Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのおでかけエンターテイメント

オリンピックは、スポーツの祭典というばかりではありません。

2020東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化事業の一つとして、東京文化会館と新国立劇場がプッチーニの『トゥーランドット』を共同制作しました。オペラを東京都と国が一緒に制作するのは初めてのことです。さらに、びわ湖ホール、札幌文化芸術劇場も加わり、4つの劇場を回ります。題して、第1回「オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World」。

 

『トゥーランドット』と言えば、アリア「誰も寝てはならぬ」がとても有名です。2006年のトリノ・オリンピックの開会式ではパヴァロッティが歌い、メダルをとった荒川静香選手のフィギュアスケートでのイナバウアーで流れるのもこの曲。さて今回は、どんな「誰も寝てはならぬ」が聴けるんでしょうか。

 

総合プロデユースは、新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士氏。演出は、バルセロナを拠点とするパフォーマンス集団の芸術監督の一人、アレックス・オリエ氏。バルセロナオリンピックの開会式を演出し、一躍世界的に有名になった方です。彼が日本の劇場でオペラを演出するのは初めのこと。この新制作の『トゥーランドット』は、世界初演で日本から世界に向けてオペラを発信するという画期的な試みです。

 

オーケストラは、大野和士氏が音楽監督を務めるバルセロナ交響楽団で、指揮は大野和士マエストロが自ら棒を振ります。出演者はダブルキャストで、トウーランドットを当たり役とするイレーネ・テオリンとジェニファー・ウィルソン。二人とも強靭な喉で、強く、冷たく歌いあげ、かなりの声量です。氷のような冷たい姫として文句なしの歌唱力。

可憐で純粋な愛を貫くリュー役には、世界で活躍する中村恵理と砂川涼子。透明感のある声で悲しげに切々と歌います。「誰も寝てはならぬ」を歌うカラフには、テオドール・イリンカイとデヴィッド・ポメロイ。合唱団は、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブルが集まって、重層的な歌声を会場中に響かせます。

 

公開リハーサルを2日間にわたって見せてもらいました。ダブルキャストですから、どう違うか知りたかったし、どう変化するかを見てみたかったのです。

 

重々しい舞台装置にモノトーンの世界が拡がり、舞台正面には生首がいくつも飾られる恐ろしい雰囲気。黒光りした兵士が暴力をふるい、荒廃して凶暴な街が広がっています。今まで観たことがない『トゥーランドット』が始まりました。

通常、ホッと一息できる道化役ピン・ポン・パンも全員が暗い衣装。オペラを映画館で楽しむMETライブビューイングを観ていると明るくユーモアにあふれ、きらびやかな衣装や小道具が出てきますが、ここでは違います。コミカルなはずなのに、少しも笑えない。恐怖に満ちた世界は、一瞬たりとも気を抜けません。

リューのアリアは、どこまでも物悲しく、姫の歌声は強く冷たく響き渡ります。この役は歌の難しさから、かなり体力も必要でダブルキャストのお二人とも大柄です。素晴らしいのは合唱。重層的で心地よく、音楽に包まれる幸せを感じられます。

リュー役の中村恵理

 

物語は、ご存じ、トゥーランドットという中国のお姫様が、彼女に求婚する若者に3つの謎を投げかけ、それが解けなければ打ち首にしてしまいます。カラフは、彼を慕う女奴隷と父親と一緒にいましたが、トゥーランドットの美しさに魅了され、命を懸けて謎に挑戦することにします。さて、結末は・・・。

 

そしてお待ちかねの「誰も寝てはならぬ」。デヴィッド・ポメロイは待ってましたの歌声です。これを生で聴けるだけでよかった。私、自分のお葬式ではパヴァロッティの「誰も寝てはならぬ」を流してほしいほど。テオドール・イリンカイは、大事をとって後半、リハーサルでは部分的にしか歌っていませんでしたが、本番ではどうだったんでしょう。そのかわり、代役が抜群の歌唱を聞かせてくれました。

カラフ役のデヴィッド・ポメロイ

 

暗く陰鬱なモノトーンの世界に色が入るのは、最後の瞬間だけ。そして、最終章、今まで観たことがない幕切れで、観客は度肝を抜かれ、しばし拍手もできません。この世紀の瞬間を、あなたは、どう感じるでしょうか。そして世界はどう受け入れるでしょうか。

 

両日とも観た感想は、2日目で演出が変化している所があり手直ししているところから、どんなふうに見せたいかがわかったことや、歌手によって歌い方だけではなく演技が違い、受ける印象が変わるということです。どちらかひとつを選ぶとしたら、やはり好きな歌手がいる方を選ぶのがいいですね。私はどちらの回にも、この役はこの方が好きという方がいてどちらかを選ぶのは難しいなぁ。といっても、すでにチケットはほぼ完売のようですので調べてみてください。

今回の公開リハーサルは、ありがたいことに抽選で一般の方が一幕だけ無料でみられるきっかけをプレゼントしてくれました。こういうきっかけでオペラ人口が拡がるといいですよね。

詳細はコチラのHPで。東京文化会館はすでに終わり、次は7月18日から新国立劇場です。

 

*写真はすべて©堀田力丸*2019年7月13日現在の情報です*写真と記事の無断転載を禁じます。

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

http://www.geocities.jp/officewe_homepage/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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