Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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METライブビューイング オペラ「フィガロの結婚」

最新のオペラを映画館で楽しむMETライブビューイング、今回の演目は、ロッシーニの「セビリアの理髪師」の続きであるモーツアルトの「フィガロの結婚」です。両方とも18世紀のフランスの劇作家ボーマルシェの戯曲をオペラにしたもので「フィガロ三部作」シリーズのうちの2つ。私は新国立劇場で「セビリアの理髪師」を見たばかりなので新鮮な気持ちのまま「フィガロの結婚」にのぞみました。

(c)Evan Zimmerman/Metropolitan Opera

「セビリアの理髪師」で、伯爵が美女ロジーナを射止めるのに一役買ったフィガロは、その功績により伯爵家で仕えています。ロジーナの後見人で彼女に結婚を迫っていたバルトロは、フィガロに阻まれたといまだに恨んでいます。バルトロは、家政婦だったマルチェリーナと、かつて恋人同士でしたが、そのマルチェリーナは、今は伯爵家の執事長・女中頭となっています。「セビリアの理髪師」と物語が絡み合っていますでしょ。

フィガロは、小間使いのスザンナと結婚しようとしていますが、そのスザンナに伯爵が手を出そうとしています。大変な思いをしてロジーナを手に入れたのにあっというまにこうなってしまうのね、とちょっと残念。上の写真がフィガロとスザンナ。

物語は・・

フィガロ(マイケル・スムエル)と結婚するその日、伯爵夫人の侍女スザンナ(オルガ・クルチンスカ)は伯爵(ジョシュア・ホプキンス)に狙われています。廃止した使用人に対する初夜権を復活させようともくろんでいるのです。そこでフィガロは、心が離れてしまった夫に悩む伯爵夫人(フェデリカ・ロンバルディ)に、計画を持ち掛けます。フィガロに恋する女中頭マルチェリーナ(エリザベス・ビショップ)は、借金の証文をかたにフィガロに結婚を迫ります。恋多き小姓ケルビーノ(サン=リー・ピアース)は、伯爵に手が早いのを見とがめられ、軍隊に行かされることに。

マルチェリーナがフィガロに結婚を迫ると、あろうことか幼いころに誘拐されたバルトロとの子供だったことがわかります。一気に打ち解ける2人。絶妙な笑いで物語が進みます。

(c)Evan Zimmerman/Metropolitan Opera

フィガロとスザンナは結婚式をあげますが、その夜、伯爵夫人の計画により伯爵を罠にかけることに・・。

大掛かりで豪華な回り舞台は、物語を盛り上げます。スピーディなリチャード・エアの演出はテンポ感がよく、スムーズです。フィガロの結婚のフィガロ役を当たり役とするマイケル・スムエルの第一幕終わりの「もう飛べないね、恋の蝶々」は、とても有名な曲で、美少年が恋のさや当てから、軍隊に行かされる様子をまじめに歌います。

高貴な声と美ぼうのスターソプラノ伯爵夫人役のフェデリカ・ロンバルディはローズ色のドレスがお似合いです。豪華な伯爵邸のセットにピッタリ。

(c)Evan Zimmerman/Metropolitan Opera.

コケティッシュなケルビーノ役のメゾソプラノ、サン=リー・ピアースはニューヨーク生まれの中国系アメリカ人でズボン役(女性が男性の役を演じる)がお似合いです。アリア「恋とはどんなものかしら」も素晴らしい。

(c)Evan Zimmerman/Metropolitan Opera.

伯爵夫人の侍女スザンナ役のオルガ・クルチンスカは、出ずっぱりで大活躍。演技はチャーミングだし、「恋人よ、はやくこちらへ」のロマンテイックなレガートの歌声にはうっとりさせられます。

今回がMETデビューである新進気鋭の若手指揮者ヨアナ・マルヴィッツがモーツアルトを軽快に楽しく、めりはりつけて奏でます。名曲が次々と出てきますし、アンサンブルが美しく、まさにこれぞモーツアルト。

METライブビューイング「フィガロの結婚」5月30日(金)~6月5日(木) ※東劇のみ6月12日(木)まで 上映開始時間が日によって異なる劇場がありますのでご注意ください。HPはコチラ

*2025年6月1日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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