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開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

パナソニック汐留美術館で開催中の「コスチュームジュエリー」展は、何時間も居続けたい展覧会です。

コスチュームジュエリーとは、宝石や貴金属を使わないファッション性の高いアクセサリーのこと。宝石や貴金属は富や権力の象徴という意味合いがありますが、コスチュームジュエリーは、おしゃれをきわめるためのアイテムです。ガラスや半貴石、合金に銀などを使ったネックレスやブローチ、イヤリングにブレスレットなど、見事に美しい400点あまりのコスチュームジュエリーが展示されています。

 

コスチュームジュエリーの研究家で収集家の小瀧千佐子さんのコレクションを中心に、選び抜かれた作品が並んでいます。

小滝さんは「コスチュームジュエリーには3タイプあって、ひとつはディオールやスキャパレッリがオートクチュールのためにつくったもの。そしてプレタポルテのためのもの。3つ目が多くの人たちが手に入れられるモノに分かれます」と語ります。

まず、会場入り口で迎えてくれるのは、ポール・ポワレが妻のためにデザインした、仮装パーティ用の「マスクとブレスレット」(制作マドレーヌ・パニゾン、1919年)

彼が開催する仮装パーティはいつもテーマがあり、この時のテーマは「深海」。よく見るとマスクにタコがデザインされています。小瀧さんは「私の手元に来たときは、触るとくずれそうなほどの状態でしたが、それを2年かけて修復しました。今回皆様にお見せできるような状態になったときは、修復家の方と一緒に感動のあまり涙しました」と嬉しそうです。それにしても見事なマスクとブレスレットで、このブレスレットをつけたらどれほど腕がきれいに見えるでしょう。

ポール・ポワレは、女性をコルセットから解放したデザイナーとして知られ、1912年、自分がデザインした新しいオートクチュールドレスにあわせて創ったのが「コスチュームジュエリー」の始まりだと言われています。

模造のパールネックレスを大胆にセンス良く、何連にも重ねづけするガブリエル・シャネルの写真が記憶にある方もいらっしゃるでしょう。シャネルの作品も数多く出品されています。シャネルのコスチュームジュエリーになくてはならないアトリエが「メゾン・グリポワ」と「ロベール・ゴッサンス」。シャネルの「ネックレス『ビザンチンクロス』」(制作ロベール・ゴッサンス、1960年頃)は神秘的な美しさをたたえています。

アトリエ「メゾン・グリポワ」のキュートな作品群からは目が離せません。ディオールのために創られたスズランの花、スワンのモチーフは、ミス・ディオールの広告にも使われました。私は「えんどう豆」がモチーフのブローチが可愛くて大好き。

イタリア出身のエリザ・スキャパレッリ「ネックレス『葉』」(デザイン・制作ジャン・クレモン 1937年)は見事です。ポール・ポワレにセンスを見出され、シャネルの最大のライバルとされていました。この作品は、ボッティチェリの絵画の美しさに影響を受けて、葉を一枚ずつ重ねてつくられています。このゴージャスなネックレスをパーティにつけていったらどれほど映えるでしょうか。バレンシアガ、ディオール、ジバンシィ、イヴ・サンローランの作品も展示されています。

今、三越伊勢丹などの百貨店などに入っているドイツのコスチュームジュエリーメーカー「グロッセ」の前身のヘンケル&グロッセの作品もありました。このブランドは、1937年パリ万博で名誉賞を受賞し、1955年にはディオールと「ビジュー・ディオール」の独占契約を結び、パリにスタジオ・ディオールを設立した輝かしい歴史があるんですね。パリの洗練されたデザインを、ドイツの工房で形にしています。

1930年代になると、オートクチュールメゾンの多くがコスチュームジュエリーを発表するようになりました。技術に優れたアトリエである「コッポラ・エ・トッポ」「ロジェ・ジャン=ピエール」、日本ではあまり知られていない「リーン・ヴォートラン」らに依頼した独創的でミステリアスな作品も見ることができます。

1940年代になると、パリのファッションに影響を受け、アメリカでもコスチュームジュエリーの需要が大きく広がりました。「ミリアム・ハスケル」は自然モチーフの立体表現が得意です。

一般の女性たちは、コスチュームジュエリーのおかげで、おしゃれの幅が広がりました。気軽に楽しく装うことができるコスチュームジュエリーは身も心も華やかにしてくれる大切なファッションアイテムです。

 

開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

2023年10月7日~12月17日まで開催されています。HPはコチラ

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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