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紳士のたしなみ

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紳士のためのお出かけエンタテインメント

2026年5月国立劇場文楽「生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)」第1,2部(2026年5月10日~25日)

今月の演目は、遊女になる前の可愛い娘2人の踊り『二人禿(ににんかむろ)』に続き、2部に渡る通し狂言『生写朝顔話』です。11時からスタートし、1部、2部と観て、終了は18時。手元にパンフレットと、解説のガイド機と、字幕のタブレットと、オペラグラスと取材メモを取れるようにノートとペンを準備して、一日観劇しました。

生写朝顔話』は、江戸時代天保3年(1832)に初演されたものです。当時は、「朝顔」が流行っていたようで、朝咲いて陽が沈むとしぼんでしまうというはかなさが魅力と思われ、さらに種は、薬草として使われていたということです。「朝顔」でイメージされるものが江戸時代の人たちの心をつかんようです。

さて、物語は、大名・大内家のお家騒動を背景に、岸戸家・家老の秋月(あきづき)弓之助の娘・深雪と、宮城阿曾次郎(人形遣い 吉田和生)との恋の物語。間にコミカルな段があり、それが面白い。医者の立花桂庵(吉田玉助)と萩の祐仙(桐竹勘十郎)が登場すると面白みにあふれます。「真葛が原茶店」「岡崎隠れ家」と、深雪が家出する場面を描いた「弓之助屋敷」は、東京では約50年ぶりの上演です。

〈宇治川蛍狩の段〉

夏の風物詩、蛍狩りの場面からスタートです。は恋心を表します。

水色の着物を着た美男の宮城阿曾次郎が蛍狩をしに京都・宇治川にやってきます。彼が短冊に書いた和歌が風に吹かれて、川岸の船に舞い込んでしまうと、そこには、岸戸家家老・秋月弓之助の娘・深雪がいました。その和歌の素晴らしさに深雪が顔を出すと、作者は見目麗しい美男ではありませんか。2人は、見初めあいます。ところが阿曾次郎は伯父の駒沢了庵に呼ばれて、すぐにそこを立ち去らなくてはならなくなりました。阿曾次郎は、扇に「朝顔の歌」をしたため、深雪もまた阿曾次郎への恋心を歌に詠み、離れ離れに。阿曾次郎は家督を継ぎ、主君の遊興をいさめるために鎌倉へ向かいます。

(左)宮城阿曾次郎:吉田和生 (右)秋月娘深雪:吉田簑二郎

〈真葛が原茶店の段〉東京では約50年ぶり上演

医者の立花桂庵は、弓之助から深雪との縁談を控える阿曾次郎の人柄を調べるよう頼まれています。ところが、桂庵は、深雪に恋する祐仙(ゆうせん)をだまして金をせしめようと、そして祐仙を阿曾次郎と偽って弓之助に会わせようと企みます。

江戸時代、「イモリの黒焼き」が惚れ薬として流行っていたそうで、鍋底の焦げを削って「惚れ薬」として渡すという場面もあり、当時の流行がここでもわかります。太夫の語る床本(ゆかほん 台本のこと)の中に「歌舞伎役者」に似ていると言うくだりがあり、そこを「吉沢亮」と映画「国宝」人気にあやかってせりふを変えたところも、軽妙です。

〈岡崎隠れ家の段〉東京では約50年ぶり上演

弓之助は、主君(中国地方・安芸国の大守)に諫言したため浪人の身となって京の岡崎に住んでいます。そこに桂庵偽の阿曾次郎(実は祐仙)を連れていきますが、あっという間に本物ではないということがばれてしまいます。

そのとき弓之助に主君から帰国するようにと知らせが届き、すぐに出立することになりました。慌ただしく準備をしているところにやってきたのが、本物の阿曾次郎。先ほどの偽物と同じ人物だと思われ、追い払われてしまいました。なかなか深雪と会えません。

〈明石浦船別れの段〉
阿曾次郎
が鎌倉に向かうために船にいると、風が吹くのを待つ大船に深雪の姿がありました。深雪は阿曾次郎の船に乗り移り、一緒に連れて行ってほしいと頼みます。阿曾次郎はそれを許しますが、深雪が両親へ置き手紙しようと一度船に戻ったとたんに風が吹き始め、船が出船してしまいます。せっかく会えても、また離れ離れです。

