Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

METライブビューイングは、新演出、ヴェルディのオペラ「リゴレット」

こんなに鬼気迫るリゴレットを見たことがあっただろうか。臨場感があり、ドラマを見ているような緊迫感だ。

「リゴレット」はヴェルディ中期の傑作である。公爵に仕える道化師リゴレットは、好色な公爵に娘をもてあそばれたモンテローネ伯爵をからかい、呪われることになる。自分の娘ジルダも、実は教会に来ていた公爵に恋をしていた。公爵と関係を持ったことに腹を立てたリゴレットは、公爵に復讐することにしたのだが・・・。

(c)Paola Kudacki/Metropolitan Opera

リゴレット役は、世界的なヴェルディ・バリトンとして知られるホノルル生まれのクイン・ケルシー。蔑まれ、疎まれ、嫌われる彼は、自分の愛を一心に娘に注ぎ、過保護にそして束縛する。クイン・ケルシーは、存在感のある怪演と歌で魅了する。

娘ジルダをローザ・フェオラ。清純でうぶな役を清々しく、そして表情豊かに歌い上げる。細やかで丁寧な表現から、ジルダの恋する乙女の気持ちが切々と伝わる。

女好きのマントヴァ公爵はピョートル・ベチャワ。人気のある名テノールで、2006年にこの役でMETにデビューした。

(c) Ken Howard/Metropolitan Opera

指揮者ダニエレ・ルスティオーニの紡ぎ出す音楽が、造詣が深い。幕間のインタビューで「言葉の力と音楽を一つに合わせたい」と述べているが、まさに彼の描いているものが舞台になっていた。

新演出を任されたのはブロードウエイを代表する人気演出家バートレット・シャーである。その彼は、1920年代のワイマール・ドイツを舞台にすることに決めた。ファシズムが始まろうとする寸前だ。

舞台美術のマイケル・ヤーガンは、1920~30年代を代表する装飾であるアールデコで回り舞台を飾った。直線的で、幾何学模様で、照明はルネ・ラリックデザインである。

誰もが知る「女心の歌」を、能天気に高らかに歌いあげる公爵と、父娘の悲劇が対照的にあぶりだされる。

(c) Ken Howard/Metropolitan Opera

今期は、世界の逸材の起用に力を入れると語っていたMET総裁の想いが、結実している。このあとも楽しみだ。

METライブビューイング「リゴレット」3月18日~3月24日 上映予定スケジュールはコチラ。

*2022年3月19日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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