Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

芸術監督タマラ・ロホは、バレエ界のイノベーター?!

このところ、素晴らしいバレエをたくさん観る機会に恵まれています。

ボリショイ・バレエの「パリの炎」(記事はコチラ)、新国立劇場の「ジゼル」(この記事は後日掲載予定)、そして今、来日中のイングリッシュ・ナショナル・バレエの「コッペリア」「海賊」。どの舞台も素晴らしく、美しく楽しいものばかりです。

 イギリスでは世界最高峰の英国ロイヤルバレエ団が有名ですが、そこのプリンシパルだったタマラ・ロホが芸術監督に起用されて5年。イングリッシュ・ナショナル・バレエは日本人にとってはあまりなじみがありませんが、いま世界で最も勢いのあるカンパニーとして2017年度ローレンス・オリヴィエ賞を受賞しています。


 

「海賊」は英国バレエ団として初めて全幕上演をし、2016年夏にパリ・オペラ座を沸かせて注目されるきっかけとなった作品です。芸術監督としてのタマラ・ロホ、面目躍如といったところでしょう。

アリ役のセザール・コラレスは、この作品で英国ナショナル・ダンス・アワード賞を受賞し、さらには、先日の日本公演(2017年7月14日)でプリンシパルに任命されました。

 

撮影:Kiyonori Hasegawa

必見は衣装です。

映画「バットマン」などの衣装デザイナー、ボブ・リングウッドの舞台美術と衣裳はエキゾティックでオリジナリティにあふれ、その世界観にはうっとり。オペラグラスで、しっかりとその布の素材感や飾りを見ましたが、刺繍がしてあり、スパンコールが縫い付けてある本物。舞台の深みが増します。

リングウッドは「19世紀中頃の衣裳を現代人の感覚で再解釈した。ほとんどの衣装は、インドやパキスタン、ウズベキスタンなど実際に東洋でつくられた生地と装飾品」と述べています。少しずつ配色が違い、一人ひとりにちゃんと似合っているところもステキ。

撮影:Kiyonori Hasegawa

 

物語は

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海賊船の首領コンラッド(ブルックリン・マック)は、恋人メドーラ(ローレッタ・サマースケールズ)を助けるためにオスマン帝国にやってきた。奴隷商人ランケデム(猿橋賢)にとらわれているメドーラ。ランケデムは、この街の統治者パシャ(マイケル・コールマン)に娘たちを売りつけようとするが、気に入られたのはギュルナーラ(金原里奈)と、卒倒してしまうほど美しいメドーラ。

コンラッドの奴隷アリ(オシエル・グネオ)はすきを見てメドーラを連れ出すことに成功し、隠れ家で海賊たちの宴が繰り広げられる。大いに騒いだ後、眠り薬をかがされてコンラッドが寝込んでしまうと、再びメドーラはパシャにとらわれてしまう。メドーラはどうなるのか、2人の行く末は。

(2017年7月15日の配役)

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メドーラ役の英国人プリンシパルのローレッタ・サマースケールズが舞台に登場すると、まるで蝶が舞い降りたよう。劇中でも「卒倒するほどの美貌」の役ですが、本物も美しい。

ローレッタ・サマースケールズは記者会見の時は、フランクで楚々とした現代的な女性でしたが、舞台では、たおやかで優雅で、しかも力強く安定感のあるダンスを見せてくれました。

 

また、アリ役のオシェル・グネオが踊りだすと、会場中がどよめき、歓声がわきおこります。現在、ミュンヘン・バレエ団プリンシパルで、タマラ・ロホがよくゲスト・アーティストとして招くダンサーです。その人気度が伺えます。

休憩中には「楽しいわね」「わかりやすいわ」と、昔、バレエを習っていたことがある女性グループがおしゃべりし、子供たちは足を高く上げて踊りだし、若い男性は身体を弓なりにして自分がどこまで曲がるか試しているみたい(笑)。

さらに、若手日本人ソリストの猿橋賢と金原里奈も、圧倒的な技術力で群を抜いて輝いていました。パシャがユーモラスに描かれていたのも、楽しかった。

 

個性的で若々しく、果敢に挑戦するバレエ団として変革を遂げたのは、ひとえにタマラ・ロホの力です。

記者会見では、言葉を選びながら「若手にチャンスをあげたい」と語ります。そしてダンサーたちも一様に「理解しあって創り上げています」と互いに信頼関係があり、世界中から優秀な人材が集まってくるのがうなずけます。

今回、主役を踊る予定だったアリーナ・コジョカルは妊娠中とか。観ることができなくて残念な反面、ママになるコジョカルの幸せを心からお祝いしたい!

 

今回の来日公演、本日、7月16日(日)14時~と17日(月・祝)14時~の2回、残されています。

当日券、まだ若干ありますので、予定がない方はぜひ、タマラ・ロホのすごさを実感してみませんか。プリンシパルとしての技術力と芸術力を兼ね備え、さらに芸術監督としてのリーダーシップと勇気があって、しかも美人ときていますから天は二物も三物もを与えるのですよ!

 

 

 

「コッペリア」すでに終了(2017年7月8日(土)13時、18時、7月9日(日)14時)

 「海賊」

14日(金)18時半

15日(土)14時

16日(日)14時

17日(月・祝)14時

 

場所:東京文化会館

東京都台東区上野公園5-45

問合せ:03-3791-8888

*2017年7月16日現在情報です。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

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