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シャガールの背景画とバレエが一体となって悲劇のヒーロー「アレコ」が蘇る!気鋭の振付家の演出が輝くレジェンダリーな公演が高輪ゲートウェイで実現 6月7日まで

浮遊する恋人たちや動物をロマンチックに描くことで知られるマルク・シャガール。赤、青、黄色など、煌めく色彩に溢れる作品の数々が魅力で、親しみを感じている読者のみなさんも多いのではないでしょうか。

そのようなシャガールが、「アレコ」というバレエ作品のために巨大な背景画4点を制作していたことを知っていますか?また、それら4点が青森県立美術館の「アレコホール」で展示されていることを!

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青森県立美術館のアレコホール。マルク・シャガール バレエ「アレコ」のための背景画(左2幕、右1幕) 1942年
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青森県立美術館のアレコホール。マルク・シャガール バレエ「アレコ」のための背景画(左4幕、右3幕) 1942年

シャガールがバレエ「アレコ」のための背景画を依頼されたのは、彼がナチスを逃れてアメリカへ亡命していたさ中の1942年です。原作(プーシキン)・音楽(チャイコフスキー)ともにロシア人による作品である「アレコ」のために、同じくロシア出身のシャガールは、渾身の巨大背景画4枚(約9メートル× 15メートル)を完成させました。大成功を収めた1942年の初演は伝説となりましたが、青森県立美術館の「アレコホール」で2024年に上演された宝満直也さん振り付けの「アレコ」も高い評価を得ました。

【アレコの物語】貴族社会に嫌気がさしたロシア貴族の青年、アレコは自由を求めてロマ(ジプシー)の一団に加わり、そこで首長の娘ゼンフィラと恋に落ちる。しかしほどなくゼンフィラはジプシーの若者に心を移す。それを知ったアレコは、怒りのあまりゼンフィラとその愛人を刺し殺してしまう。

そして2026年、新たな伝説が生まれつつあるのが、同じく宝満直也さん振り付け・演出で蘇る「アレコ」。場所は、2026年3月28日に高輪ゲートウェイシティに開館したばかりの、「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」です。

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「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」の外観 ©Yasuyuki TAKAKI

高精細巨大LEDパネルを備える「MoN Takanawa」だからこそ、シャガールの4枚の原画をLEDで映し出して演出することが可能となった「アレコ」。いち早く本公演を鑑賞した感動と鑑賞ポイントを、宝満さんへのインタビューコメントを交えながらお伝えします。

第1幕 月光のアレコとゼンフィラ

白銀色に輝く満月に照らされて濃いブルーに染まった夜空のもと、1人静かに踊り始める男性が主人公のアレコです。チャイコフスキーのピアノ三重奏曲 《ある偉大な芸術家の思い出のために》を元にしたテーマ曲が鳴り響く。センチメンタルな短調に、瞬間的に明るい長調が聞こえては消えるメインテーマが繰り返されて、アレコの世界に引き込まれていきます。育ちの良さそうなアレコのファッションは、胸元に白いフリフリのついたシャツに、夜空と同じブルーのジャケットを着ています。そう、彼は貴族ですから。

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第1幕のアレコ  撮影:大洞博靖 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026 E6218

でも頭を抱えたり、悩み多き様子。様式化されて窮屈な貴族社会に疑問を持っているのですね。そこにオーバーラップするように流れ込んできて踊るのはロマ(ジプシー)の一団。隣で踊る貴族グループと比べて、自由で楽しそうに見えます。そこに、奔放な小鳥のように踊り出てくる少女が首長の娘ゼンフィラ。パチっと目があった2人はビビッと打たれた表情で「一目惚れしたんだな」とわかりました。ほどなく始まるアレコとゼンフィラのペアの踊りからは、喜びが溢れていて微笑ましいのですが。。。アレコの「ここが僕の居場所だ!」とばかりに、至福に浸り過ぎているようなナイーブな笑みが危うい。。。

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第1幕のアレコとゼンフィラ  撮影:大洞博靖 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026 E6218

