Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

五感を研ぎ澄ます紳士

第2回「髙田賢三氏の五感」

東洋と西洋の文化の融合。パリを拠点に西洋の伝統文化の中で暮らし、更に日本人としての東洋と西洋で感じた感性・五感をモードとして発表した高田賢三氏。

1964年11月30日、25歳の髙田賢三氏は、横浜港からマルセイユ行きの船に乗り込んだ。

初めての海外、憧れのパリへの旅。

だが彼は飛行機ではなく、あえて1ヶ月かけて地球を半周する船旅を選んだ。

香港、サイゴン、シンガポール、コロンボ、ボンベイ、ジブチ、アレクサンドリア、バルセロナ。

各地に寄港しながら、異なる言語、異国の風景や風土の香り、耳に響く音、そして人々の服装(各国の民族衣装)に触れるたび、彼の五感は刺激され、未知の感性が目覚めていった。

船上では映画を観たり、毎日の様に開かれるパーティー、音楽会、デッキで日光浴等を楽しむなど優雅な日々

 

  船上での写真。

 

 アフリカ ジブチにて

 

東京の喧騒から離れたその時間は、彼にとって“感性の再構築”だった。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚――五感すべてが開かれ、日常とは異なる「世界の手触り」が心に残された。

 

そして6年後の1970年、彼はパリに自分のブティックをオープンする。

 

初のブティック外観・内観

   

 

開店と同時に開催されたファッションショーには、彼の旅と感性が詰まっていた。

それは、日本人としての感覚、旅で得た沢山の刺激、そして何より「五感の記憶」から生まれたデザインだった。

 

 

当時のヨーロッパでは、身体に沿うオートクチュールが主流の中で賢三氏は、身体を解放する自由な服を提案し、日本の“きもの”から着想を得た「平面裁断」によるデザインは、立体的な構築とは異なり、布の動きと空間に美しさとゆとりを宿らせた。

さらに彼は、冬のコートにウールではなくコットンを用いたコレクションを発表した。

発想の源は、日本の“丹前(どてら)”。

中に綿を入れたこのコートは、当時としては革新的で現代のダウンコートの原型ともいえる。

 

 丹前風ルック

 平面裁断photo by 増渕達夫

 バルーンルックphoto by 吉田大朋

 

 

その斬新さに、世界は驚き、彼を“木綿の詩人”と呼んで賞賛された。

やがて登場するのが、「フォークロア・ルック」だ。

アジアやヨーロッパの民族衣装に着想を得て、花柄、ストライプ、チェックを重ねたレイヤードスタイル。

色彩も鮮やかで、まるで旅先の情景をそのまま服に写したようだった。

更に、歌舞伎や日本の伝統芸能からのモチーフも溶け込んでおり、「色の魔術師」と称される理由がそこにあった。

 

 中国ルックPhoto by H.Feurer-Stern

 

1968年の五月革命以降、若者たちは既成概念に疑問を持ち、自由や反体制を求めるようになる。

その空気が、賢三氏のファッションにも追い風をもたらした。

時代が彼の感性に追いついてきたのだ。

「世界に自由と色をもたらした」と評されることに、彼は謙虚にこう答えている。

「僕は、自分の五感で感じたことを、服にしてきただけ。女性たちがハッピーになるような服を作りたいと思ったんです。そして、たまたまそれが、時代の空気に合っていた。つまり、僕は“時代の風”にうまく乗れたんです。」と謙虚な言葉を口にする。

