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紳士のたしなみ

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国立劇場2024年9月歌舞伎公演 歌舞伎名作入門『夏祭浪花鑑(なにわかがみ)』

いつも楽しい片岡亀蔵(かたおかかめぞう)を狂言回しに、まずは、簡単なあらすじの解説があります。それが、入門『夏祭浪花鑑』をたのしむの段。登場人物を団扇絵で見せ、わかりやすく導入します。そして「この演目では泥んこになったり水をかぶったりと役者も大変」と語るのですが、実はその役を亀蔵自身が演じています。全九段の通し狂言の中で、今回上演の場が一番よくかけられる人気のところです。

そして、物語が始まります。『夏祭浪花鑑』は、祭囃子が鳴ったり、お神輿が通ったりと夏らしい華やかな場面と対照的に凄惨な殺しが繰り広げられる、人形浄瑠璃文楽の名作中の名作で歌舞伎でもよく上演されています。2023年5月の文楽での記事を書いていますので、そちらも合わせてご覧ください。

「住吉鳥居前(すみよしとりいまえ)の場」では、牢から出てきた団七(坂東彦三郎)が床屋でさっぱり、別人のようないい男になって出てくるところが見どころです。喧嘩っ早くて義理人情に熱い団七。彼を迎えに来た、懇意の釣船三婦(つりふねさぶ)(市川男女蔵おめぞう)がなんとも豪快な、頼りになる男。そこに登場する一寸徳兵衛(坂東亀蔵)も粋でいなせな色男。団七と徳兵衛の義理と意地を貫く達引(たてひき)をたっぷりと味わいます。

『夏祭浪花鑑』序幕「住吉鳥居前の場」(左)団七九郎兵衛:坂東 彦三郎 (右)一寸徳兵衛:坂東 亀蔵

続く「釣船三婦内(つりふねさぶうち)の場」では、器量よしのお辰(片岡孝太郎たかたろう)の覚悟の良さがさえ、「長町裏(ながまちうら)の場」での欲にまみれた団七の義父・義平次(片岡亀蔵)と団七の凄惨な修羅場が歌舞伎ならではの様式美で表現されます。

『夏祭浪花鑑』_二幕目「長町裏の場」(右)団七九郎兵衛:坂東 彦三郎 (左)三河屋義平次:片岡 亀蔵

神輿が客席の間を通り抜けるところが実に楽しく、役者たちのエネルギーが伝わってきます。

彦三郎は、初役の団七。牢から出てきたばかりの団七が、少しひょうひょうとし過ぎているように感じましたが、その後は、歯切れよく演じていました。亀蔵も義平次は初役。お辰を演じる片岡孝太郎も初役。亀蔵も徳兵衛は初役と、初役づくしの、役者たちの演技をじっくりと見られます。

新国立劇場・中劇場での歌舞伎は、左端に花道がつくってあり、長さが短くてあっと言う間に去っていってしまう寂しさと同時に、間近で見られる良さもあります。

その劇場ならではの特性を考慮してつくり上げるところは、さすがの歌舞伎の柔軟性。当時、実際に起きた事件を元に作られました。

 

2024年9月1日から25日まで 新国立劇場中劇場 HPはコチラ

*写真提供;国立劇場  撮影:二階堂 健  *2024年9月2日現在の情報です *記事・写真の無断転載を禁じます

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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