Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

ダンサー田中泯のドキュメンタリー映画「名付けようのない踊り」

田中泯は、このところ俳優として活躍し圧倒的な存在感を放っているが、日本を代表するダンサーである。

©2021「名付けようのない踊り」製作委員会

彼のダンスは唯一無二で、言葉のように動き、伝え、表現する。映画「名付けようのない踊り」は、犬童一心監督の目が彼を追い、感じ、媒体となって私たちに伝える。監督が見て感じて切り取ったダンスが、編集され、差し出される。そこには5か国48か所、90の踊りの断片がある。ポルトガルの街角、池袋の広場、神社の能舞台、パリ、礼拝堂、夢の島、浪江町・・・。

リズムにあわせない踊りが唐突に始まり、人々が取り囲み、そして目が離せなくなる。逃げるでもない、避けるでもない、いつしか凝視し、見る人たちの時間と空間を止める。そこにあるのは、生と死と無。肉体のトランス状態だ。

子供時代を表現するアニメーションは、世界4大アニメーション映画祭すべてでグランプリを受賞した唯一の監督、山村浩二が担当する。そのアニメーションもまた、田中泯に負けないエネルギーを放つ

©2021「名付けようのない踊り」製作委員会

田中泯にとっての踊りは、「たまたま訪れた場所に、もともとあった踊りを自分が引き出しているに過ぎない」ものであり、それを「場踊り」と呼ぶ。ピンときた場所で、即興で踊り始める。それは自分のものではなく、見る人との間で生まれるのが理想だと。

裸体のダンサーとして最初にパリで踊ったのは1987年のことだった。それまで日本では見向きもされず、警察につかまったりしていたのに、パリで評価されると突然日本での受け止め方が変わった。

田中泯は「日本で踊りが発祥したのはいつか。言葉以前のコミュニケーションとしての踊りであり、感覚が言葉を凌駕する」と語る。

©2021「名付けようのない踊り」製作委員会

「その場で受け取ったものを踊りにするので、それをそのまま流しても同じものにはならず嫌悪すら感じる」と言う田中泯だが、この映画は「僕が踊った踊りではなく、監督が作り上げた踊りであることがカッコいい。踊りは再生技術を持たない。一過性の花火。踊りを見た人の中で生まれ変わる。映画作品として実現した」と面白がる。

モダンバレエを学んでいた田中泯が土方巽に出会い、リズムに乗らなくても、音楽に合わせなくても踊りであると確信した。パリをきっかけに世界をめぐる。田中泯は肉体一つで世界を全否定する。

生で見ることは、なかなかかなわないが、全身から放たれる気配を共有するダンスを感じることができる強烈な作品だ。

映画「名付けようのない踊り」2022年1月28日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、文化村ル・シネマ他全国ロードショー HP:https://happinet-phantom.com/unnameable-dance/

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

https://cross-over.sakura.ne.jp/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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