Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

生誕160周年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生

枯葉をカサコソ踏みながら、初冬の世田谷美術館を訪ねた。目指すは「グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生」。素朴派と言われる絵画を、すみからすみまでじっくり自分の目で見てみたいと思った。

アメリカの国民的画家として知られるモーゼスは、ニューヨーク州北部に生まれ。27歳で農場に嫁ぎ野菜や家畜を育てる普通の農婦だった。70代半ばに、関節炎のため刺繍ができなくなり、変わりに絵画を始めた。1938年、地元のドラッグストアに展示されていた作品を見たコレクターが画廊に紹介し、80歳の時に、ニューヨークで初めての個展を開く。そして国内外に広く知られるようになった。

体験に根差した絵画は、どれも愛しい。身近な出来事、風景が絵本のように描かれている。

 

キルティング・ビー》は、大勢で集まってキルトを縫い横のテーブルには食事の支度ができている。きっとキルトを縫った後にはみんなでテーブルを囲むのだろう。近所の仲間たちが集まって、おしゃべりに花が咲く。にぎやかな談笑が目に浮かぶようだ。

私が好きなのは、皆で一緒になって手仕事をしている様子。《シュガリング・オフ》は、サトウカエデ(メープル)の樹液を集め、野外で煮詰めてシロップや砂糖をつくっている。ご存じメープルシロップは、貴重な甘味料として利用されてきた。きらきら光る雪景色の頃、行う。

アップル・バター作り》は、晩夏の行事。林檎を集め、皮をむいて刻み、大鍋で煮詰めていく。バター状になるまで攪拌する。

他にも、石鹸を作ったり、ろうそくを作ったり、楽しく生活していたことが伝わってくる。時に優しく、時に楽しく、実体験と記憶からのイメージを絵画にしていった。

展覧会を監修した成城大学名誉教授の千足伸行氏は「彼女にとって絵は特別な才能のあらわれではなく、生活の延長線上にあった」と語る。どの絵のタイトルも「洗濯物をとり込む」「家族のピクニック」といった日常的なものばかりだ。

そして、さながらマーサ・スチュワートのように、若いころから手製のバターや、ポテトチップスでビジネスを展開し、個展の開会式でもジャムを出すほどだったとか。

東京・世田谷美術館 HP 2022年2月27日まで

 

*特別な許可を得て撮影しています。写真・記事の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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