Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのアートデート

Vol.11横浜美術館の『BODY/PLAY/POLITICS』展                   開催期間: 2016年12月14日(水)まで☆

 みなとみらい線(東急東横線直通)「みなとみらい」駅〈3番出口〉から徒歩5分ほどというロケーションにあるのが横浜美術館。ランドマークタワー、馬車道、クィーンズスクエア、汽車道、ロマンチックな港の風景などに囲まれたこの美術館は、まさにデートスポットの真っただ中。時代を牽引する国内外6人の現代アーティストによる『BODY/PLAY/POLITICS』展が話題の横浜美術館へデートに誘ってみてはいかがでしょうか。

 ❖展覧会概要❖

 「カラダが語りだす、世界の隠された物語」とコピーのついた『BODY/PLAY/POLITICS』展では、人間の身体や集団としての行動、超自然的な存在など、歴史を通じて作り上げられた身体が生み出すイメージの数々をモチーフに、それぞれの角度から作品化していく現代の作家たちの作品を紹介しています。タイトルからして「体、演じること、政治性」と、なんか難しそうにも聞こえますが、作品は大型の立体作品や映像も含めたスペクタクルなもの。まずは純粋にその迫力を感じながら会場を歩いてみるのも良いかもしれません。インカ・ショニバレMBE、イー・イラン、アピチャッポン・ウィーラセタクン、ウダム・チャン・グエン、石川竜一、田村友一郎ら6人のアーティストが個々にセクションを構成しているので、それぞれの物語を探索する感覚です。

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展覧会入ってほどなく現れるインカ・ショニバレMBEの作品≪蝶を駆るイベジ 双子の神≫2015年

 最初に遭遇するのが、イギリスに生まれ、アフリカにルーツを持つことからナイジェリアで育ったインカ・ショニバレMBEの作品。アフリカの国々がヨーロッパ植民地から独立する際、アフリカ更紗を身にまとうことがアイデンテティの象徴となった一方でアフリカ更紗の多くがヨーロッパで大量生産された輸入品であったという皮肉な事実に着目した作品を発表。

映像作品からは、アフリカ更紗の西洋風ドレスをまとった黒人歌手がヴェルディのオペラ『椿姫』を歌い、繰り返される同じアリアのフレーズが会場に響き渡ります。

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インカ・ショニバレ MBEの映像作品《さようなら、過ぎ去った日々よ》2011年 Courtesy the artist and James Cohan Gallery, New York

  ベトナム出身のウダム・チャン・グエンが表現した舞台はホーチミン市。訪れた方はイメージが沸きやすいかもしれませんがホーチミン市では、バイクに乗った人々が前後左右ひしめいて道路を行きかっています。ウダム・チャン・グエン曰くベトナムで一番人気のバイク「ホンダ」を象徴的に展示して作り上げたインスタレーションが《ヘビの尻尾》。

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エントランスから会場内に向けてダイナミックに張り巡らされている作品はウダム・チャン・グエンによるインスタレーション≪ヘビの尻尾≫(C) UuDam Tran Nguyen. Courtesy of the artist.

 《ヘビの尻尾》のカラフルなチューブはバイクから排出された空気に満たされて跳ね回ります。歴史上の神と人間の逸話を複数取り入れたイメージですが、バイクに乗る人々の映像が、同じチューブのヘビによって繋がれているのも印象的な作品。

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自らの作品《ヘビの尻尾》の前で解説をするウダム・チャン・グエン

 真っ暗な部屋に入ると大きな画面に映される女性達にちょっとびっくりするイー・イランの作品。「おばけだ、ホラー映画『リング』の貞子だ!」と筆者は思ってしまったのですが。。。やはりこの長い髪で顔を覆った女性達は、東南アジアではよく知られる「ポンティアナック」という亡霊で、妊娠中や出産中に亡くなったなど悲しい亡くなり方をした幽霊との言い伝えがあるとのこと。この作品を制作した作家イー・イランも女性ですが、出身地のマレーシアでは、女性の身体が男性や家族のためなど自分のため以外にあるという社会通念が根強く、子供を産むことを強く期待されているという。とめどなく話し続ける彼女達は、子供を産んでも産まなくても女性の価値は変わらないということを、密やかなガールズトークのような形で伝えているようです。

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イー・イランの映像作品《ポンティアナックを思いながら
:曇り空でも私の心は晴れ模様》2016年 (C)Yee I-Lann

 2010年に『ブンミおじさんの森』が第63回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞して話題にもなったアピチャッポン・ウィーラセタクンの新作も注目です。部屋に入ると、立体的な映像インスタレーションが現れます。最初は燃え盛る日輪かとも見えましたが、次第に燃えているのが3台の扇風機だとわかります。作品の名も《炎(扇風機)》。炎が燃え盛ったり小さくなったりを繰り返します。半透明のスクリーンを通して立体的に浮かび上がるこの円状の炎は、美しくも見えるし何か恐ろしいものにも感じられます。アピチャッポンは、魅惑的なものと脅威が共存する状態を表現していると言います。

