Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのステッキ入門

ステッキと杖の違いとその魅力

いつからだろう。
日本人男性が中折れ帽とステッキを持たなくなったのは。

ファッションが好きな方なら、中折れ帽とステッキを持った日本人男性がたむろっている銀座の写真などを見たことがあると思います。

その頃、中折れ帽とステッキは男性ファッションの必須アイテムであり、英国紳士を意識したジェントルマンスタイルを、こぞって着込んでいたその時代のファッションアイテムでした。
しかし思い返してみると、そのジェントルマンスタイルも、戦後、途端に見なくなったではないでしょうか。

そして今、ステッキというと、介護用品の位置付けにされているのが現状かもしれません。
現在ステッキに比べれば、帽子に関しては復活の兆しが見えてきてはいますが、まだまだ現代社会にはそぐわない、取り入れにくいアイテムとされている気がします。

杖とステッキ。
言葉が違うのと同じで、違ったジャンルのアイテムと思われがちですが、果たしてそうでなのでしょうか。

 

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ヨーロッパでステッキというと、貴族をはじめとした富裕層の方々の「権力・権威」など、自己顕示のアイテムの一つ。
実際に持ち歩いてみると分かりますが、普通に考えるのであれば、それはなければないで差し支えのないアイテムかもしれません。
ステッキを持つことで、ステッキを持つことでどちらかの手が塞がれてしまうのですから。

しかし、当時の方々はそこにこだわりを持ったわけです。
なくても差し支えのない手を塞いでしまう、そのステッキを持つ事で、ご自身の生活水準や権力を示したのです。
「片手を塞いでいても、何不自由なく過ごすことができる」そう言いたかったのかもしれません。
まして階級制度が根強く残る英国では上流階級の者は、きちんとした身なりでステッキを持つべきだ、という意識が強かったようです。
また、ステッキには護身の意味もあり、中に剣になっていたものを持っていた方もいたそう。
銃の代わりに持ち歩いたという説もあります。

対して杖のイメージはどう映っているのでしょう。
日本語表記ということもあり、どちらかと言えば、体を支える、そのイメージが先行してしまうと思います。
そして、ステッキは持ち手の部分が装飾されているのに対し、杖のイメージは、木をそのまま曲げて作られている、そんなイメージがありませんか?
日本の古書などの風刺画などには、沢山杖を持ったものがあるのも事実です。
学術書とも言うべきかもしれない、矢野憲一氏著「杖(つえ)」を読むと、古代からの支配者たちに関連した杖にまつわる話を見聞することもできますが、場所や時代が違うにしても、同じ意味を日本語でも持つのです。

これまでの事でお分かりかと思いますが、ステッキと杖、それは同じ様な意味を持ちますが、実際に、用途は同じだったとしても、形状の違いで分けて考えてみるのも良いのではないでしょうか。
「ステッキ」は装飾を施すことができ、一方の「杖」は部材そのものを曲げたり、加工するという技術で形状をなしているものと。

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ファッションとして持ち歩いたということを考えるのであれば、やはり装飾を施した「ステッキ」を、洋服的な考え方で部材(素材)に拘るのであれば「杖」を。
それぞれがファッションアイテムになるのだと思います。

男性ファッションを紐解いて突き詰めていくと、英国ファッションに結びつくのはみなさんご承知だと思いますが、ジェントルマンとしてそれを持つことで、男性の余裕を表現出来るのではないでしょうか。
ステッキを持つことが表の心の余裕であり、さらに護身用になる。
それは男性の心に秘めた内面。
そんな風に考えるとステッキを持つ事が楽しくなってくると思います。
興味を持つと、街ゆくステッキ常用者の持っているステッキに、つい目が行ってしまいます。

日本にも老舗が存在し、新しいステッキブランドも誕生しています。
今回ご紹介していくのは、東京は新木場に店を構えるオーダーステッキ店の「La Cappo」。

オーナーであり、プロデューサー的立場でいらっしゃる村山元伸氏。
銘木に関しての生き字引とも言える方です。
そのオーナーのゆっくりと分かりやすい銘木の話を聴きながら、木を選ぶ工程から、ステッキについてしっかりと教わる事が出来ます。
世界に1本しかないステッキを持ちたい方にとっては、至福の時かもしれません。

英国紳士がこよなく愛したステッキ。
興味を持ち始めると、新たな魅力に引き込まれる事となるかもしれません。


La Cappo
東京都江東区新木場2-9-6

 お洒落で楽しく快適、健康で闊歩し続ける心持ちを願い、創られたステッキブランド ” La Cappo “(ラカッポ)。
江戸時代から300年続く ” 木の文化の町 ” 深川木場で日本を始め世界各地から選び抜かれた貴重な銘木を素材に、木を知り尽くした職人の手で、丁寧に造り上げたステッキが木の魂宿る「木魂の杖」。
永きに亘って木に携わってきた経験を生かし、とりわけ挽き肌の色彩と杢目の美しさが際った素材だけを吟味して、一本一本こだわりを持って製作している。

http://lacappo.jp

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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