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紳士のたしなみ

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豊原国周(とよはらくにちか)生誕190年 「歌舞伎を描く━秘蔵の浮世絵初公開!」静嘉堂@丸の内

歌舞伎好き、浮世絵好きにはたまらない展覧会です。静嘉堂文庫所蔵の「錦絵帖」の中から、役者絵だけが集められ展示されています。その見事なことといったらありません。構図や色彩が極めて美しく、躍動感があり、その背景にある役者と物語が立ち上がって来る素晴らしさ。時間をかけて細部まで見たいものばかりで、きりがありません。

三菱二代目社長岩崎彌之助夫人は観劇が好きで、夫婦で歌舞伎役者、五世尾上菊五郎(1844-1903)びいきだったそうです。多版多色刷木版画の錦絵を数多く集めていますが、その多くが五世菊五郎を描いたものなのだとか。お金持ちのひいきはさすがにたいしたもので、大磯に別荘地500坪を提供しています。

<豊原国周 「松竹梅湯島御額」坂東秀調の下女お杉、中村福助の八百屋於七、尾上菊五郎の土佐衛門伝吉、尾上菊之助の小性吉三 明治28年>

尾上菊五郎のように、歌舞伎史に名を残す役者の名前は「名跡(みょうせき)」として芸と共に今に継承され、引き継がれています。得意とした演目や役の技法、芸風を家の芸として伝えています。

たとえば、市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)、坂田藤十郎(さかたとうじゅうろう)、松本幸四郎(まつもとこうしろう)、中村勘三郎(なかむらかんざぶろう)、坂東三津五郎(ばんどうみつごろう)といった名跡には聞き覚えがあるでしょう。

<豊原国周 「歌舞伎座中幕廿四孝」五世尾上菊五郎八重垣姫 明治28年>

初代市川團十郎荒事芸(あらごとげい)の創設者で江戸歌舞伎の礎を作りました。「勧進帳」や「助六」といった「歌舞伎十八番」などがその芸です。そして、初代尾上菊五郎(おのえきくごろう)は世話物や怪談を得意とし妖怪変化が主人公の「土蜘蛛」「羽衣」といった「新古演劇十種」がお家芸です。尾上菊五郎を名跡に育てたのは3代目で、5代目は市村座の座元として近代歌舞伎の黄金時代を築きました。河竹黙阿弥は、5代目にあてて狂言を執筆するなど名優と歌われました。

今の7代目尾上菊五郎と女優の富司純子との間の子供が、5代目尾上菊之助と寺島しのぶ。5代目菊之助と2021年に亡くなった2代目中村吉右衛門の娘との子供が7代目お尾上丑之助です。

奇しくも、2025年5月歌舞伎座で、尾上菊之助が8代目尾上菊五郎を、尾上丑之助が6代目尾上菊之助になる襲名披露が執り行われます。いやがうえにも、沸き立つ展覧会ではありませんか。

《豊原国周 「菅原道真天拝山祈之図」五世尾上菊五郎の菅原道真 明治24年》

展示では「歌舞伎図屏風」を皮切りに、浮世絵初期の作品から「錦絵」を経て明治時代まで、役者絵の歴史をたどることができます。幕末、明治は浮世絵円熟期で、歌舞伎は「団菊左」(9代目石川団十郎、5代目尾上菊五郎、初代市川左団次)の時代でした。歌川国貞でなければ描けない肉筆画帖「芝居町・新吉原 風俗艦」、その弟子で明治の写楽と称された国周の錦絵帖10冊初公開です。

 

作品はすべて静嘉堂文庫美術館所蔵

豊原国周(とよはらくにちか)生誕190年 「歌舞伎を描く━秘蔵の浮世絵初公開!」静嘉堂@丸の内 2025年1月25日(土)~3月23日(日)前期:1月25日~2月24日 後期:2月26日~3月23日

*2025年2月2日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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