Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

国立劇場2月文楽公演『女殺油地獄』(2月4日~21日まで)

近松名作集の第三部(18時30分~20時57分予定)は「女殺油地獄」。

素晴らしかった。人形であるにもかかわらず、その演技力に感嘆しました。人間を超えていました。

実際に起きた強盗殺人事件をもとに作られたこの作品。残虐極まりないその手口からか、初演後、しばらく上演が途絶え、明治40年代になって歌舞伎で演じられるようになり、その後、文楽でも復活しました。

物語は・・

油屋の河内屋与兵衛はどうしようもない放蕩息子。ずっと遊び暮らしています。与兵衛の父は亡くなり、母は再婚して店の番頭と一緒になって店を盛り立てています。継父はかつての旦那様の息子だという遠慮があって、愛があるのに厳しいことが言えず、与兵衛はやりたい放題。ある日お金欲しさに与兵衛は継父に暴力をふるい、さらに母親にまで手を上げ、どうにも手が付けられず根性を治そうと勘当されました。

提供:国立劇場 撮影:二階堂健

家にもいられず、親戚のところにも行けず、「借金の返済期日が今日まで」と、つい姉のように、母のように慕っている油屋の女房お吉を頼ります。しかし、お吉は心を入れなおすように、さらに夫に無断で貸すことはできないと断ります。すると与兵衛はお吉を手にかけ、有り金すべてを持ち逃げします。・・・・

提供:国立劇場 撮影:二階堂健

与兵衛には、いくら言っても思いが通じません。どうしてこんな人間になってしまったのか。本当にあった話と聞けば、背筋が凍り、哀しさのあまり胸がつぶれそうです。

見どころは、与兵衛がお吉を惨殺する場面。油屋ですから油桶がたくさんあり、お吉は油桶を投げて抵抗します。油まみれになりながら滑って逃げ、捕まえようとする与兵衛。逃げるお吉。まだ幼子が3人もいて、死ぬわけにはいかない、可愛い盛りだから生きていたいと言うのですが、そのような声は与兵衛に届きません。お吉は息絶えます。

浄瑠璃の語り手と、三味線弾き、人形遣いの息が一つになり、最高潮を迎えました。なんてドラマティックな舞台なのでしょう。

与兵衛の人形を遣うのは人間国宝の桐竹勘十郎。肩の動きですべてを語ります。浄瑠璃に豊竹呂太夫、三味線に鶴澤清介。遣う人、語る人、弾く人によって、これだけ変わるのかと、芸の深さを知ることになりました。

次の公演は、5月。通し狂言「菅原伝授手習鑑」そして「夏祭浪花鑑」です。

*2023年2月16日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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