Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

魅力ある紳士達の出会い

第26回 昭和の名優に学ぶ「気障」の流儀

「気障」キザという言葉は昨今では死語にさえなってしまった感がある。

例えば、気障な俳優と言ってもなかなか思い浮かぶ人がいない。

しかし、その昔は枚挙にいとまがなかった。

筆頭は石原裕次郎さんだろうか。

専属の洋服職人がいて生涯に数千着の私服や衣装を仕立てたと言われている。

襟高のシャツが印象的で、通常より1センチ以上高い襟を好んだという。

アナウンサー時代に「西部警察」の番宣インタビューで

実際お目にかかったことがあるが、

背広から多めに出る襟の印象はいまだに私の瞼に焼き付いている。

そして、ケタ違いのオーラとカッコ良さがある反面、

優しい人だった。

袴高(はかまだか)のシャツは、

首がすっきり見えるというご本人のアイディアだったと聞いた。

タバコを咥え、ライターの火をパッとつける仕草も印象深く、これも

裕次郎さんならではの気障でカッコいい仕草の象徴だった様に思う。

同じくアクション映画の黄金時代を築いた小林旭さんや宍戸錠さんも

気障という言葉が似合う俳優だった。

「マイトガイ」こと小林旭さんは激しいアクションが定評で、

ダイナマイト級のナイスガイが転じて「マイトガイ」と呼ばれていたそうだ。

宍戸錠さんは「エースのジョー」と呼ばれ、

かっこいいアクションシーンにこだわっていた。

いずれも普通の人とは、

一味も二味も違ったダンディーでカッコ良さを俳優たちだった。

それも、ファッションにとどまらず仕事においても、

どうふるまえば他人の眼にスマートに格好よく見えるかを、

計算しつくしているようなところがあった。

いわゆる「気障」がもてはやされたように思う。

時代は少し下って、気障を貫いた俳優といえば田村正和さんだろう。

髪をかきあげる仕草、

独特な喋り方とポーズ、私生活からキザを貫いたと言われ、

それゆえに素の自分を垣間見せることはなく、

私生活もベールに包まれていたようなところがあった。

役柄にもこだわり、イメージを崩すような役は引き受けなかったそうだ。

最期も老醜や病んだ姿を一切晒す事なく、ひっそりと人生の幕を閉じた。

近年は気障という言葉そのものが流通しなくなったせいか、

該当する俳優は見当たりにくく、

気取った役を演じたことから2〜3の俳優の名前は上がっているが、

昭和の大スターであった上記の気障男たちと比べると

スケール感も到底及ぶべくもないように感じる。

「気障」は時に「虚栄」という言葉に置き換えてもいいように思う。

あの三島由紀夫は「虚栄について」という短い文章を残している。

「虚栄というものを人間の浅はかな精神的お化粧のように考えている人がいるが、

それこそが浅はかな考えである」という一文から始まるのだが、虚栄を脱ぎ捨てて

「ざっくばらん」に振る舞うことも男の世界の虚栄心の一つだと三島は言うのだ。

さすがミシマ、気取るだけが虚栄ではなく、

ざっくばらんに豪放磊落に振る舞うのも男の虚栄の一つだと見抜いている。

こう考えると気障とは人の目により良い男に見せるために演じ続けることと

言い換えられるのかもしれない。

昨今、なぜ気障が死語になりつつあるのか。

それは余裕のなさの現れではないだろうか。

精神的、経済的余裕を奪われ、あくせく生きる現代の男たち。

気取って生きている場合ではないというのが本音だろう。

「化粧男子」が増えているという。

しかし、外見の化粧以上に贅沢なお化粧は三島流にいうと

「精神的お化粧」なのである。

「気障」と言われようと、

自分の美的基準に則った虚栄をまとった男は、

いつの時代も光っているし、またモテる。

「気障」に生きてみようではないか。

南 美希子 Mikiko Minami

(元テレビ朝日アナウンサー・エッセイスト・司会者・コメンテーター)

東京生まれ

東京女学館から聖心女子大学国語国文学科へ

大学3年生の時にテレビ朝日アナウンサー試験に合格。

3年終了後、1977年テレビ朝日アナウンス部に入社。

1986年12月に独立。

以降テレビ・ラジオ・執筆・講演・司会などで活躍中。

日本抗加齢協会公認のアンチエイジングアンバサダー。

美容・抗加齢に関しての知識も豊富。

東京理科大学オープンカレッジで話し方の講座を持つ。

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