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アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作映像インスタレーション《炎(扇風機)》2016年 Courtesy of Apichatpong Weerasethakul

 グランドギャラリーにある2009年の作品《ナブアの亡霊》もまた、村民を襲った軍事政権による照明弾の火と、焼き畑の美しくも見える火の記憶が同居しているような作品。これらのテーマは、アピチャッポンが制作する映画にも共通するテーマとのこと。アピチャッポンは、2016年12月に個展『亡霊たち』を東京都写真美術館にて開催予定。ヴィデオ、インスタレーション、映画など充実した個展になりそうとのことで、こちらも楽しみです。

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気さくに取材に応じてくれたアピチャッポン・ウィーラセタクン

 2015年に第40回木村伊兵衛写真賞と日本写真協会賞新人賞受賞をダブル受賞して旬の写真家となっている石川竜一の写真コーナーも!これまで彼が撮り続けてきた沖縄だけでなく、「県外」を含む日本各地で出会った人々のポートレートが発表されています。くっきりしたお顔立ちで、黙っているとクールな人なのかなと思いきや、語り始めると訥々としていて素朴な雰囲気。こんな感じで道端で声をかけてきた人々を撮影したのかなと思いをめぐらせました。中でも個人的に付き合いが続いた《小さいおじさん》と《グッピー》という2人にフィーチャーしたコーナーも見所です。

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≪グッピー》2011-2016, (C)Ryuichi Ishikawa : 素朴な語り口の石川竜一 

 会場でひと際異彩を放っていたのは、田村友一郎の作品である《裏切りの海》。4人のボディビルダーがビリヤードに興じているではありませんか。ビリヤード台、人体のパーツとなったコンクリートの彫像、映像によって構成されたこのインスタレーション作品は、第二次世界大戦後の占領下の横浜に、米兵によって持ち込まれた鍛えられた身体とその生成をめぐる物語です。(※ボディビルダーが居たのは記者向けの内覧会の日のみ。通常は居ません)

 ギリシャに旅立った後に帰国してボディビルによる肉体改造を試みる三島由紀夫、横浜の海でみつかったバラバラ遺体事件、イタリアのリアーチェの海底から発見された古代ギリシア戦士達のブロンズ像、それらのイメージが交錯して混ざり合って《裏切りの海》という作品になっています。

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ビリヤード台のボディビルダー達           コンクリートの彫像の足パーツ 

 田村友一郎は、ブロンズの彫像が身体のパーツごとに制作されることと、ボディビルダーが「今日はこの筋肉」という風にパーツに分けて筋肉を作り上げていく事に共通点を見出したと言います。横浜の近代史と、完璧な肉体への憧れが交錯しているようなこの空間に佇んだ後は、横浜でのアートデートという現実に戻ってくださいね!

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《裏切りの海》の作者田村友一郎。自らもボディビルにトライした経験がある。

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横浜の地図が描かれたビリヤード台。
 

それでは、みなさん、good luck! アートと共に楽しいひとときを! 

【展覧会開催概要】
BODY/PLAY/POLITICS
会期:2016年10月1日~12月14日
会場:横浜美術館
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4番1号
電話番号:045-221-0300
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)、10月28日は20:30まで開館(入館は20:00まで)
休館日:木休(ただし11月3日は無料開館)、11月4日
入館料:一般 1500円 / 大高生 1000円 / 中学生 600円
URL:http://yokohama.art.museum/special/2016/bodyplaypolitics/

菊池麻衣子 
【現代版アートサロン・パトロンプロジェクト代表、アートライター、美術コレクター】
東京大学卒:社会学専攻。 イギリスウォーリック大学大学院にてアートマネジメントを学ぶ。ギャラリー勤務、大手化粧品会社広報室を経て2014年にパトロンプロジェクトを設立。

【月刊誌連載】2019年から《月刊美術》「菊池麻衣子のワンデイアートトリップ」連載、《国際商業》アートビジネスコーナー連載
 資格:PRSJ認定PRプランナー
同時代のアーティスト達と私達が展覧会やお食事会、飲み会などを通して親しく交流する現代版アートサロンを主催しています。 美術館やギャラリーなどで「お洒落にデート!」も提唱しています。

パトロンプロジェクトHP:  http://patronproject.jimdo.com/
パトロンプロジェクトFacebook: https://www.facebook.com/patronproject/
菊池麻衣子Twitter: @cocomademoII

インスタグラム:https://www.instagram.com/cocomademois/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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