具体的な場所を指し示す小松さんに、成田さんも「そんな具体的な体感があるの?」とびっくり。

「1000枚くらい書いてるので、ありますよ」と小松さん。
「すごいな。第三の目欲しいな」と微笑む成田さん。納得のご様子に、「アート思考」技あり!

【名場面:ラウンド2】

「第三の目」の話から、電気やAIが付喪神(長い年月を経ることで物に宿る神や精霊)と同じような存在になるのではないかという話に発展しました。

ある時、黒柳徹子さんが「うちのaiboがおかしい。技術者が組み込んだ以上のことをする。人に会うと喜ぶように作られているのに怖がったりする」というお話を小松さんにしたそうです。

小松さんが「日本には付喪神の話もあるし、思い入れがあるものには、何かが宿るのだなと思ったんです。非物質的でエネルギー的なものなので、電気を通して人ならざるものが混じりこんでくる可能性を感じました」と続けると、成田さんはちょっと笑いだしそうな表情でうなずいていたのですが。。。

「だからAIもそうではないかと思うのです。エネルギー的なものとエネルギー的なものの交わり合いがあると、いわゆる昔の付喪神みたいな現象が起こるのではないかなと思うんです」と小松さんが言うと真剣そのものの顔になりました。
そして、「それ全然スピリチュアルな話じゃなくて、すごく真っ当な話だと思います」と一言!お~っ!

そして小松さんの直感を、数字も交えた見事なロジックで説明。

「電気が通っているものって、電気を通じて発する情報があってこっち側がその情報に反応するわけじゃないですか。aiboの場合でもaiboの動きとか仕草とかに、人間が感化されて何か反応して、電気とは違うエネルギーの力で作り出した動きをあちら側がまた読むわけじゃないですか。そうすると最近のAIとかって読み込んできた情報を食べていって、プログラム自体の中身が変わって、勝手に進化していくちょっと生命っぽい部分があるんですよ。だから電気側もどんどん変化していくので、そこに付喪神っぽいものが宿っているように見える瞬間があるっていうのは、ごくごく自然なことなんじゃないかと思いましたね。

それはAIじゃなくてもたくさんの人々が使うソフトウェアやウェブサービスもそうだと思っていて、最近のSNSとかいっきょに1億人とか同時に使ったりするわけじゃないですか。で、そんなことって物理世界では起きないですよね。同じ場所で集会をやろうと思っても、巨大なイスラムの集会とかユダヤ人の集会とかいったって、せいぜい数千とか数万人しか集まらないじゃないですか。

だから絶対に物理世界では起こり得ないようなレベルの人間と人間の絡み合いみたいなのを、作り出しちゃうことができる魔法の杖みたいなものだと思うんです。そうすると、人間の側がそれに反応して違う振る舞いをしていって、それがまた投影されてあちら側も変わっていくっていう感じで、電気側と人間側ってのが順番に行ったり来たりしながらずっと変化し続けるみたいなことがすごく起きやすくなっちゃってる社会なんだろうなと思います。

電気は、体とか物質由来の制約みたいなものがないんで、人間の100倍みたいな速度でどんどん変化しちゃうと思うんですよね。そうすると人間の側から見ると何かわけのわからない霊に、突然取り付かれて暴走したり、神っぽい領域にはいっちゃっているように見えてるっていうことが普通に起きるんだと思うんですね」

成田さんのこの解説、説得力500パーセント!

ここで私がすごいと思うのは、小松さんがアーティストの直感のようなもので感じて出した結論が、東京大学を首席で卒業して現イェール大学助教授の天才データサイエンティストである成田さんのそれとぴったり合致していること。

このラウンドでは、「ロジカルシンキング」と「アート思考」が支えあっている美しい姿を見ることができました。

【名場面:ラウンド3】
ここでは、成田さんから重要な質問が投げかけられます。

「庶民のためのアートって興味があるんですけど、アートって結局今に至るまですごく限られた人のためのもの、人口のせいぜい数%くらいの人のためのものになっちゃってると思うんです。平均的な人類にとって、アートってほぼ生活の中にも、世界観にも全く入ってないんじゃないかと思うんですよね。家にもアートっぽい作品とかない人がほとんどだろうし、美術館とかミュージアムとかに行く習慣がある人っていうのもごくごく一部だろうしっていう感じがするんですよ。
それは同じようなことが例えば活字とかについても言えて、本を読む人とか活字を読む習慣がある人って、多分人口の10%いないと思うんです。だから、どんなにベストセラーの本があっても数百万部とかしか売れない。数10万人が読む本とか数千万人が読む雑誌って存在しないじゃないですか。だから結局アートも言葉もすごく限られた人にとっての特殊なメディアとして今のところあり続けていると思うんです。

