Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

東京フィル定期演奏会 チョン・ミョンフンの『春の祭典』

東京フィルを愛してやまない名誉音楽監督チョン・ミョンフンが2024年最初の定期演奏会に選んだのが、ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』とストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』。2つとも大地を感じさせ、春の息吹を感じたい今の季節にピッタリの曲。自然を音楽に描き出し、ウィーンの春を感じさせる『田園』と、20世紀音楽に衝撃を与えたバレエ曲です。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

これまで、チョンマエストロが東京フィルと共に『田園』を演奏したのは2004年の1月と2016年の9月。一方『春の祭典』は、2004年4月以来というから20年ぶりになります。刺激的でドラマチックで緻密な『春の祭典』に観客は大満足。スタンディングオベーションで讃えました。

まず最初に『田園』です。熟成したタクトで、オーケストラをまとめあげます。のどかで幸せな気分を味わえる『田園』には、各楽章にタイトルがついています。ベートーヴェン自らがパート譜に記し、「田舎に到着した時の愉快な感情の目覚め」。次に「小川の辺の情景」で、自然の香りが濃厚に立ち込めます。フルートのナイチンゲール、オーボエの鶉、クラリネットのかっこうの声が森の中で響いているようです。「田舎の人々による愉快な集い」は、三拍子の舞曲で、突然轟音が鳴り響き「雷、嵐」の省に突入します。最後の「牧歌、嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」は、神話の一場面のような神々しさです。ベートーヴェンは、この作品を「絵画的描写ではなく感情の表出」と強調しました。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

そして、お待ちかね、パリでの初演時、暴動を引き起こしたことで知られる『春の祭典』。当時の観客の意に添わず、怒号が飛んだと言われています。それだけ強烈な一曲だったと言うことでしょう。

チョンマエストロの『春の祭典』は、なぜか心地良く何度でも聴きたくなる。ストラヴィンスキーが、ディアギレフと出会い、従来の価値観をひっくり返しました。ご存じ、美しい旋律や優雅な曲調というのではなく、終始、原始的なリズムと何かが起こりそうな気配を漂わせます。曲は、「大地の礼讃」「生贄の儀式」の2部構成で、不協和音を放ち、乙女たちが踊り、最後は生贄がこと切れるところで終わります。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

この曲、中毒性があるようで『春の祭典』に溺れてしまいそうです。次回のチョンマエストロの登場は6月の第1000回定期演奏会『トゥランガリーラ交響曲」。1990年にパリに建てられたオペラ・バスティ―ユのこけら落としにマエストロが選んだ曲です。当時ご存命だった作曲者メシアンが、この時の演奏に心から感動したと言いますから、今回もまさに1000回にふさわしい演奏になるに違いありませんん。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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