まだうら若いアレコは、その壮大な悩みの解決を、会ったばかりのロマの少女に賭けてしまっていいの?シャガールが描いた空飛ぶ2人のカップルの背景画の下で、アレコとゼンフィラはキスをして結ばれますが、なんとなくぎこちなくよそよそしい。。。輝く月は限りなく冷たく、青黒くうずまくシャガールの夜の色に会場全体が包まれていくようでした。

第1幕の宝満さんの演出ポイント

1幕の絵からは、アレコの体が霧のようになって空間に広がり、「今にも消えそうなのでは?」と思えました。実態がない存在というか、彼自身が幻だったのではないかと感じたのです。ストーリー の中では、アレコがゼンフィラを愛しますが、結局は孤独で、最後また1人になる運命の中にいる。ある意味第1幕から自分の終わりが見えているのではないでしょうか。踊りとしては、「自分とは何者か」を思索しているようなソロから始まります。

第2幕 カーニヴァル

全4幕の中では、1番明るく、しばしの幸福が感じられる背景画。白、ピンク、黄色の色彩の中にブルーや緑が浮かび、熊が黄色いバイオリンを弾いています。アレコとゼンフィラのペアを含むロマの仲間たちの踊りが背景画のクマの踊りともシンクロして楽しい。最初のころは、アレコがゼンフィラを独占していますが、途中から、2人きりになろうとするアレコを振り切ってロマの仲間の輪に戻ろうとするゼンフィラがいて。。。後半は、ロマの青年とゼンフィラのペアが目立ち始めました。コケティッシュにロマの青年に耳打ちするゼンフィラを見て閉じる2幕。どうなってしまうの?

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第2幕  撮影:大洞博靖 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026 E6218

第2幕の宝満さんの演出ポイント

2幕はカーニヴァルという明るいシーンなのですが、背景画は、アレコが見た、「終わりを暗示している世界」に見えました。それは、左側の地平線が傾いているからです。また、解説によると、真ん中に浮かぶ2つのブルーが雲とのことですが、僕には乾いた土地にある湖のように見えました。その湖が、アレコのぼやっとした虚無の中にいるゼンフィラという存在なのかもしれないと思ったのです。でも水はいずれ蒸発してしまうし、その隣にある植物が吸ってしまえばなくなってしまう。植物自体もいずれ枯れてしまうものだしなどと考えていくと、有限なものが描かれていると感じました。

第3幕 ある夏の午後の麦畑

大きな2つの太陽に照らされて黄金色に輝く空と麦畑で、客席まで暑くなってくるような第3幕。

ゼンフィラとロマの青年2人だけの熱い踊りが繰り広げられます。踊りだけに飽きたらず、地面に転がって上になったり下になったりする2人。新しい生命が生まれるほどの熱気を感じるこの2人の恋は、1幕のゼンフィラとアレコの、どこか他人行儀な逢引きとは全く様相が違います。

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第3幕のゼンフィラとロマの青年  撮影:大洞博靖 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026 E6218

この2人を目撃したアレコは、ゼンフィラを取り戻そうと強引に彼女を引っ張るのですが、なんとビンタされてしまいます!そしてここからのアレコの豹変ぶりが、私は今回の公演の1番の見所だと思いました。
目を開いて大ショックの表情をしたアレコが手を当てた頬から、じわじわと狂気が体全体に広がっていくのがわかりました。そこから始まる狂気に満ちたアレコの踊りは、完全に異世界のもの。宝満さんが「ジャンプが持ち味」と評する大川航矢さんの高いジャンプは、もう人間のものとは思えず、異様な形をとって地面に崩れ伏した姿は、絶望を通り越した悪魔のように見えました。

第3幕の宝満さんの演出ポイント

第3幕の2つの太陽が、僕には「目」に見えるのですが、特に左の太陽の放射線状に広がっているものは、血の涙のように見えました。そして下の麦畑に隠れているトカゲの死神のような者がその涙をすすろうとしているような。そういうおどろおどろしいものが、アレコの中にあるバイオレンスなもの、彼を憎悪に駆り立て、人を殺めるところまで駆り立てるものを表しているように感じました。また、アレコが初めてゼンフィラを暴力的につかむのが第3幕なのですが、「そこで彼女からビンタされたときにアレコの中から evil(悪魔)が出てくるね」ということは、ゲストアーティストとしてアレコを踊るアレクサンドル・トルーシュさんと話しました。彼は、その evil がゼンフィラを殺したのだと言っています。

