Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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紳士のためのエンターテイメント

東京フィル午後のコンサート 「名曲には名シーン」尾高忠明マエストロと共に

東京フィルのキレのある演奏と、尾高忠明マエストロの教養あふれる楽しいおしゃべりで、生きている幸せを感じられる時間を過ごすことができた。どんな状況にあっても、生の音楽を聴くと幸福感に満たされる。

提供=東京フィルハーモニー交響楽団

2021年6月9日にBunkamura オーチャードホールで開催された東京フィル「渋谷の午後のコンサート」は「名曲には名シーン」。映画が好きなマエストロが選んだ楽曲や映画の解説と、会場からの事前質問に時間のある限り応えるマエストロのお人柄に触れることができるひと時だった。

映画には、多くのクラシックが使われている。そのクラシック音楽と、映画音楽のスタンダードナンバーによって名画の名シーンが蘇る

リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は、スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」の印象的な場面に登場する。実はこの演奏は、カラヤン指揮、ウィーンフィル・ハーモニー管弦楽団のものなのだが、最初は海のものとも山のものともわからない作品だったため名前を出さないことを条件に映画使用を許可したそうだ。

次はスピルバーグの映画「シンドラーのリスト」のテーマ曲で、作曲はジョン・ウィリアムズ。コンサートマスターのヴァイオリンソロが哀しみをにじませた。この映画の主人公で、実在したドイツ人実業家オスカー・シンドラーは、お金儲けが上手な遊び人だったが、ユダヤ人への虐待を知り全財産をなげうってユダヤ人を救おうとした。

慕情』は、蝶々夫人のアリア「ある晴れた日に」を参考に作曲されているので、そのフレーズを思いながら聴くようにとのアドバイス。

ヴィスコンティの「ベニスに死す」で使われたのはマーラーの交響曲第5番より第4楽章『アダージェット』。映画に登場する美少年の美しさが当時話題をさらったことを思い出した。老いの苦しみと疫病の蔓延が絡んだ、今に通じる内容だと語る。

荒野の七人」は、黒澤明の映画「七人の侍」のリメイク。バーンスタインの作曲で、ダイナミック。

提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ワーグナーの楽劇『ワルキューレ』より『ワルキューレの騎行』は、コッポラの「地獄の黙示録」で使われたときは、米軍のヘリコプター部隊がこの音楽を鳴らしながらベトナムの村を銃撃するシーンだ。

風と共に去りぬ」の『タラのテーマ』、「ティファニーで朝食を」の『ムーン・リバー』、そしてストラヴィンスキーのバレエ組曲『火の鳥』はディズニーのアニメ「ファンタジア2020」で使われている。

マエストロは東京フィルを、柔軟で、オペラやバレエを新国立劇場でずっと演奏してきたことが成長のもとになり、どんな曲でも弾きこなせる実力があるとほめたたえる。

最後に、今、放送中のNHK大河ドラマは渋沢栄一が主人公だが、渋沢一族は学者や商人、金融機関で働く人が多く、自分は異色の存在。さらに、銀行を作った人だと小学校の教科書に出てきたのをたまたま母親に話したところ、「それはあなたのひいおじいちゃんよ」と言われ、これほどびっくりしたことはないと会場を沸かせた。

どの曲を聴いてもその情景が思い浮かび、映画好きにはたまらない「午後のコンサート」であった。「いやぁ、映画で本当にいいもんですねぇ」これ、わかる人います(笑)

*2021年6月17日現在の情報です*写真・記事の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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