Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

ギター紳士の独り言

Vol.7 オーストラリア紀行 才の芽吹き・・・親愛なるマイク・ノックに捧ぐ

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オーストラリアにマイク・ノックさんという崇高なピアニストがいる。
彼のアルバムに『An Accumulation of Subtleties』というのがある。
実に見事な音空間を紡ぎ出している。
日本語タイトルが、「微妙の堆積」。
私が解釈するに、微妙な音の合致、微妙な音の差異、それらが重なって独特の音の場が作り上げられる。
つまり、その音の堆積にこそ大きな意義がある。
決して今出ている音は、今出ている音がすべてではなく、それまでの積み重ね--堆積ミュージッシャン同士の息遣いの融合が、そのサウンドの礎を築いている。
優秀なミュージッシャンの輩出には、何層にも積み重なった堆積がある。
この国の音楽界は、たくさんの新しい才能、無数の未知なる才能の堆積によって形作られている。
オーストラリアのミュージッシャンの構成を形作っている構造そのものが「微妙な堆積」なのである。
微妙な堆積の兆し 音楽家の才能の兆し その出発点を偶然にも、ハイスクールで発見した。
今回私が、オーストラリアに呼ばれた理由は三つ
① ハイスクールの視聴覚教材・芸術鑑賞のメイン・アクターとしての講演 
② オーストラリアのプロのミュージッシャンとの共演コンサート
③企業イベントでの講演
①の任務を遂行するに当たりその発見に、直面した。 
この日本で言う「視聴覚教材のメイン・アクター」というのはどんなことか、少しかいつまんで指し示そう。
テーマは日本の音楽家が「日本の文化および日本の音楽を伝える」という極めて単純なものである。
しかしこれが意外と大変。
対象者は主にイヤー11とイヤー12、つまり、11年生と12年生。
公立でも小中高一貫なので、小学校からまとめて数える。
日本で言う高校二年生、三年生である。
そのときの様子を実況中継でどうぞーーー(私が訪れた学校はシドニィーの郊外にあるキラウィー高校)kirrawee high school :21 hunter street kirrawee nsw 2232
さて、いくら芸術鑑賞とは言っても、彼らを対象にいきなり日本文化を語っては、踵を返す。
まずはどんな音楽が好きーーーてな感じで質問する。
すると大概 ロック ロックンロール ってことになる。
こちらが素直に反応して、「もともとロックの原型は?」なんて問いかけるとスイスイと「ブルース」「R&B」なんて答えが返ってくる。
日本の高校ではそんなわけにはいかないだろう...
ブルース って答えが引き出せたらしめたもの、何しろ向こうは、日本から日本文化をわざわざ伝えにきたおじさんって思っているから、西洋音楽なんて知っているとは思っていない。ここにインパクトがある。
ブルースって言うと 例えば、って ペンタの音階をひとくさりスキャットする会場がざわめく...「この日本のおっさんはなにもの?」っていうところか...そのざわめきに乗っかって ブルースハープを取り出し また、ひとくさり  こうなると女性徒が 黄色い歓声を上げる...「この日本のおっさんかっこいいーーーー」これでつかみはOK。
日本の高校でこのかっこよさが伝わらないところが、日本の音楽文化の希薄さの象徴かもしれない。オーストラリアの高校生はとにかく感度がいい そしてセンスがいい。
さーこうなったらこっちのもん「ブルースはどこで生まれた?」アメリカ「それもどこ?」ミシシッピー シカゴ メンフィス...出る出るブルースが R&B そしてロックンロール。
少し早いパッセージをやってやるとグルーブのある手拍子が返ってくる。
もう視聴覚教材といううよりはさながらライブ開場 そして西洋楽器のシンボルでもあるギターを出す。
そして 少し演奏すると羨望のまなざしに変わる。
だって私はギタリストですし...えへん そしてギターの歴史に触れるリュートウードからどのように発展したか。
このへんから アカデミックな展開になる。
もっとさかのぼってもともと弦楽器の原点は植物のつるを引っ張って鳴らした。
そこからの発展は 弦が何本。弦をはじくのは、手か撥(ばち)か弓か。
音を大きくするには箱がいる。
その箱がどんな形か そして調弦を正確にするのに糸巻きができる。
これらの組み合わせで色々な弦楽器が発達した。
さてギターの話に戻ろう。
ウードが西 ヨーロッパに行って 今のギターの原型ができた。
日本で言うクラシックギター。
東へ行くと トルコを通って、シルクロウド を抜けて 琵琶になる。
そして、琴(写真のような特注の小さな琴)和の音階で16ビートのグルーブを出すと 彼らは敏感に反応してくれる。
 和と洋の融合を超えた共演が繰り広げられる。
こういう彼らの中にとてつもない才能を持った人たちがいる。
なんと、この芸術鑑賞のあと 学校側の好意で、音楽の授業も担当することになる。
そこで、目の当たりに新しい才能の芽吹き(bloom)に出会う。
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高谷秀司(タカタニ ヒデシ)
日本を代表するブルース ギタリスト
渡米後、ラリー・カールトン、デューク・ジョーダンらと共演。
人間国宝 山本邦山とのユニット「大吟醸」やデビッド・マシューズとのアルバム「G2 NewYork Recordings」など幅広く活動。
2015年、邦山の意志を継承し、日本古来の美を表現したユニット「How Zan」を結成。

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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