Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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東京フィル9月定期演奏会 圧巻のチョン マエストロ『マクベス』

あっと言う間にマクベスの世界に引き込まれ、息つく暇なくエンディングを迎える、チョン・ミョンフン名誉音楽監督の『マクベス』です。背中を椅子の背につける間もおしく、緊張感いっぱいでのめりこみました。

オペラ演奏会形式は、音楽の魅力が最大限に伝わると感じた今回。舞台上では充実した歌手陣が、歌い、演技し、照明も変化します。さまざまな演出が施されたオペラとは違い、音楽に耳をそばだてて聴き入り、音楽が物語を語るのを聴くことで情景が浮かびあがります。ヴェルディは、なんてドラマチックな曲を作ったのでしょう。

チョン・ミョンフンマエストロは、シェイクスピア&ヴェルディの傑作オペラ全3作を取り上げ、完結編を『マクベス』としました。2022年の『ファルスタッフ』では、マエストロは指揮台の横にほうきを置いてステージをはいておどけ、2023年の『オテロ』では重厚に、そして今回の『マクベス』では、王を殺害するナイフが同じく指揮台の上に置かれています。

撮影:上野隆文/東京フィルハーモニー交響楽団

歌手陣が充実しています。目を見張る歌唱と美ぼうのマクベス夫人役ヴィットリア・イェオ。第一声から、会場を巻き込みます。野望を抱く夫人の力強く強靭な声、そして狂気に陥った時は別人のように不安で弱々しく歌います。また、マクベスを倒すマクダフ役のステファノ・セッコ。マクベスに妻子を殺された哀しみと怒りを切々と歌い、涙を誘います。

マクベス役には、2022年の『ファルスタッフ』で登場したセバスティアン・カタ―ナ。周りを固める歌手陣も素晴らしく、最高の布陣ではないでしょうか。大事な役割を果たす魔女は、新国立劇場合唱団18人です。

撮影:上野隆文/東京フィルハーモニー交響楽団

会場にいるすべての人たちが、マクベスの世界に入り込み、まんじりともせず物語に浸ります。ストーリーを知っているのに、なぜこれほど緊張感が漂うのでしょうか。

オーケストラのヴァイオリン奏者は、腰を浮かして情熱的に演奏し、ソリストたちは、真から役になりきり、観客は前のめりになります。普段から新国立劇場でオペラの演奏をしなれている東京フィルは、チョンマエストロとの息がピッタリです。

撮影:上野隆文/東京フィルハーモニー交響楽団

マクベスは、ご存じの通り11世紀のスコットランドが舞台。将軍マクベスと友人バンクォーは、森の中で魔女たちから「マクベスは王に、バンクォーは王の父になるだろう」と予言される。それを知ったマクベス夫人は野心を燃やし、マクベスに王を殺害させるが王子マルコムは逃亡してしまう。予言を気にし、マクベスは、バンクォー親子と領主マクダフ一家を殺そうとする。狂気に入っていく2人。マクベス夫人は発狂して息絶え、マクベスはマクダフと民衆に倒される。———

ソリスト、合唱団、オーケストラ、観客まですべてがひとつになり、皆さんの表情から充実感がうかがいしれます。そしてマエストロからは「みんな、ありがとう」という感謝の気持ちがあふれ出ていました。

撮影:東京フィル

コンサートはこの後、9月19日(木)19時の東京オペラシティ コンサートホールを残すのみです。

*2024年9月18日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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