Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

事実は小説よりも奇なり 映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

真実とは、まさしくミステリーそのものです。これほど怖い話があるでしょうか。13万円で購入した絵が、サザビーズで史上最高額の510億円で売れるまで、要所要所でかかわった人物たちが登場します。その取材力たるや、あっぱれとしかいいようがありません。

レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の絵画と言われ、1763年以降行方不明だった「サルバトール・ムンディ」通称「男性版モナ・リザ」。

ニューヨークの美術商が名もなき競売会社のカタログから見つけた「サルバトール・ムンディ」を落札し、洗浄・修復して「これは本物に違いない」と確信し、ロンドンのナショナル・ギャラリーに相談します。そしてこの絵を2011年のナショナル・ギャラリーの「ダ・ヴィンチ展」で展示したことから、お墨付きが得られたことになりました。

次に表舞台に登場したのは、2013年のサザビーズのオークション。ロシアの新興財閥ドミトリー・リボロフレフの右腕だったスイス人美術商イブによって約100億円で落札されます。イブは、貴重品を極秘で無税で納めておける倉庫を所有しているのです。そしてイブはドミトリーに約157億円で売却。50億円以上中抜きし、さらに通常の手数料2%も手に入れているため、ドミトリーは、この美術商イブを詐欺で訴え係争中です。イブは、悪ブレもせずのうのうと生きています。

そして2017年、クリスティーズのオークションで約510億円で落札されました。所有者は不明とされていましたが、サウジアラビアの皇太子ムハンマド・ビン・サルマーンが所有していることが判明しました。2018年、ルーブル美術館で展覧会が開催されることになり、さてどうするか。もしこれが、真作でなければルーブルで展示されることによって資金洗浄されてしまうことになる・・・。

ダ・ヴィンチも、同時期のほかの画家と同様、ご多分に漏れず工房をもって制作をしていました。その数は5とも10ともいわれています。すなわち、本人が描いたものもあれば、同僚や弟子と共同で制作したものもあれば、レオナルドが構想し、あるいは下絵を描いて実際の制作は工房の人たちの手のよるものもあれば、工房にいる弟子たちだけで制作したものがあるということです。

ダ・ヴィンチ本人が一人で描いたものしか真作とは言わず、それ以外は工房のものと明記しなければなりません。当然市場価値が著しく違います。贋作ではないものの、真作ではないとなると、どうなのか。偽物かどうかは判定できても、本物であることを断定するのは難しいと言われるアートの真贋は、まさしく人々の喜怒哀楽や人生そのものを巻き込む力があります。

失われた傑作で、世界中を巻き込んで真偽が試されている「サルバトール・ムンディ」。アートの裏には、お金にまつわる欲望が渦巻き、さらに権威ある美術館が資金洗浄に使われてしまうという恐ろしい事実。人間の野心、欲望、国家間の威信、美術の世界の権威、そして金銭と様々な問題が絡まりあうのが美術の世界です。

この経緯に関わった、美術商、学芸員、学者、美術歴史家、専門家、ジャーナリスト、オークション会社、新興富豪、その右腕だった美術商イブ、弁護士たち本人が登場し、まさに、ミステリー小説そのもののドキュメンタリー映画です。

 

HP:https://gaga.ne.jp/last-davinci/2021年11月26日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

*2021年11月28日現在の情報です*記事写真の無断転載を禁じます。

 

 

 

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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