Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのお出かけエンタテインメント

METライブビューイング「セミーラミデ」は、25年ぶりの再演です

ロッシーニの「セミーラミデ」は、難し過ぎて歌手が揃わず、舞台にかけられなかったという難曲。その「セミーラミデ」が25年ぶりにMETでかかりました。その貴重な舞台を、映画館で楽しめるMETライブビューイング。最初、予告編を見ていた時は、私のようなオペラ初心者には向かないかもしれないと思っていましたが、何のことはありません。あまりの歌唱力の素晴らしさに、目が、耳が一瞬たりとも離せませんでした。

©Ken Howard

 

小さな音符が細かくどこまでも続き、正確にリズムや音を刻んでいかないと緩くなってしまう曲ばかり。それを長時間にわたって歌い続ける気力と体力が必要とされるこの演目。アリア、二重唱、三重唱の素晴らしさは、天にも昇る心地です。古代バビロニアの物語にあっという間に引き込まれていきます。

 

女王セミーラミデ役にアンジェラ・ミード。柔らかく豊かで威厳があり、けた違いの超絶技巧が宿ります。若武将役にメゾソプラノのエリザベス・ドウショング。パワフルで流れるよう、しかも感情豊かで的確に音を射止めていきます。インド王イドレーノ役に、ハヴィエル・カマレナのテノール。

©Ken Howard

これ以上高い音が出るのかと思わせるほどの高音を何なく出し、まさに現代屈指のテノールと言えるでしょう。アッシリアの王子アッスールに人気のバス、イルダール・アブドラザコフ。半裸の衣裳で存在感たっぷりです。

©Ken Howard

 

高僧役、ライアン・スピード・グリーンの安定した歌唱。そしてマウリツィオ・ベニーニの指揮は、繊細で表情豊かでベルカントオペラの名手です。

 

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物語は、女王が後継者探しをするところから始まる。

後継者候補に、アッシリアの王子アッスール、インド王イドレーノ、若き武将アルサーチェ。 そこに高僧が登場し、物語は動き始める。若き武将アルサーチェに魅かれている女王セミーラミデは、王になる権利と自分の夫になる権利を与えるが、実はアルサーチェは他の女性に心を奪われていた。しかも、何か知られざる秘密があるらしい。

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ライブビューイングの面白さは、幕間のインタビューにもあるのですが、女王役のアンジェラ・ミードと、若武将役のエリザベス・ドウショングが、「2人で二重唱ができて嬉しい」と話していたり、インド王役のハヴィエル・カマレナが「とにかく練習を重ねること」と言い、さらに、この世界を目指す若者に向けて、「賢く、知的に、謙虚に、自分の能力を見極め一歩ずつ進むこと」と、体験を通じて真摯に語ったり、高僧役のライアン・スイード・グリーンが、自叙伝を出したこと。そこには、「12歳の時には少年刑務所に入っていた。15歳でMETのカルメンを見て、アフリカ系の人の活躍を見て壁がないことを知り、この世界に入った」と目を輝かせて感謝の言葉を述べたりします。

©Ken Howard

並々ならぬ努力をして技術を身に着け、今があるのだということを教えてくれる、素敵な時間です。

 実力のある人たちそれぞれが、最高の歌唱を見せ、心をあわせ、一つの物語を紡いでいけば間違いなく最高のものが出来上がる。「何でもすぐにあきらめちゃダメなのね」と、なぜか反省してしまった私でした。

 選び抜かれたキャスティングで、傑作が上演されれば、それは感動を呼ぶこと間違いなし。この演目、2018年4月20日(金)までです。

 METライブビューイング「セミーラミデ」HPはコチラ

*2018年4月18日現在の情報です。*写真・記事の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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