Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

国立劇場 人形浄瑠璃文楽 2022年12月公演『本朝廿四考』 二段目 四段目 

この演目『本朝廿四考』は、文楽はもとより、歌舞伎、日本舞踊でも演じられている全五段の時代ものです。物語は、武田信玄と上杉謙信の戦いをベースに脚色され、斎藤道三が混ざり、そこに諏訪湖を渡る霊狐伝説と中国の二十四孝の故事も入ってきます。中国の二十四孝の故事というのは親孝行の話で第三段にありますが、今回の上演はありません。

提供:国立劇場 撮影:光齋昇馬

話は複雑で、まずは武田家の宝である諏訪法性(すわほっしょう)のを借りた上杉家が返却に応じず、関係が悪化しているという前提があります。

そこに、足利将軍・義晴を暗殺した犯人が見つからないときは、疑いをかけられた武田家・上杉家それぞれの子供の首を打つとか、子供のころに自分の子供と取り替えていたとか、取り替えられていたのを知っていたのに十数年もそのままにしていた父親とか、自分が好きだった人が死んでしまったのに、すぐに似てる人のことが好きになり燃え上がるような恋心を抱く姫とか、冷静に考えるとわけのわからないことばかり。

ただ、ここでは有名な「十種香」「奥庭」の場面が見られます。

とくに、通称「奥庭」と呼ばれる「奥庭狐火の段」では、謙信の娘、八重垣姫が、恋する勝頼に追手がくることを知らせるため諏訪湖を渡ろうとします。勝頼を何とか救いたいと奥庭から兜を盗み出すと、その兜を守護する霊狐が姫にとりついて奇跡を起こします。舞台上では、霊魂が燃え、何匹も狐が現れ、なんとも妖しい気配。ついには狐に乗り移られ、兜の霊力で無事に凍った諏訪湖を渡ります。

提供:国立劇場 撮影:光齋昇馬

諏訪法性の兜というのは、戦いのときに武田信玄がかぶり、頭を守っていたと伝承されているもので、諏訪湖博物館にはレプリカが展示してあるので諏訪に行ったときにはぜひ見たいものです。

また、諏訪湖にまつわる「御神渡り」もひも解けます。御神渡りとは、ご存じ、冬に諏訪湖の湖面が凍結するときに轟音が鳴り、避けた氷が盛り上がってつながる現象をいいます。これは諏訪大社の上社の男神が下社の女神のもとへ通った道筋といわれています。

さて、この八重垣姫は、三姫と呼ばれる有名な姫の一人で、激しい恋に燃え、気品があり、難しい役として歌舞伎では女形の大役とされ、玉三郎も演じています。

今回は、中堅と若手の座組で行われました。時代を担う人たちが、大きな役に挑戦すべく舞台に上がっていました。次の公演は2月で近松名作集となります。お楽しみに。

 

2022年12月6日(火)~19日(月)

HP: 国立劇場 | 独立行政法人 日本芸術文化振興会 (jac.go.jp)

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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