紳士が知るべきブランドストーリー
Vol.3 ベントレー・ボーイズが培った伝統を現代に蘇らせる 「コンチネンタルGT」
■“ヴィンテージ“の時代に思いを馳せる
ヨーロッパにおいて文化が花開いた1920年代は、自動車の世界でも、珠玉のモデルが世に送り出された時代だ。愛好家の間では”ヴィンテージ・カー”、つまり特定の年代に作られた良いクルマと呼ばれているほどだ。
第一次世界大戦に前後してエンジン設計の分野で頭角をあわらしたW.O.ベントレーが、1919年にロンドンの片隅で自動車メーカーを起こしたのは、そんな時代のことだった。
まだ町中を馬車が闊歩する中、当時、自動車という乗り物は非常に先進的に映ったに違いない。
しかも、それがベントレーのように圧倒的な高性能車でレースシーンを席巻したスポーツカーであれば、なおさらだ。
ベントレーを購入できる財力を持ち、自費でワークスチームを結成して、命がけでレースに挑む。
地元英国のブルックランズやTT、海を渡ったフランスのル・マンといった有名サーキットを疾走する彼らを”ベントレー・ボーイズ”と呼び、賞賛を送ったのも頷ける。
いずれも稀有な個性の持ち主でもあり、教養とチャレンジ精神を兼ね備えていた。
■伝統と近代の融合した走り
ベントレー・ボーイズたちが築いたチャレンジ精神やスポーツマンシップは、現代のベントレーにも受け継がれている。
2001年には71年ぶりにル・マン24時間耐久レースに復活し、数年後に見事に勝利を手中にした。
もちろん、サーキットの上だけではなく、「コンチネンタルGT」のステアリング・ホイールを握った瞬間にも伝わってくる。
流麗な2ドア・クーペ・スタイルは、ただ美しいだけではなく、地をはうような踏ん張り感も兼ね備えており、このクルマに秘められたポテンシャルの高さを象徴している。
メッシュのグリルが押し出し感を強調し、ボンネットからサイドパネルを経由してリアエンドへと連なる豊かな面がサイドビューに表情を与えている。
運転席に滑り込むと、滑らかな手触りの革が身体を包み込むようにサポートしてくれる。
低く、スポーツカーらしい姿勢ではあるが、視界が良好で運転しやすいのはベントレー一族に共通する美点だ。Dレンジを選んで、アクセルを踏み込むと、フロントに積まれる4LV8ツインターボ・ユニットが最高出力507ps/6000rpm、最大トルク660Nm/1700rpmを発揮し、4輪に強大なトルクを伝える。
こっくりとした味わい深いステアリング・フィールは、手の内でクルマを操れるようなシュアさを感じる。4820☓1945☓1410mmの堂々たるボディ・サイズを持つが、運転席からの見晴らしの良さと応答性の高い操舵性のおかげで、想像以上にあつかいやすい。
可変ダンパーを備える足回りはスタンダードな設定では乗り心地がよく、かつ路面をしっかりと捉えてくれる。
もちろん、よりスポーティなセッティングを選べば、ドライバーズ・カーとしての本領を発揮して、停止から100km/hまでを4.8秒で加速し、最高速は303km/hに達するという俊足ぶりを披露する。
トランスミッションがクロスレシオの8速ATとなったことにより、6%もの低燃費化に成功しつつ、走りの魅力も高めている。
Sモードを選んでマニュアルで積極的に操るのも楽しいが、一方で町中では変速をトランスミッションに任せて、ラグジュアリー・クーペらしいゆったりとした走りを楽しむのもいい。
欲しい時に、欲しいだけの加速を得られるレスポンスの高さを備えつつ、いったん望みの速度域に達してしまえば、半分のシリンダーを休ませて低燃費運転に徹する。
その切り替えに要する時間は100分の数秒とわずかであり、電磁コイルによって逆位相の振動を発生させるアクティブ・エンジン・マウントのおかげもあって、切り替わり時の振動などは一切感じない。
■さらなる高みを望む人に
日常的な速度域では、高級車ブランドにふさわしい内外装の質感と快適性を備えながらも、いざとなれば、最高のドライバーズ・カーとしての走行性能をいつでも発揮できる。
しかも、2トン超の重量級のボディを大トルクのパワートレインで押し出すような高級感のある走行フィールを損なわずに、CO2排出量246g/kmというなかなかの燃費性能も獲得している。
これ以上望む人がいるのか?とも思うが、出力を528ps/680Nmまでスープアップし、0−100km/h加速を4.5秒まで短縮した「コンチネンタル GT V8 S」が用意されるのだから、やはり欲張りな人というのはいるものなのだろう。
高級車の名にふさわしい快適性を備えながらも、なによりも最高のドライバーズ・カーであることを旨とする。
そうした旧来の”ベントレーらしさ”に加えて、現代的な軽快さと俊敏さを得た「コンチネンタルGT」シリーズは、日常のビジネス・シーンに艶やかさをもたらしてくれそうだ。