Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

いよいよ新国立劇場のオペラ「修道女アンジェリカ/子どもと魔法」ダブルビル(2本立て)の幕が開きました。

プッチーニのオペラ『修道女アンジェリカ』は、教会の鐘の音で幕を開けます。美しいメロディーとともに、女子修道院で暮らす修道女たちが登場。修道女たちは、目上の者に従い、一生独身を守り、私有財産を一切持たず、生涯を神に捧げています。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

私はカソリックの学校でしたので、先生方に神父様がたくさんいらして、多くの時間を共に過ごしました。何一つ贅沢をせず、下着に穴があけば繕い、生徒たちを慈しみ、愛を与え続けてくださいました。

この作品は、17世紀の女子修道院が舞台です。主人公アンジェリカ(キア―ラ・イゾットン)は、公爵家の娘。婚外子を生んだことから修道院に入れられます。7年間、誰も面会に来ず寂しい時を過ごしていましたが、ある日、叔母の公爵夫人(齊藤純子)がやってきます。相続権を放棄しろというのが目的でした。アンジェリカが叔母に自分の子供の様子を聞くと2年前に死んだというではありませんか。ここでアンジェリカが歌うのがアリア「母もなしに」です。「お前の母がどれだけお前を愛していたかを知ることもなく死んでしまった・・」といった歌詞に、涙しない人はいないでしょう。

アンジェリカは、自分も死んで天国で子供と一緒になろうと決めるのですが、キリスト教では自殺は大罪です。それに気づいたアンジェリカは、自分は天国には行けない、子供に会えないと嘆くのでした。この後のト書きには、聖母マリアが子供を伴ってやってくるとあり、許されて天国に行けるのかとイメージされますが、今回は、この部分はあいまいになっています。毒を飲んだアンジェリカは果たして許されたのでしょうか。子供ときっと会えたに違いないと祈るしかありません。

9月に開催された、指揮の沼尻竜典マエストロと演出の粟国淳さんのオペラトークの時に、アンジェリカのカヴァー役の中村真紀さん(本番では、元羊飼いジェノヴィエッファ役)が、「母もなしに」を歌ってくれました。その時から泣きそうだった切々たるアリアは、やはり名曲でした。

幕間には、今回特別に販売されている修道院のビール「シメイブルー」(1200円)を飲んでいる方もちらほらといらっしゃいます。ベルギーの修道院で醸造したもので、きれいな女性が、素敵に飲んでいらしたので「どんな味ですか」と伺うと「アンバー系の、ほろ苦く少し甘みがある」と教えてくれました。うーん。私も飲んでみればよかった(笑)。

続くラヴェルの「子どもと魔法」は、いたずらっ子の話。舞台美術や衣裳がカラフルです。子供役は、この役を何度も演じているクロエ・ブリオ。新国立劇場初登場です。宿題をやらずにお母さん(齊藤純子)から怒られた子供は、いろんなものを壊したり、傷つけたり八つ当たりします。勉強は嫌いだとやりたい放題の子供に、壊されたモノや、傷つけられた動物たちが怒ります。椅子、時計、火、本の中のお姫様、破られた絵画に描かれた人物、夜鳴きうぐいす、猫、蛙に、こうもりなど、彼がいじめた動物やモノが舞台いっぱいに出てきます。ユニークな衣装を着けてダンサーたちが踊ります。最後に、自分が怪我をさせてしまったリスを子供が手当てすると、「やさしい心があったんだ」と知り、子供を部屋に連れて帰ります。子供が「ママ」と呼びかけるところで幕は閉じます。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

 

こちらの演目もオペラトークで、事前に三宅理恵さんの夜鳴き鶯の声を聞き、河野鉄平さん、藤井麻美さんのじゃれあう猫たちの迫真の歌が披露されました。解説を聴きながら、近くで歌手の方たちの歌を聞けるオペラトークもHPにアップされていますので、のぞくと楽しいかも。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

ダブルビル(2本立て)を貫くのは、「母の愛」。両方とも新制作です。

今回は、2023年度芸術祭オープニングということもあって、始まる前に戸倉俊一文化庁長官が挨拶され、秋の芸術週間のスタートを切りました。

公演は、10月4日(水)19時、7日(土)14時、8日(月)14時 HPはコチラ

*2023年10月3日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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