賢三氏は、いつも相手を敬い、常に自然体の姿勢で、奢らず、他者を敬う。

その姿勢は、彼のデザインと同じくらい人々を魅了した。

髙田賢三氏は、世界を旅しながら、自らの五感(視覚、聴覚、嗅覚・味覚・触覚)で受け取ったすべてを、色・形・素材へと翻訳し、服というキャンバスに描き続けた。

それは単なる洋服ではなく、「感じること」を纏い、自然にかつその感覚を最大限に表現できるデザイナーなのだ。

五感は誰もが持っている。だが、それを磨き、意識し、自分の表現にまで高める人は少ない。

日常の中で香りに気づき、色を味わい、音に耳を澄ませる――その小さな積み重ねが、感性を育てていくのだろう。

そんな繊細な感覚を持った人に、私たちはなぜか惹かれてしまう。

五感を研ぎ澄まし、世界をまっすぐに受け止めるその姿勢は、言葉にできない魅力と品格を放つからだ。

今日もまた、風のにおい、光の表情、ふと響いた音に心を留めてみよう。

きっとその一瞬が、あなたの中の感性を、静かに目覚めさせてくれるはずだ。

五感を研ぎ澄まし素敵心が高い紳士に、私は出会いワクワクしたい。

 

 70年代 髙田賢三氏 パーティ―での乾杯@Paris

 

鈴木 三月 Yayoi Suzuki

東京都出身。 
パリソルボンヌ大学、Institute Catholique大学短期留学後、
パリプレタポルテ・オートクチュール協会日本事務所入社。
その後(株)エルカ入社KENZOのレディースPR担当として働く。
1991年 日本におけるアタッシェ・ドゥ・プレスの先駆けとして(株)パザパを設立。
ヨーロッパのファッションブランド
のPRを主に手掛けるとともに、髙田賢三氏本人からの依頼によりKENZO PARISの日本におけるブランドPR及び髙田賢三氏本人のパーソナルマネージメントをスタート。
又、その後㈱パザパの業務は、ファッションに留まらず、美容・レストラン等衣食住を中心とした業務へと活動の幅を広げる。 
2000年 髙田賢三氏の共同経営者として(株)KENZO TAKADAを日本に設立。 
2011年(株)パザパを、(株)セ・シュエットに社名変更(パザパはPR事業部として存続)。
2013年 調理師免許取得後、フードアドバイザーの仕事をスタート。
各種イベントにおけるケータリング等開始。
2014年よりWEB SITE 『Minimalize+plus』でレシピを公開。
2020年10月、SHOP CHANNELにて自身のウィメンズのブランド・ミニマライズ+プラスをスタート
2023年2月 「髙田賢三と私」を出版。                                                著書を出版後、髙田賢三氏のご功績とお人柄を多くの方に伝える為、又次世代を担う若者及びアーティストの方々に向けて講演活動やラジオ出演をスタート。
WEB SITE Minimalize+Plus https://minimalize-plus.tokyo/
著書『髙田賢三と私』  https://bookpub.jiji.com/smp/book/b621530.html
Minimalize+plus/SHOP CHANNEL https://onl.bz/QeNN3vR
Instagram https://www.instagram.com/yayoi_suzuki_/?hl=ja
FB https://www.facebook.com/yayoi.suzuki.146
X https://x.com/yayoisuzuki
【講演会】
姫路市主催・姫路城世界遺産登録30周年記念事業/公益財団法人神戸ファッション協会主催ファッションスペシャルステージ/名古屋音楽大学ヴォーカルアカデミー2024/たまがわLOOP世界に誇る日本人デザイナー髙田賢三/文化服装学院 世界に誇る日本人デザイナー髙田賢三の偉業/アクリエひめじマダムバタフライ・衣裳に秘めた想い 髙田賢三/
【ラジオ出演】
渋谷のラジオにゲストに2回出演 https://note.com/shiburadi/n/n7e237019e8be https://note.com/shiburadi/n/n7e237019e8be
渋谷ラジオ“ウラハラプロジェクト”第23回”賛同人トーク“』にゲスト出演 https://qr.paps.jp/SDO3M
オンラインラジオ 「渡辺喜子(YoshikoLee)の風」
【前編】ファッション界に与えた影響https://stand.fm/episodes/67a5a103cc7911f191c5ec7c
【後編】プライベートについてhttps://stand.fm/episodes/67a5b229b882aa4964b92efe
【特別版】みんなが知らない裏話https://stand.fm/episodes/67aac24d0ecf095805085de0ゲスト出演

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

おすすめのたしなみ