それで、『人類のほとんどが進んで体験したがるアートみたいなものっていうのはあり得るのかな』っていうのに興味があってそういうものがあるとしたらどんな存在なんだろうっていうのちょっと聞いてみたいんですけど」

なんとスキがなく華麗な質問展開なんでしょう!
「人類のほとんどが進んで体験したがるアートみたいなもはありえるか?」という1行の質問を聞くために、数字や統計を効果的に散りばめて緻密な前奏曲を奏でています。

質問を聴きながら思考が巡り始めました。
「誰でも読むと思っていた本なのに、読む習慣がある人はは人口の10%くらいしかいないんだ~!そうしたら確かにアートを鑑賞したり持ったりする人なんて、マイノリティ中のマイノリティなんだね。。。」などとショックを受けながらこの質問を聞きつつ、「人類のほとんどが進んでアートを体験する状態なんて、不可能だよな~。。。」とか、頭の中はグルグル。

さて、注目の小松さんの答えは???

「8000年後には、人類も平均寿命10歳いかないと思っているので」!!!???

でたーーーーー!究極の「アート思考」。強烈すぎる一撃。

「なので結局今我々がどうあがこうともきっと人類は自然とまた1つになると思うんですよ。だからそれと一緒でアートもね、必要な人がたとえ数%でもいるのであればやり続け、突き抜け続ければ、それがいわゆる歴史の中の正義になると思うんですよね」と小松さん。

2022年の今、平均寿命80歳以上(日本)を前提に生きる私たちも、人口80億人の世界も、本を読むのがそのうちの10%以下だということも、全て爆破されて飛び散ったような衝撃。
そして、数字も科学もロジックもへったくれもないけど、なぜか本当にそうなるかもしれないと思わせてしまうパワーがあります。

そんなパワーに反応して、思考がまた思わぬ方向に飛躍し始める。

「8000年後の寿命10歳の生命って?自分が飼っていたセキセイインコは、平均寿命が10歳くらいだったけど、もしかしてあんなに小さくなるのかな?食べ物も食べずに光合成で生きていけるとか?もう文字も読まないかもしれない!今の尺度で言えば、10歳は小学校4年生くらいだから、中高大の受験戦争もないし、就職活動もいらない!
世界規模で起こっている戦争や環境や食料の問題も無関係な世界なのかもしれない。

成田さんが言うように、魂と電気のハイブリッドのような肉体のない生命体も増えているかもしれないし。。。」

そう考えると、現時点で前提となっている条件にとらわれすぎて、悩んだり争ったりするなんてバカバカしくなってくる。
今日の対話を聞いていると、アートからのアプローチでも、データサイエンスからのアプローチでも、肉体や物質にこだわりすぎない生き方ができそうな未来像が浮かんできました。「ロシアとウクライナの戦争だって、領土や食料など、肉体的・物質的欲望から発生している。もう領土とかいう概念は旧型だし、是非ともそんな戦いはメタバース上だけでやってほしい。それに、英雄として後世に語り継がれたいとしたって、平均寿命10歳のインコのような生命体に何を伝えるの?人類が肉体の呪縛から解き放たれる未来は、意外と平和なのかもしれない。」

それはさておき、ご自身の「人類のほとんどが進んで体験したがるアートみたいなものはありえるか?」という問いに対しては、「8000年後までという結論でいいんじゃないですか!」と全面肯定の成田さん。

それでは、このラウンドも「アート思考」技ありってことでいいですよね?成田さん!

【成田悠輔×小松美羽】YouTube対談動画⇒https://youtu.be/G1YtEOut190

【成田悠輔PROFILE】
なりたゆうすけ 1985年東京生まれ。不登校気味の中学、高校時代を経て東京大学経済学部入学、首席で卒業。マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。イェール大学助教授。論客としても活躍。専門は、データ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと公共政策(特に教育)の想像とデザイン。近著に『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SBクリエイティブ)。

【小松美羽PROFILE】
こまつみわ 1984年長野県生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。現在、同大学特別招聘教授、東京藝術大学非常勤講師。神獣をテーマとした荘厳な作品が世界中で賞賛を集める。代表作に、大英博物館収蔵の有田焼作品『天地の守護獣』、2021年制作の『NEXT MANDALA~魂の故郷』。

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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