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空間も作品もアール・デコの世界 「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」東京都庭園美術館2025年9月27日(土)~

1925年にパリで開催された「アール・デコ博覧会」の100周年を記念した展覧会「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ー ハイジュエリーが語るアール・デコ」が開催されています。

「ヴァン クリーフ&アーペル」はアルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚を機に1895年にパリで創立されたハイジュエリー メゾンです。詩情あふれる独自のスタイルの作品群でアール・デコ博覧会の宝飾部門でグランプリを受賞し、そのひとつが、今回キービジュアルとなっている《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)です。

<《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション>

展覧会の開催場所は日本におけるアール・デコの聖地、旧朝香宮邸、現在の東京都庭園美術館。1933年、朝香宮邸を建設するにあたり、朝香宮ご夫妻がパリに滞在していた時に訪れたアール・デコ博覧会の室内装飾を手掛けた装飾美術家アンリ・ラパンやガラス工芸家のルネ・ラリックといったアール・デコを代表するアーティストたちに依頼しました。1910年代から30年代にかけてフランスを中心にヨーロッパを席巻した芸術潮流であるアール・デコを色濃く反映する芸術品のような建物です。

東京都庭園美術館の牟田行秀副館長は、「フランス人の装飾美術家たちは内装に関わりつつも日本に来ることはありませんでした。具現化したのは日本の匠たちです。『ヴァン クリーフ&アーペル』も、最先端のデザインや技術、テクノロジーを実現するために匠の手わざを大切にしていらっしゃいます。そこに共感しました」と、記者発表会で話されました。

<記者発表会より、左から東京都庭園美術館の牟田行秀副館長、東京都庭園美術館 方波見瑠璃子学芸員 、ヴァン クリーフ&アーペル パトリモニー&エキシビション ディレクターのアレクサンドリン・マヴィエル=ソネ、西澤徹夫建築事務所西澤徹夫代表>

展示されているのは、「ヴァン クリーフ&アーペル」の「パトリモニー コレクション」と個人蔵の作品合わせて約250点。さらに、メゾンのアーカイブから約60点の資料も展示されています。「パトリモニー コレクション」というのは、歴史的価値の高い作品を継承するために「ヴァン クリーフ&アーペル」が収集しているコレクションで、現在約3000点あります。メゾンの創業者一族ジャック・アーペルが作品を買い戻したことから始まり、いまもなお収集を続けているそうです。

では、展示空間と展示品が見事なまでに調和する会場を見ていきましょう。

アール・デコ期に制作されたハイジュエリー。バラは象徴的なモチーフです。イエローゴールド、ラピスラズリ、エナメル、シルク、ダイヤモンドで飾られた《イヴニングバッグ》 はエレガント。手にするとおそらく、光の加減で色が変化しさらに優雅に見えると思われます。

<左から《ヴァニティケース》(1926年)、《イヴニングバッグ》(1926年)、《ヴァニティケース》(1928年)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション>

1933年に特許を取得している「ミノディエール」の中でも《カメリア ミノディエール》は、鏡、時計を隠し持つリップスティックホルダー、ミステリーセットのルビーで飾られた2つのミニチュアボックス、パウダーコンパクト、ライター、ノートなどがきっちりとパズルのように収められたケースで、そのままクラッチとして持つこともできます。イエローゴールドの椿の花は、取り外すとブローチにもなります。小さなケースをあける時、どんなにときめいたことでしょう。

<《カメリア ミノディエール》(1938年)ヴァン クリーフ&アーペル コレクション>

 

多用途で使えるものが数多くありました。ペンダントトップを外してチェーン単体で着用できたり、ブローチがチョーカーやブレスレットとしても使えたりします。

また、洋服のジッパーから着想を得た《ジップ ネックレス》は、1938年に特許を取得し、1952年に作品として誕生しました。房飾りのついたタッセルをスライドさせてジップを閉じるとブレスレットになります。

<真ん中にあるのが《シャンティイ ジップ ネックレス》(1952年)などすべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション>

それにしても、匠の技は素晴らしい。新館では匠の技の動画も見られます。石を留める爪を表に見せずになめらかさを実現する「ミステリーセット」と呼ばれる技法など見入ってしまいます。動物や植物をモチーフにした作品を柔らかく表現するカーブには、この技術が生きるに違いありません。

一目で「ヴァン クリーフ&アーペル」のデザインだとわかるのはこちら。

<《アルハンブラ ロングネックレス》(1973年)など、すべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション>

そして、私が好きなのはこちら。

<左《1900 フラワー ネックレス》(1949年)すべてヴァン クリーフ&アーペル コレクション>

見ているだけで幸せです。

 

*記事の写真は特別な許可を得て撮影しています。ただガラスケースに収められた光り輝く宝石を撮影するのは極めて難しく、影やガラスに写り込んだものまで入ってしまい、きれいに撮影できていないことをお詫びします。

会期中、写真・動画の撮影は禁止されていますのでご注意ください。

「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」東京都庭園美術館2025年9月27日(土)~2026年1月18日(日)HPはコチラ

※日時指定予約制

*2025年9月30日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

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