Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのお出かけエンタテインメント

東京ステーションギャラリー「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」展で、こころ安らぐ

宮脇綾子の作品を見ると、あたたかい気持ちになります。どれを見ても、作者の心根の温かさが伝わって来るようです。彼女は創作アプリケ作家。洋画家のご主人を持ち、40歳から創作活動を始めました。身近な野菜や魚を、生活の中で作品にしています。布と紙で表現されたものたちは、可愛らしく、対象物への愛が感じられ、思わず見ているこちらも笑顔になります。造形的にもデザイン的にも絵画より絵画的で、いつもそばに置いておきたい愛おしさにあふれています。

《さしみを取ったあとのかれい》1970年 豊田市美術館蔵

宮脇綾子は、絵を描くようにモティーフを見てデッサンし、それをもとに布を切り、縫い付けたり貼ったりして制作します。最初にするのは、じっくり見て観察し、形、色、パーツ、構造を研究し、探求すること。料理の前にこの観察が始まるので、家族はお預けにあうこともあったそうです。

《吊った唐辛子》1963年 豊田市美術館

根っこや細い茎、芽から生命力が溢れ、さらにそれを表現するための布が必要です。姑が残した大量の布地のほか、古裂を探して骨董屋や骨董市巡りをしたり、業者から使い古しの布を引き取ったり、農家を訪ねてもらってきたり、さらには知人たちも彼女のために布を持ってきてくれました。宮脇綾子は、本当に布が好きだったのでしょう。布の模様を巧みに利用し、あるいは模様を見てなにをつくろうか考えたりしました。布からインスピレーションを受けることもあったようです。

《たこと並ぶ魚たち》1957年 豊田市美術館

また、布だけでなく、どんなものでも大切にしました。レース、プリント生地、洗いざらしのタオル、着古した柔道着、使用後のネルのコーヒーフィルター、石油ストーブの芯・・。約150点の作品と資料が展示されています。

石油ストーブの芯の使い古しで作られた《めざし》1975年 豊田市美術館

作品に描かれている「あ」という文字は、綾子の「あ」であり、「あっ」と驚いた時の「あ」であり、そして人が緊張しておらず脱力した時の「あ」だと豊田市美術館の成瀬美幸学芸員は語っていました。

今年は1月から幸せ気分になれました。

左は《伊勢えび》1982年 豊田市美術館 右で話しているのは東京ステーションギャラリー冨田章館長

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」1月25日(土)~3月16日(日)東京ステーションギャラリー

*2025年1月25日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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