洋服は“その人”を表わす
「ファッションというと、服というモノ自体に寄りがちなんですが、着てはじめて完結する。そこに人間性が表れてくる。洋服はその人を表わ します。」と語るのは、クリエイティヴプロデューサーの藤澤龍一さん。おしゃれの原点は「自分の生き方」であり「表現」だからこそ、服に着られてしまうの ではなく、中身の人間性を高める必要があると言う。
「今は、モノに対しての価値観がすごく浅い。ファッションでも着捨てというのが生活のパターンになってしまっていますが、イザという時に自分の品格や立場を表現するために、もっと精神性を磨いていかないと本物になっていきません。」(藤澤)。
藤澤さんは、数々の伝説のイベントをプロデュースしてきた敏腕プロデューサー。ラグジュアリーブランドのコレクションはもとより、天皇皇后両陛下ご臨席の ドン・ペリニヨンのパーティや、ザ・ペニンシュラ東京のレストラン「PETER」のオープニングレセプションなど、どれも、今でも忘れられないひとコマと して、人々の話題に上るほどだ。
精神性を重視していく時代
「イベントというのは一瞬で終わっていくんです。『創り上げては壊し』が常に続いていく仕事の中で、時代の変化と共にスタイルも変えてい かなくてはならない。同じ繰り返しではいけないという事を学びました。そして、あらゆる分野での表現のあり方も変わってきています。これからはファッショ ンのみならず、色々な分野で精神性を重視していく時代になっていくんじゃないでしょうか。」(藤澤)。
フランスにいたからこそ、日本に戻ってきて「和」のテイストである「削ぎ落とされた美しさ」を、洗練された日本の美として捉えられるようになり、イベントでも和のプロデュースを取り入れてきた。
人間って愛おしい
「今まで何百とさせて頂いたイベントは、宝です。いつも皆に支えられて、ラッキーだったと感謝しています。今まで教えて頂いたことを伝えたいですね。そのためには、自分の考え方や生き方を見せるしかありません。そういう場を、もっとたくさんつくっていきたい。」(藤澤)。
「人間が好き。人間って愛おしいなって思う。」と藤澤さんは言うが、大勢の人が関わる厳しい現場で、柔らかな心で相手の良い点を発見しようと努力し、出会いを素晴らしいと感じられる方なのだ。これからは「龍一」ブランドとして、新たな活動を開始する。
文:岩崎由美