Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのお出かけエンタテインメント

9月 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」9月2日~26日

「秀山祭」というのは、初代・中村吉右衛門(明治19年~昭和29年)の功績を顕彰した恒例の舞台で、初代・吉右衛門の俳名「秀山」を冠しています。芸と精神の継承を目的とし、吉右衛門の名跡を継いだ二代目・吉右衛門を中心に2006年に歌舞伎座で始まり、今年で20年目を迎えます。今年は、初代・吉右衛門の生誕140年目に当たるということで、二代目が得意とした「ひらかな盛衰記」「沼津」「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」と言った古典の名作がかけられています。

二代目が5年前に亡くなり、その後、甥の幸四郎、娘婿の尾上菊五郎たちが担い、今年は松本幸四郎と仁左衛門が「沼津」の十兵衛をダブルキャストで演じます。仁左衛門人気はすごく、チケットをとるのが、とにかくたいへんです。仁左衛門が登場する初日に伺い、82歳で意気盛ん、生き生きと上方歌舞伎の面白みと凄みをたっぷりと見物してきました。前半の楽しい箇所は肩の力が抜けていて、軽妙、洒脱、後半の真実が明かされる場面は胸がえぐられます。
「一條大蔵譚」は、うつけを演じる役を初役で染五郎が演じ、懸命な芝居を観客が応援する空気が覆います。回を重ね、練りこまれて、余裕たっぷりに舞台に立つ姿が楽しみです。

他に魁春、萬壽、雀右衛門、歌六、又五郎、松緑、錦之助らが出演。売り出し中の花形、染五郎、團子、辰之助も共演しています。
「沼津」の雲助平作、「盛衰記」の船頭権四郎の老け役は、初代吉右衛門の父三代目歌六の当たり役だったそうですが、私は、今月、平作役の当代歌六に注目。新聞で連載されていましたので、じっくり読んで舞台を拝見しました。

昼の部の演目は、『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』『三社祭』は舞踊。『ひらかな盛衰記』は源平合戦を描いた作品です。
夜の部、『雛鶴三番叟(ひなづるさんばそう)』、伊賀道中双六『沼津』、銘作左小刀『京人形』、『一條大蔵しょう(いちじょうおおくらものがたり)』。

9月は夜の部を見物しました。『雛鶴三番叟(ひなづるさんばそう)』は女方による軽やかな舞踊です。魁春、萬壽、雀右衛門のしっとりとした舞踊と、うっとりするほど美しい衣裳に目を奪われます。ぜひ、オペラグラスを持ってお出かけください。

『沼津』は、仇討ちと親子の情に、引き裂かれるような思いがこもる物語です。東海道を旅する商人の呉服屋十兵衛(片岡仁左衛門)は、沼津で荷担ぎの平作(中村歌六)と出会います。年配の荷担ぎ平作から「担がせてくれ」と頼まれ仕方なく荷を預けます。しかし足元はおぼつかず、怪我までしてしまうしまつ。十兵衛は、自分が持っている印籠の妙薬で手当てをします。そこを通りがかった平作の娘お米(片岡孝太郎)に十兵衛は一目ぼれしてしまい、平作の家に立ち寄ることにします。その夜、運命の糸ともいえる縁が明らかになります。
世に言われる三大仇討の一つ、「伊賀越えの仇討ち」を題材とした伊賀道中双六、全十段のうちの六段目にあたり、武士の仇討ちに巻き込まれる庶民の悲劇を描いています。
おだやかで面白みのある雰囲気が、後半、悲壮感が漂い、上方風の仁左衛門の軽さが楽しめると同時に、哀切も漂い、涙なくして見られません。ややこしい話なので、イヤホンガイドが必須でした。

『京人形』は、伝説の彫師・左甚五郎(尾上松緑)と、魂の入った人形の舞踊です。左甚五郎は、江戸時代に活躍した彫工の名人で、日光東照宮の眠り猫の作者として知られています。
甚五郎は、京都の廓で見初めた忘れられない太夫に生き写しの人形(中村時蔵)を掘りあげ、家に置いてあります。甚五郎の想いが強く、人形には魂が宿っています。この舞踊劇の見どころは、人形の動きが変化するところ。太夫の魂が入った時とそうでない時の仕草の違いがおもしろく、常磐津と長唄の掛け合いや、大工道具をつかった立ち廻りが、なんとも滑稽です。

「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」は、『鬼一法眼三略巻」の四段目です。平家全盛の頃、かつて源頼朝の妻だった常盤御膳(中村雀右衛門)が、敵の平清盛の寵愛を受けた後、公家の一條大蔵長成(市川染五郎)に嫁いでいます。源氏方の人間が、常盤御膳の真意を知ろうと忍び込み、そこに、敵役の八剣勘解由(松本幸四郎)が登場。染五郎の役は、劇中で阿呆を演じる役で、これまでは幸四郎のお役でした。同じ舞台の上で、父子が役を継承していくのは、歌舞伎ならではの面白さでしょう。

2026年9月26日まで
*2026年9月15日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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