Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

日本初演のピアソラ「シンフォニア・ブエノスアイレス」が聴けました

また日本にやってきてくれました。マエストロ、アンドレア・バッティストーニ。2週間の隔離期間を経て、緊急事態宣言の合間の日程で、なんとか開催することができました。東京フィルの2021シーズン定期演奏会「見果てぬ夢を」です。

演目は日本初演のピアソラ「シンフォニア・ブエノスアイレス」と、プロコフィエフバレエ音楽『ロメオとジュリエット』。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

今年生誕100周年のピアソラですが、彼のオリジナル交響曲を生で聴けるとは思ってもみませんでした。楽曲の中から聴こえてくるバンドネオンの音に、いったい奏者はどこに隠れているのかしらと、思わず舞台の中を探してみると、日本を代表するバンドネオン奏者、小松亮太と北村聡が、オケの中のほうに座っていました。私のイメージだと、バンドネオンはオーケストラの前に持ってきそうですが、交響楽団の中に入れたところが、クラシックの中からバンドネオンの音がたちあがってきて、なんとも素敵です。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

バンドネオンの響きは、哀愁と情感に満ちエキゾチックです。交響曲でありながらタンゴのイメージもあり、刺激的です。

ピアソラは、アルゼンチンに生まれバンドネオン奏者として活躍するうち、タンゴに目覚めます。ところが10年程するとタンゴの表現に限界を感じてクラシックの作曲家を目指すようになります。そして作ったのがこの曲。クラシックの中にバンドネオンが入り、演奏当初は物議をかもしたそうです。その後、「タンゴこそあなたの音楽」と世界最高の指導者ナディア・ブーランジュに言われ、ピアソラ流のタンゴのエッセンスが取り込まれた新しい音楽が生まれることになりました。

小松亮太と北村聡お2人の、アンコール曲、カルロス・ガルデル(編曲:アストル・ピアソラ)『想いの届く日』にも心を奪われました。

そして『ロメオとジュリエット』は、マエストロの出身地ヴェローナが舞台です。お気に入りの曲を選んで、物語をつづってくれました。

20世紀クラシックバレエの最高傑作『ロメオとジュリエット』の物語を知らない人はいないでしょう。今回演奏されたのは「モンタギュー家とキュピュレット家」「少女ジュリエット」「民衆の踊り」「仮面」「ロメオとジュリエット」「ティボルトの死」「別れの前のロメオとジュリエット」「修道士ローレンス」「ジュリエットの墓の前のロメオ」と、流麗でロマンティックなメロディーと共にすべての場面が脳裏に浮かびます。

世界をめぐり、生の音楽を届け続け、生きる希望を与えてくれるマエストロには、感謝の気持ちしかありません。

 

*2021年5月28日現在の情報です。

 

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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