(左)宮城阿曾次郎:吉田和生 (右)秋月娘深雪:吉田簑二郎

〈弓之助屋敷の段〉約50年ぶり上演

屋敷に戻った深雪は、阿曾次郎のことばかり考えています。そこへ父親が帰ってきて、主君のすすめで婿を決めたと言うのです。実はその相手は阿曾次郎。ただし、大内家の家臣、駒沢次郎座衛門と名前が変わっていたので、阿曾次郎その人だとはわかりませんでした。切羽詰まった深雪は家出をしてしまいました。なんということでしょう。

(左)秋月娘深雪:吉田簑二郎 (右)秋月妻操:豊松清十郎

ここまでで第一部。ここで帰る観客は、「深雪はどうなっちゃうのかしら」と、さぞ気になることでしょう。約30分挟んで第二部が始まります。

 

【第二部】

〈薬売りの段〉
遠江国の浜松城下。この物語は、東海道の地域があちこち舞台になります。医者の桂庵は「笑い薬」を売っています。通りがかりの戎屋徳右衛門は、煙草の火を借りた礼に、笑い薬を買っていきました。これが後に続く伏線になります。

 〈浜松小屋の段〉
着の身着のまま家を飛び出した深雪は、三味線を弾いて細々と命をつなぐ日々。悲しさのあまりに泣き過ぎて盲目になってしまいます。なんということでしょう。

〈嶋田宿笑い薬の段〉
今の静岡県、大井川近くの嶋田宿で宿屋を営む戎屋徳右衛門は、最近盲目の芸人朝顔をひいきにしています。ここに宿泊する祐仙は、駒沢次郎左衛門と、お家転覆をはかる岩代多喜太が同宿していることを知ります。岩代は、お家転覆を狙っているため、主君の遊興をやめさせた駒沢の殺害を謀り、祐仙と共謀して「痺れ薬」を飲ませようとします。それを知った徳右衛門は、「笑い薬」とすり替え、祐仙に毒見をするように促します。祐仙は、「痺れ薬」の解毒剤を飲んで挑みますが、中は「笑い薬」。笑いがとまらなくなるのでした。

何と言っても驚くのは、お茶のお点前です。右手と左手は、違う人形遣いが動かしているにもかかわらず、お袱紗捌き(おふくささばき)など見事です。人形遣いは、お茶のお作法も知らないとできないのだなと、感心することしきり。また、笑い転げる人形の動きもさることながら、竹本千歳太夫の笑いが素晴らしい。

(左) 萩の祐仙:桐竹勘十郎 (右)岩代多喜太:吉田玉佳

〈宿屋の段〉

阿曾次郎改め駒沢は、ふと、衝立に書かれた「朝顔の歌」のことを徳右衛門に尋ねます。盲目の芸人・朝顔のもので、彼女は琴を弾いて「朝顔の歌」を歌いながら、身の上を語っていることを知ります。

義太夫が乗る床に琴が登場して何事かと思っていると、そこで琴が弾かれます。弾く手元と、朝顔の手元がもしかしてあっているのかもしれないと凝視しましたが、よく見えませんでした。

目の前に深雪がいるのに、阿曾次郎は岩代が同席しているため、自分だとは名乗れません。深雪のために大金と目薬を置き、去っていきます。その人こそ阿曾次郎だと気付いた深雪は後を追いかけます。その目薬は、甲子(きのえね)の年に生まれた男性の生き血とともに飲めば、即座に目が治るというものでした。

(奥左)岩代多喜太:吉田玉佳 (奥右)駒沢次郎左衛門:吉田和生 (手前)朝顔:吉田簑二郎

〈大井川の段〉
深雪は何とか大井川までたどり着きますが、駒沢はすでに向こうに渡ってしまっていました。川は増水で渡れず、絶望のあまり深雪は川に身を投げようとしますが、そこに徳右衛門が駆け付け、物語は急展開を迎えるのでした。

美男美女の恋物語。おかしみも加わり人気の作だったことが伺えます。でも、こんなに恋焦がれられても重いかも(笑)。

*2026年5月21日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます 写真提供:国立劇場 撮影:二階堂健(第一部)、 光齋昇馬(第二部)

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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