魅力ある紳士達の出会い
第10回「香りと生きる生活」
自分自身では気づきにくいものの、
周囲は敏感に感じてしまうのがその人の「匂い」だ。
人間が発散する体臭・香臭・年齢臭。
もっと端的にいえば、汗臭さやオジサン臭、強すぎる整髪剤や香水の香りなどだ。
特に薫風の季節、心地よい新緑の香りを鼻腔いっぱいに感じながら歩いていると、
すれ違った人の鼻をつくような汗の匂いにかき消される瞬間に
心底がっかりすることがある。
「臭害」をまき散らさないためには、
日々のシャワー・入浴を怠らず全身を清潔を保つことに尽きる。
しかしながら、朝はシャンプーの残り香を漂わせていたのに、
終日の就労により汗臭や脂臭、年齢からくる匂いなどが少しずつ溜まってゆき、
いやが応でも漂ってくるものである。
デート・会食・飲み会に備え、アフターファイブに再度シャワーを浴びられる環境が
あれば理想だがなかなかそうはいかない。
そんな時に香りの力を借りる。
というより香りをごく当たり前に日々の生活に取り入れるべきである。
ディオール・シャネル・イヴサンローランなど、フランスを代表するオートクチュール
メーカーが擁する化粧品ブランドのフレグランスによって
私自身香りというものに開眼させられた。
70年代半ばのことだ。
プアゾン・トレゾワ・オピウム・チャンスなど時代を彩った個性的な香りと
人生の想い出とが見事にリンクしていて振り返ってみると、とても感慨深い。
これら大手コスメブランドの香りは勿論現在も健在なのだけれど、
最近はハウスブランドともいうべきファミリービジネスによる小さなメゾンの
香りがフランスやイタリアから入ってきて香りの世界は
以前とは比べ物にならない程広がってきた。
かつては「その香りディオールのソバージュでしょ?」と言い当てられることが
ひとつのステイタスでもあったが、近頃は「その得も言われぬいい香りは
どこの何て言うフレグランス?」と聞かれることがステイタスになってきた。
ダマスクローズやバニラ、ムスクといったお馴染みの原料だけでなく、
少し前から人気となっているハバナシガーといったタバコの香りやカカオ豆、
シャンパン、スパーダーリリーなど卓抜したパフューマーの個性を発揮した
独自の香りたちが続々と世に放たれている。
香水とはもはや香りの水にあらず、自分自身のアイデンティティと哲学を
表現するための欠かせない小道具だと言っても過言ではない。
さらに言えば、朝纏う香り、午後の香り、イブニング用のパフュームと
場所のみならず時間的TPOに即して香りを選びたいものである。
かつてはバラの香りは女性用、メンズ香水はシトラス系や
ムスク系と決まっていたが、最近の傾向として
あえてその垣根を取っ払い男性がバラの香りを
纏ったりする粋さが評価されているのだそうだ。
No Perfume No Life
香りのない生活なんて考えられないを実践してみようではないか。

南 美希子 Mikiko Minami
(元テレビ朝日アナウンサー・エッセイスト・司会者・コメンテーター)
東京生まれ
東京女学館から聖心女子大学国語国文学科へ
大学3年生の時にテレビ朝日アナウンサー試験に合格。
3年終了後、1977年テレビ朝日アナウンス部に入社。
1986年12月に独立。
以降テレビ・ラジオ・執筆・講演・司会などで活躍中。
日本抗加齢協会公認のアンチエイジングアンバサダー。
美容・抗加齢に関しての知識も豊富。
東京理科大学オープンカレッジで話し方の講座を持つ。
https://mikikominami.net