Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

新国立劇場オペラ「ファルスタッフ」 お見逃しなく

心をつかまれました。まずは、最初の一振りで奏でられた音。そしてファスルタッフ役の二コラ・アライモの第一声で、あっというまに17世紀のオランダに連れて行かれました。今日は、新国立劇場でヴェルディの喜劇「ファルスタッフ」です。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

二コラ・アライモが、とにかく素晴らしい。今までは、ファルスタッフという人物は、なんて傲慢で粗野な女好きなんだろうと思っていましたが、今回は、陽気で、ちょっと哀愁漂う男に変貌していました。アライモは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座などで60回以上この役を演じています。そしてミラノ・スカラ座のファルスタッフで2016年に、イタリアでもっとも重要なオペラの賞であるアッビーアティ賞を受賞しています。新国立劇場初登場。ささやくように歌っても、聴いている観客に直接語り掛けるかのようです。楽しそうに演じる彼が、劇場全体を導きました。

物語は・・

老騎士ファスルタッフは、お金持ちの奥さんのフォード夫人アリーチェとページ夫人メグが自分に気があると思いこみ、ラブレターを書く。最初は、騎士に言い寄られたのかと思い、悪い気はしなかった2人だが、ラブレターがまったく同じ文面であることに腹を立て、懲らしめることに。一方、夫のフォードは、自分の妻にラブレターを書くなんて許せないと、こちらはこちらで、やりこめようとする。

2人の友達のクイックリー夫人が伝達役となり、ファルスタッフをおびき出すことに成功。ファルスタッフがアリーチェを口説いていると、メグも登場。フォードもやってきて洗濯籠に隠れるファルスタッフ。川に投げ込まれてしまう。

フォードの娘ナンネッタは、父親が認めていない男と恋仲に。許さないとフォードは怒り、結婚を認めようとしない。再びファルスタッフは、性懲りもなく真夜中のウインザー公園におびき出される。精霊がさまよう場所が怖くておびえ、これまでのことを謝る。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

2003/2004シーズンに新制作されたジョナサン・ミラー演出の5回目の上演です。ジョナサン・ミラーは生物学を学び、医師の資格を取ったにもかかわらず、アマチュア劇団で芝居をしていたら次々にオファーが舞い込み、ついに演劇やオペラの演出家になってしまったという異色の経歴です。舞台は、当時のオランダの画家からインスピレーションを受けてつくったと語っています。舞台装置や衣裳の色合いやデザインがまるで、フェルメールの絵から抜け出てきたかのようでした。

ナンネッタ役の三宅理恵の声は天使のようで「夏の風にのって」や、フェントンとの「唇から歌が」は天にも昇るようだし、ページ夫人のメグ役は脇園彩という贅沢さ。アリーチェ役のロベルタ・マンテーニャ、クックリー夫人役のマリアンナ・ピッツオラートは2人ともパレルモ出身の歌手で初来日です。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

オーケストラは、ビビッドで、キリっと引き締まり、要所要所で盛り上がり、すみずみまで目配りされコッラード・ロヴァ―リスマエストロの腕がさえわたります。楽しくてスピード感があり、アライモものりのりで、会場中がワクワクした気分に包まれました。

子供文化芸術活動支援事業で、18歳以下の子供たち692人が無料で観劇できるため、たくさんの子供たちが来ていました。私の周りには小学生をはじめ、騒ぐ子、飽きる子一人おらず、最後まで熱心に見ていました。子供のための解説もつくられてましたよ!

 

上演は、本日2月15日(水)14時からと、18日(土)14時からの2回を残すのみとなりました。

新国立劇場「ファスルタッフ」HPはこちらhttps://www.nntt.jac.go.jp/opera/

*2023年2月15日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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