Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

バレエ付きの『ファウスト』を見逃すな!

英国ロイヤル・オペラが4年ぶりに、日本にやってきました。今回で6度目。アントニオ・パッパーノは2002年から17年間も音楽監督を務め、もうすぐ歴代最長となります。昨年、2023年までの任期延長が発表され、記者会見では「オペラを愛し、歌を愛し、言葉を愛し、劇場を愛することが何より大事。音楽監督は家長のようなものだから規範となる態度を示すことが重要だ」と語っていました。劇場に関わる全ての人の名前を知っているというパッパーノ。どれだけメンバーからの信頼が厚いのか、どれだけ素晴らしい音楽を紡ぎだしてくれるのか、期待は高まります。

今回は、2004年にデイヴィッド・マクヴィカーが演出した「ファウスト」とキース・ウォーナー演出の「オテロ」の2演目。どちらも魅かれますが、世界的スターテノール、ヴィットリオ・グリゴーロの生の声が聴きたかったので、「ファウスト」の初日に行ってきました。

photo:Kiyonori Hasegawa

グリゴーロの声は、期待にたがわず艶があり溌溂とした色気にあふれています。そして、メフィストフェレス役のイルデブランド・ダルカンジェロの存在感。場面によって見せる表情が違います。さらに、パッパーノの指揮は切れ味が良く、オーケストラを高みにまとめ上げます。

先日、衣裳が日本橋高島屋に展示されているという記事を書きましたが、ブリギッテ・ライフェンストゥールの衣装を着て登場するのも楽しみの一つ。メフィストフェレスが赤いビロードの衣裳を、マルグリートがカフェの女給の衣裳をつけて登場です。

photo:Kiyonori Hasegawa

「ファウスト」はめったにかからない演目。しかも、今回はバレエ付きでその全貌を見せ、チャールズ・エドワーズの舞台美術も豪華で、観客は大満足のようでした。

物語は・・・一生を研究に捧げた年老いたファウストは、自分の人生、楽しいことを何もしてこなかったと悔いています。そこに登場する悪魔、メフィストフェレス。ファウストは青春を取り戻すために若さを手に入れようと魂を売り渡します。若くなったファウストは、清純なマルグリートと出会い、迷いながら悪魔にそそのかされて、マルグリートと関係を持ちます。ファウストはマルグリートのもとを去りますが、ファウストの子を身ごもってしまいました。ファウストは、快楽に溺れたことを後悔しますが、メフィストフェレスは祝宴を用意しているのでした・・・。

ところどころに入るバレエの場面は華やかで、ダンサーたちも素晴らしい。特に終盤、悪魔たちの宴会でジゼルの衣裳を着た娘たちが、どんどん本性を現していくところなど、おどろおどろしくてゾットするほどです。ロイヤル・オペラ合唱団のピアニッシモの歌声も素晴らしく、さすが300人の引越し公演、すべてに英国ロイヤル・オペラの真髄を見た気がします。

photo:Kiyonori Hasegawa

本場のロンドン公演より、東京公演の方が数倍素晴らしいという声もあり、もうひとつの「オテロ」もできれば観たい!ですが、残念ながら、私の財力ではちょっと無理(笑)。

 

記者会見では、お茶目なイタリア男、グリゴーロはふざけてばかり。カーテンコールの時も、隣にいるメフィストフェレス役のダルカンジェロにからんでいるのをみるのが楽しかった。そういうダルカンジェロもクールなイケメンです。会見中、パッパーノを囲んで、歌手たち全員が笑顔で楽しそうで、こんなに和やかな会はあまりありません。グリゴーロは、「最高の指揮者と共にこの舞台に立てるのが嬉しい。自分たちの息遣いまで理解してくれている」と語っていました。

「ファウスト」は残り2回、「オテロ」も2回。英国ロイヤル・オペラの醍醐味をぜひ、味わってください。

 

「ファウスト」18日 東京文化会館、22日 神奈川県民ホール

「オテロ」21日、23日 東京文化会館

詳細はコチラ:https://www.nbs.or.jp/

*2019年9月18日現在の情報です。*記事と写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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