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紳士のたしなみ

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重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」根津美術館

夏秋渓流図屏風」は実に美しい。昨年、其一(きいつ)の作品としては初めての重要文化財に指定された。「夏秋渓流図屏風」は、右隻に山百合と造形的な熊笹が生い茂る夏。左隻に桜の葉が赤く染まる秋。檜の林の中に岩場を削るほどの勢いで水が流れる。鈴木其一の代表作である。

重要文化財 夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

この展覧会のテーマは、この作品誕生の秘密を探ることだ。影響を与えた傑作が数多く並び、どれも息をのむほどの作品ばかりで離れがたい。とくに必見は個人蔵のものである。こういう機会がなければ見ることができない作品をとくと目に焼き付けたい。

鈴木其一の師匠である酒井抱一、その先の光琳円山応挙や谷文晁、古い時代の狩野派など琳派以外の画風も取り入れた作品誕生の秘密が明かされる。

鈴木其一は、江戸琳派の祖として知られる酒井抱一の高弟であった。ここには抱一の「光琳百図」、「青楓首楓図屏風」、「夏秋草図屏風」(この作品は12月7日~)が展示される。

抱一が編集した「光琳百図」後編に「青楓首楓図屏風」(1818年)と同じ屏風図が掲載されている。それを見ると、抱一が光琳画を見て制作したということがわかる。金地に青、緑、赤という強烈な色遣いや、熊笹や苔も登場する。これが、抱一の持つ光琳画のイメージであり、其一はここから色彩感と細部描写の影響を受けたようだ。

また、円山応挙の晩年の大画面作品「保津川図屏風」(1795年)の流れくる水の動きが、「夏秋渓流図屏風」と共通していると言われている。さらに山本素軒の「花木渓流図屏風」(17世紀~18世紀)の構図。光琳が画技を学んだという説もある狩野派の画家の作品だ。会場には「フローチャート」が掲示され、これらの作品をそのつもりで見てみると影響が歴然として読み取れる。

写実的でありながらデザインの要素も含み、されど勢いのある作風こそが其一の真骨頂なのだ。

ほんのり色づいた庭の木々を背景にしたホールの仏像、さらに階段を上がった先の展示室の「炉開きー祝儀の茶会」も、見逃せない。

12月7日から展示される、酒井抱一の「夏秋草図屏風」(重要文化財 19世紀)を見にまた、足を運びたい。

 

重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」 根津美術館 2021年11月3日(水・祝)~12月19日(日)日時指定予約制

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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