<おしゃれしている気持ちが、自分を高める>
今年創業110周年を迎えるカンロ株式会社は、売上高256億円(過去最高)、営業利益12億円(前年度を5割上回る)、従業員617人(2022年6月時点)の、キャンディのトップシェアメーカーだ。
山口で創業し、1955年に醤油の隠し味の「カンロ飴」を発売。そのヒットにより60年に社名を「カンロ株式会社」にする。73年に三菱商事と販売総代理店契約を締結し、現在は三菱商事の非連結関連会社であり東証スタンダート企業となっている。
三須氏が、社長に就任したのは2016年のこと。三須氏は、三菱商事で食品本部長などを歴任し、当時からカンロの管理職会議などにも出席していたため、旧知の会社であった。着任後、数々の改革をおこない、大きく会社を変化させた。
「私が来て、今のオフィスに移転するのに合わせて服装も自由にしました。最初は、みんな戸惑っていたのでファッションコーディネーターに来てもらって、講演をしてもらったりしたんですよ。自由度を高めることで、常に新しいことを考え、消費者の考えを理解し、そしてその先をいくというのがとても重要だと思うんです」。
2017年には、40年間使用してたCIの変更もおこなった。ロゴマークを変え、コーポレートカラーを変えた。「糖から未来をつくる」というコーポレートメッセージを打ち出し、健康志向と本物志向を意識して、糖に対する正しい価値を普及したいと考えた。
<糖は、大事な脳のエネルギー源>
「糖質ダイエットが流行るなど、糖はいけないものという風潮が強くなっています。本当にそうなんでしょうか。人工甘味料で甘さを出そうと思えばできないことはありませんが、美味しくないし、健康面でも気がかりです。さらに糖は、人間の身体に必須です。脳のエネルギーになりますので、過度な糖質ダイエットは避けたほうがいいですね。急激に糖を摂取すると血糖値がはね上がりますので、ゆっくり食べるのが重要です。ただ、血糖値は上がらないと運動ができませんし、考えるときも必要なので、ゆっくり吸収される飴が最適なんですよ」と、その大切さを語る。
<素材を活かし、機能性を軸に開発>
社長に就任してCIを変更した後、極力、添加物を減らすため、看板商品であるカンロ飴のレシピをリニューアルした。カンロ飴にはアミノ酸が入っていたが、アミノ酸を入れずに同じ味になるように必死の努力を重ねた。そのカンロ飴のほか、無香料・無着色で素材の味を生かした「金のミルク」、業界初ののど飴となった「健康のど飴」、「マヌカハニー」などが、現在のメインブランドとなっている。大人の女性向けに開発した「ピュレグミ」はすでに20周年を迎え、「カンデミーナ」などグミ市場も成長著しい。グミの製法を応用して開発したマシュマロの「マロッシュ」も好調だ。
「飴の機能は、のどを潤すことです。喉の違和感を感じた時、飴をなめると和らぎます。ミント系のものをなめると鼻がすっと通りますし、『ボイスケアのど飴』は、歌う人たちにとって必須だと言われているほどです。グミは咀嚼力を高めます。心を癒してくれることも機能のひとつです。さらに、この秋には機能性表示食品「ハーバルグッド」もスタートさせました」。
2022年に打ち出した企業パーパスは、「Sweeten the Future心がひとつぶ、大きくなる」。三須社長は、業績をV字回復させ、将来を見据え新機軸を次々と打ちだしている。
<宝物は仲間>
三須社長が大切にしているのは、日々のルーティンワークである。朝5時に起き、ゴルフの打ちっぱなしに行ってから、ウォーキングをして朝食を食べて出勤。ランチタイムも会社の周りを歩く。週に2回はジムに通い、筋トレは欠かさない。大好きなゴルフもやり、ホッケーの試合にもでる。
「高校、大学とホッケーをやっていて、57歳の時に、誘われて再開しました。ホッケーをやるためには、かなりシェイプアップして、筋力もつけなくてはいけません。筋トレしたり、走ったりするのは、日々のルーティンの中に組み込めるし、ちょうどいいかなと思ったんですね。いま、ホッケー協会の会長をしていて、月に一度は試合に出ています。この10月にはマスターズワールドカップが日本で初めて開かれ、世界12か国27チームが集まりました」。
人生哲学を伺うと、いつも新入社員に言っているという4つのCを教えてくれた。
Curiosity(好奇心)、Communication、Challenge、Commitmentである。
三須氏は、宝物である仕事仲間や、ホッケーファミリーと共に、挑戦し続けている。
お気に入りの逸品
自分で購入したものですが、ペリカンの万年筆にブルーブラックのインクは必須です。
署名は必ずこれでしています。
文:岩崎由美 撮影:保坂真弓