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紳士のたしなみ

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日比谷の屋上からオンライン 風が強そうです 西島秀俊登場

昨年に引き続き、東京国際映画祭が国際交流基金アジアセンターとの共催で、世界各国・地域を代表する映画人と第一線で活躍する日本の映画人が語り合う「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」が10月31日から11月7日までの8日間、東京ミッドタウン日比谷の会場から毎日ライブで配信されました。

11月6日(土)は、タイを代表するアピチャッポン・ウィーラセタクン監督と、俳優の西島秀俊。西島さんの素顔を見てみたいと、かなりミーハーな動機での参加です(笑)。西島さんとアピチャッポン監督は、17年前に東京で食事をしたことがある仲だとか。

まずは、カンヌ国際映画祭で日本映画初めての脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』の話から。濱口竜介監督が村上春樹の短編を映画化した作品で主演が西島さんです。

 アピチャッポン監督:知的レベルで響く作品です。シンクロするものがあって、自分にとっては悲しい映画でした。登場人物たちは壊れた部分を持っていて、場所も壊れている。元に戻すけれど元には戻らない。かけらをはめて、壊れたものを戻そうと不可能に挑む。小さなかけらで元に戻ろうと葛藤している。表面化していないトラウマに語り掛ける。そこから自分自身を発見できました。そこで表現できるものは自分の作品『MEMORIA』と共通しています。壊れた陶器のかけらの演技をありがとうございました。

西島:精神的であり、構造としても美しく完成されたものを感じました。これまでの濱口監督作品の完成形なのかなと思っています。

アピチャッポン監督:西島さんは演じるにあたり、特定のキャラクターに関連付けたのですか。それとも無にしたのですか。どういうメソッドで取り組んだんでしょうか。

西島:濱口監督から脚本以外の膨大なテキストが送られてきて、それをひたすら読み続けました。このキャラクターがたとえば、愛について、セックスについてどう考えているか。自分でそのキャラクターの答えを考えて、濱口さんはこう思うということを話し合ったり、作品にはないシーンをリハーサルで演じたりします。そのテキストを声に出して演じ、感情をこめずに読むということをしました。ジャン・ルノワールもやっていたという演出法が面白い体験でした。カメラの前で何かを起こさなくちゃいけないときにテキストが支えてくれました。監督は常に寄り添ってくれて、「感情の量が足りません」というのがダメだしでした。

アピチャッポン監督:言葉が大事な作品ですね。ストーリーを世に出すためのテキストを身体から出すための行為ですね。感情をあらわにしない。キャラクターはミステリアスな存在で、そういったところが好きです。

西島:村上春樹のキャラクターは、小説のキャラクターですから、自分の感情は言葉には出さないで文章の中で説明されています。映画的で活動的なキャラクターに変えたり、ナレーションにしたり、映画的なキャラクターにしないと見てくれないんじゃないかという話もしました。しかし監督が、あなたがやれば、観客はついてきますと言ってくれたので、感情を見せずに、感情を見せるということを常にやっていた、きつい撮影でした。

『ドライブ・マイ・カー』と同時に、今年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれ、審査員賞を受賞した『MEMORIA』は、音と光の表現にびっくりしました。耳鳴りがしそうなほどの静寂で、神聖な感じがすごかったです。記憶と夢がテーマとしてあったと思いますが、眠りと死の違いとは何かといったテーマを追い続けていますよね。

アピチャッポン監督:タイが政治的に混乱していて僕の未来をとらえる視点にも影響が出ました。そこで映画祭で行ったコロンビアに魅了されていたのでコロンビアで撮りました。新しい場所で改めて映画制作の勉強をしようと思いました。映画と夢を繋げ、死とシネマも繋げています。生きる証として映画が必要かなと思うんです。これまでやってきたこと、生きてきた証を追求してしまうんです。ネガティブな意味ではなく、ポジティブに捉え、フルに自分の人生を生きないといけないなと思うし、映画の世界に住む登場人物を作り上げ、登場人物の思い入れもあって、キャラクターは映画の間は生きているがそのあといなくなります。生きる死ぬは色々考えさせられる。コロンビアで上映した時、評判がよかったです。

西島さんは、監督の『トロピカル・マラディ』という作品を愛してやまず、食事をしたときに監督が自分で映画の企画を考えてくれていると話し、その内容にも触れました。さらに、参加者からの質問にも答え、あっというまの時間でした。

11月12日まで見逃し配信がありますので、ご興味のある方はぜひ https://2021.tiff-jp.net/ja/al2021/

*2021年11月7日現在の情報です*写真・記事の無断転載を禁じます

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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