【ゼンフィラの心変わりに必然性を持たせるために】
ロマは、全員がそうでは無いのですが、戸籍がなくて人権がありません。人権がないということは、世界から人として認められていないということ。そのような中で自分たちがお互いを認め合うことでしか存在を肯定できない人たちという側面があります。ですので、小さい頃から一緒に育ってきた絆は家族以上のものがあるのではないかと思っています。そこに元貴族のアレコがパッとやってきたときに、ゼンフィラは一時的な情熱を燃え上がらせるけれど、結局彼女にとって魂レベルでつながっていたのは、ロマの青年とロマの仲間たちだったのではないかと考えました。そこに彼女の心変わりの必然性を感じてもらえるような演出を心がけました。

第4幕 サンクトペテルブルクの幻想

暗闇が渦まく夜空を背景に、シャンデリアめがけて駆け上がる白い馬が印象的な第4幕。

ロマの仲間たちとともに仲睦まじく踊るゼンフィラと若者の合間を、放心状態で歩きまわるアレコ。おもむろに道端のナイフをつかむと。。。その後の展開はぜひ劇場で目撃してください。

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第4幕のアレコとゼンフィラ  撮影:大洞博靖 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026 E6218
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第4幕のアレコ  撮影:大洞博靖 ©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026 E6218

第4幕の宝満さんの演出ポイント

僕としてはこの白い馬がシャガール自身なのかなと思っています。彼の「どこかに行ってしまいたい」という思いが反映されている。時間の象徴である蝋燭と燭台があって飛び立とうとしているのですが、僕にはこの燭台が、より大きな馬の目に見えたのです。右側を向いていて、左にある墓場が立髪で、車のホイールが鼻の穴です。なので、アレコが馬という人外のものになってパーッと飛び立ってもさらに大きな馬がいて、「結局あなたが葛藤してきたものは運命という手のひらの中にあるのだ」と言われているような。何か逃れられない運命ですね。そしてさらに右上のほうのうねりにもまつげのようなものがあってこれにも常に見られているような。どこまで行っても逃れられない大きな運命の中にあるアレコ、そしてシャガールというイメージをベースに演出しました。

なんと深淵で哲学的な解釈!バレエの演出としてだけではなく、シャガール絵画の新しい鑑賞ポイントを解き明かしてもらったようで、目からウロコでした。そして確かに、往年の名作には、トルストイの「アンナ・カレーニナ」やシェイクスピアの「マクベス」など、懸命に生きているだけなのに、なぜか悲劇的な結末に向かう悪魔的運命に否応なしに導かれてしまう主人公たちがいる。今回の公演では、シャガールが描いた背景画とバレエが宝満さんの演出で一体化したことで説得力が生まれ、アレコも歴代の悲劇の主人公として、鮮烈に記憶に刻まれました。

バレエ史的にも絵画史的にも伝説になるのにふさわしいこの出来事を、是非劇場で体感してみてはいかがでしょうか!

【公演情報】
公演期間:2026 年5 月29 日(金)~6 月7 日(日)
会場:MoN Takanwa: The Museum of Narratives Box1000
(TAKANAWA GATEWAY CITY 内)
振付・演出:宝満直也
主な出演:
【A キャスト】アレコ:大川航矢/ゼンフィラ:勅使河原綾乃
【B キャスト】アレコ:アレクサンドル・トルーシュ/ゼンフィラ:山田佳歩
協力:NBA バレエ団/青森県立美術館/キヤノン株式会社/キヤノンマーケティングジャパン株式会社
主催:MoN Takanawa: The Museum of Narratives
チケット料金(税込)
S 席 9,500 円/A 席 7,500 円/B 席 5,500 円/プレミアム席(13:00/17:00 の回のみ):22,000 円/U29 S 席(19:30 の回のみ):7,500 円
※料金は全て税込価格です。
※2歳未満のお子さまはご入場いただけません。
※膝上鑑賞可能(無料)です。2歳以上のお子さまでお席をご利用になる場合はチケットが必要です。
公式サイト:https://montakanawa.jp/programs/aleko/

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菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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