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紳士のたしなみ

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紳士のためのエンターテイメント

スペインに旅した気分です 「ガウディとサグラダ・ファミリア展」

一度は見てみたいと思っていたスペインのサグラダ・ファミリア聖堂。まるで、その地に行ったかのような、神聖な空間に自分の身を置いたような気持ちになれる展覧会です。

サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

未完の聖堂」と言われるサグラダ・ファミリアは、2021年12月に頂点に星がついた高さ138メートルのマリアの塔ができ、22年12月に4つの福音書作家(ルカ、マルコ、マタイ、ヨハネ)の塔のうちルカとマルコの塔が、残るマタイとヨハネの塔は23年11月に完成予定となっており、現在は聖堂中央の最も高いイエスの塔に着手しています。

 

建築家アントニ・ガウディは、スペイン・カタルーニャ地方のレウスに生まれました。バルセロナを中心に活動し、作品のほぼすべてがスペインの国宝か重要文化財に指定され、そのうち7点が世界遺産となっています。1883年、ガウディは31歳でサグラダ・ファミリア聖堂の2代目建築家に就任しました。

展覧会には、100点を超える図面、模型、写真、資料、そして最新の映像があり、見れば見るほど彼の天才ぶりがわかります。自筆のノートの几帳面で細やかなこと。斬新で、いままでにないものを生み出す柔軟な発想力。幾何学にたけ、放物線から建築を生み出す頭脳。

建築、彫刻、工芸を融合した総合芸術を実現し、建築の造形もたぐいまれなもので、さらに膨大な数の模型を作り、修正しながら聖堂の外観や内部構造を練り上げていきました。

聖堂内部を森に見立て、動植物を丹念に観察して装飾に応用。彫刻は市民をモデルに写真や石膏の型どりを制作に活かしました。

イスラムの多彩色建築やゴシック建築といった過去の建築に学び、そこにカタルーニャ地方の歴史や風土などを加味し、時代や様式を飛び越えたどこにもない斬新な表現で、今も世界中の多くのファンを惹きつけています。

展覧会を歩くと、どうして、このような形になったのか、どうして、完成までにこんなに時間がかかるのか、彼の頭の中に入って考えているかのようです。

圧巻は、サグラダ・ファミリア聖堂に魅了され、いまや彫刻家として45年間関わり続けている外尾悦郎さんの彫刻です。未経験で名もなくコネもない日本人が熱意と努力で研究生、修復家、彫刻家になりました。ガウディが残したわずかな資料をもとにサグラダ・ファミリア聖堂で500余りの作品を制作していますが、今回、「降誕の正面」の彫刻群《歌う天使たち》の石膏像が来日しています。

この石膏像は、2000年に砂岩で制作された石像に置き換えられるまでの10年間、「降誕の正面」に設置され、多くの参拝者を見守り続けてきました。

外尾さんは語ります「天使のにおいであったり、神の面影であったり、そういうものを内包した空気があり、それらを彫刻で表現した」と。さらに「サグラダ・ファミリア聖堂は、人類として必要としている魅力がある」と語ります。この彫刻をこの距離で見られるのは、いましかありません。

天使が歌を歌っているはずなのに、私には苦しんでいるように見えました。「なんと人間はおろかなのか。どうして互いを受け入れず愚かにも戦い続けるのか」そんな風に言っているように見えたのです。

城田優さんの音声ガイドも秀逸だし、学術監修の鳥居徳敏神奈川大学名誉教授いわく「すべてがわかる」図録も、ぜひ手に入れてください。展覧会とは全く別の世界が開けます。

 

東京国立近代美術館 「ガウディとサグラダ・ファミリア展」2023年6月13日(火)~9月10日(日)*会期中一部展示替えあり 

東京の後、滋賀、愛知へ巡回予定

*2023年6月16日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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