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紳士のたしなみ

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新国立劇場「ラ・ボエーム」で、感動の時間を

今まで見た「ラ・ボエーム」の中で一番感動した新国立劇場で開催中のオペラ「ラ・ボエーム」。2025/2026の開幕は、素晴らしいスタートとなりました。令和7年度文化庁芸術祭オープニングを飾るにふさわしい、情熱的で、集中力があってひきつけられ、そして誰もが一生懸命でした。

「ラ・ボエーム」は、こんなにロマンティックな物語だったのかと改めて感じました。旋律の魔術師プッチーニの調べにのせて物語が展開するわけですから、感情に訴えないわけがありません。貧しくても、若者には夢や希望があり、未来がある。しかし、病は貧困にかなわない。粟國淳(あぐに じゅん)の演出は、まるで19世紀のパリを再現したかのようで、叙情的です。それぞれの幕の冒頭は、モノクロのイメージから始まります。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

第一幕、画家のマルチェッロ(マッシモ・カヴァレッテイ)と詩人ロドルフォ(ルチア―ノ・ガンチ)の第一声がとてものびやかでハリがあり、この後が期待できる歌声で始まりました。特に、ルチアーノ・ガンチの声が色気があって魅力的です。パリの屋根裏部屋で暮らす4人の仲間たちは、とても仲良し。家賃も払えず、暖もとれない生活ですが、哲学者のコッリーネ(アンドレア・ペレグリーニ)、音楽家のショナール(駒田敏章)と4人集まると笑いが絶えません。

クリスマス・イヴの夜、街に繰り出すことにしたのですが、ロドルフォはもう少し原稿を書きたいと部屋に残ることにしました。するとそこにお針子ミミ(マリーナ・コスタ=ジャクソン)が、ろうそくの火をもらいにやってきて、途端に恋に落ちます。

この場面の描写が、これなら互いに一目ぼれするだろうなと納得できる表現でした。「私の名はミミ」は、名曲で知られていますが、その前にロドルフォが歌う有名なアリア「冷たき手を」にも圧倒されました。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

第二幕はカルチェ・ラタン。クリスマス・イヴで、人々であふれかえり大賑わいです。おもちゃを買ってほしいとねだる子供たちがいたり、物売りがいたり。ミミも含めて5人で食事を楽しんでいると、そこに、マルチェッロの別れた彼女、ムゼッタ(伊藤晴)がパトロンとやってきます。まだ未練がある2人の駆け引きが行われます。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

第三幕は、暗くて寒い場面。昨晩、ロドルフォはミミの所を出て行ってしまったとマルチェッロに訴えるミミ。そこにロドルフォがやってきたため、ミミは身を隠します。ロドルフォはマルチェッロに、ミミが具合が悪く自分の経済力ではどうすることもできないと、別れを決意したと話します。ミミはそれを聞いてしまい2人は別れることにします。

第四幕は、ロドルフォのいる屋根裏部屋にミミが「好きな人のそばで死にたい」とやってきます。出会った時のことなど思い出話を楽しそうに語り合う2人。幸せだったころのメロディが次々に登場します。あまりに切々とし、胸に迫り、涙を流さずにはいられません。

指揮はパオロ・オルミ。情熱的な指揮から繰り出されるドラマティックな「ラ・ボエーム」は見逃せません。

 

新国立劇場「ラ・ボエーム」2025年10月1日、4日、7日、9日、11日 HPはコチラ

*2025年10月10日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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