Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

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紳士のためのエンターテイメント

映画『ポトフ 美食家と料理人』 第36回東京国際映画祭 ガラ・セレクション

畑で野菜を収穫する時の土の匂い、手触り、頬を撫でる風、キッチンで料理する時の肉の焼ける音、手をかけて作り上げた極上の透き通ったコンソメスープの奥深い味わい、そしてワインとのマリアージュ。口にふくんだ食感までが伝わって来る映画「ポトフ 美食家と料理人」は、第36回東京国際映画祭で上映され、12月15日から全国ロードショー公開されます。

(c)2023 CURIOSA FILM-GAUMONT-FRANCE2 CINEMA

フランスの緑に囲まれた自然の中にある館で繰り広げられる午餐会に登場する料理は、アートのように美しく、食べる人たちの顔が幸せで満ち溢れ、見ているこちらまで、ひとコース食べたかのような充足感を味わえます。

なんて美しい、なんてゴージャスな作品なんでしょう。そしてセクシーです。

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19世紀末のフランス。美食家ドタン(ブノワ・マジメル)が考案したメニューを、料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)がつくりだす料理は、ヨーロッパ中にその名を轟かせ、料理界のナポレオンと呼ばれていた。ある時、ユーラシア皇太子から晩さん会に招待されたドタンは、最もシンプルで味わいのあるポトフで、もてなそうと決める。ところが、ウージェニーは体調不良で倒れてしまう。ドタンは、彼女に腕を振るって自分で料理を作り彼女一人だけのための晩餐会を開くのだった。

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スクリーンには100年前の1885年の極上メニューの数々が並びます。料理の監修はピエール・ガニェール。三ツ星シェフ。登場する畑の野菜はウイキョウかしら?と想像したり、舌平目のクリームソースで皮の剥ぎ方をじっくりとみたり、仔牛の骨付き肉の焼け具合が絶妙だと感じたり、フランスはジビエの香りを楽しむということを知ったり、知識も増え、五感に訴えかける香り立つような映像の数々です。さらに、ドタンとウージェニーが月明かりの下でワインを飲んでいる場面はさながら絵画のよう。洋ナシのような裸体には目を奪われます。ドタンは、ウージェニーを愛しているのです。

この作品、カンヌ国際映画祭・最優秀監督賞を受賞し、第96回アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表に選ばれました。トラン・アンユン監督はベトナムに生まれ、ベトナム戦争でフランスに逃れ1993年、フランスでセットを組んでサイゴンを再現した『青いパパイヤの香り』でデビュー。大絶賛されました。2作目『シクロ』がヴェネチア国際映画祭最年少金獅子賞を受賞し、いまや名匠と言われています。

東京国際映画祭には、監督と、奥様で衣裳・アートディレクションを担当したトラン・ヌー・イェン・ケー、そしてドタン役のブノワ・マジメルが登壇。美食家として歴史に名を残す人物ブリア・サヴァランを主人公とした小説を原案に、イメージを膨らませ脚本を書き上げたということです。さらに「年を重ね、長く続く男女関係をしっとりと描きたかった」と語ります。ブノワは「料理を作るのは愛の告白だと思う」と語る一方で、撮影で10キロ太ったと会場を沸かせました。

2023年12月15日 映画「ポトフ 美食家と料理人」Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

*2023年10月27日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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