Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

新国立劇場オペラ『サロメ』(2023年5月27日~6月4日)

オペラ『サロメ』は大好きな演目の一つです。全4回公演で、あと3回ありますのでリヒャルト・シュトラウスの世界をお楽しみください。休憩なしの約1時間40分。

これは、新約聖書の挿話をもとに1893年に書かれたオスカー・ワイルドの戯曲をオペラ化したもので、初演するや否や大反響となり、リヒャルト・シュトラウスの出世作となりました。

『サロメ』は強烈なインパクトのあるストーリーで、皿の上に生首を乗せたサロメを題材にした絵画も1つや2つではありません。ルネッスサンス期にフィレンツェで活躍したフィリッポ・リッピクラーナハのサロメは生首をもちながら微笑みを浮かべ、モローカラヴァッジョも描いています。それほどまでに、魅力的な物語だと言うことでしょう。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

物語は・・

継父ヘロデの好色なまなざしを嫌って宴の外に出たサロメは、井戸で捕まっている預言者ヨハナーンの声を聞く。自分に憧れている衛兵隊長に連れて来させると、その姿にサロメは一目で恋をする。しかしヨハナーンは聖職者だ。全く眼中にない。しつこいサロメにあきれつつ、ヨハナーンは自ら井戸に戻っていく。相手にされなかったサロメが不機嫌にしていると、ヘロデ王が「何でも好きなものをやるから踊れ」と命じる。サロメは、踊る代わりに、ヨハナーンの首を要求するのだった・・。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

今回のプロダクションは、ドイツの伝説的な演出家アウグスト・エファーディングによるもので、舞台の中央に大きな井戸がしつらえてあります。新国立劇場では7回目の上演です。

サロメは、アレックス・ペンダ。これが新国立劇場デビュー。ヘロデ王はイアン・ストーレイ。こちらも初登場です。ヘロディアス(サロメの母で、ヘロデの妻)にジェニファー・ラーモア。美しい彼女の衣裳がゴージャスで素晴らしかった。ヨハナーンにワーグナー歌いのトマス・トマソン。トマソンも新国立劇場デビューとなります。

ヨハナーンは、キリスト教世界の実在の人物で、神の教えを説く洗礼者ヨハネ。誰もが魅かれる美女サロメに愛されますが、眼中にありません。どんなに言いよられても、冷たく突き放します。ことごとく世の男性たちから関心をひくサロメは、どれほど腹だたしかったことでしょう。

このオペラでは、サロメの妖艶な踊りも見どころです。一枚一枚ベールをはぎ、最後には、ほぼ裸体になります。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

新国立劇場ではおなじみの、コンスタンティン・トリンクスマエストロは、2008年からたびたび来日しています。2020年公演で中止になってしまったメンバーが勢ぞろいし、観客もこの日を待ちわびたように、そして自粛明けを祝福するかのように大喝采でした。

*2023年5月27日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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