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紳士のたしなみ

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「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展、とても魅かれます!

GWもあっという間に半分過ぎてしまいました。今日は皇居近くの東京ステーションギャラリーの展覧会にご案内しましょう。

フィンランドを代表するセラミック・アーティスト、ルート・ブリュックの全貌を紹介する日本初の展覧会が開かれています。約200点のセラミックやテキスタイルが展示され、彼女の作品の全体像を垣間見ることができます。

ブリュックの父親は画家で蝶類学者、母親は芸術を愛しタペストリーなどの工芸品づくりに秀でていました。美術工芸中央学校でグラフィック・アートを学び、卒業後はグラフィック・アーティストとして、またテキスタイルデザイナーとして注目されていたそんな時、フィンランドの名窯アラビア製陶所から声がかかり、専属アーティストとして1940年代初頭から約50年間活躍することになります。

ブリュックの初期の作品は、陶板の愛らしい作風で、素朴で絵本のようです。毎日手元に置いて眺めていたいようなものばかり。

右側《東方の三博士》1944年 テーブルの天板として制作されました。

《コーヒータイム》1945年

50年代に入ると、製陶所の技術チームは、ブリュックのために新たな道具や素材を開発し、200種類以上の新しい釉薬を調合しました。それが艶やかで深みのある色を生み出したのです。格調高い色にはため息が出ます。版画の技法を応用して、独自の釉薬や型の技術を開発し、1951年のミラノ・トリエンナーレではグランプリを受賞しています。

《魚の皿》1953年―54年

レリーフ作品《母子》は、52年カンヌの国際陶芸展で銀賞受賞。

両方ともタイトルは《母子》1950年代 母子というタイトルの作品をたくさん制作しています。

 

1957年に父を亡くしたブリュックは蝶をモチーフにした連作に着手します。

《蝶たち》1957年

50年代後半から60年代初めにかけて、より大きな作品を制作するようになります。1958年のブリュッセル万博のために制作し、1960年のミラノ・トリエンナーレにも出品されたこの作品《都市》は、タイルや立方体をその都度、組み合わせて置き替えることができます。

手前右側の平台の上《都市》1958年

 

60年代からタイルピースを組み合わせた抽象的で立体的な作品へとダイナミックに移行していきます。建築に組み込まれるような大型のレリーフスタイルへと変貌しました。

 

70年代後半以降は、市庁舎、フィンランド銀行、フィンランド大使館、大統領邸などの大型インスタレーションを手掛けました。数千万個という膨大な手づくりのタイルを一つ一つ丁寧に試行錯誤しながら組み合わせたモザイク壁画は、文字通り壁画で建物に埋め込まれていますので残念ながら見ることができませんが、図録には掲載されています。

最終章は、平面上に光と影を立体的に表現するモノクロームの世界です。

さらに今回は、テキスタイルデザインも紹介されています。何種類もの経糸と緯糸を組み合わせて方形、格子、縞柄などのパターンを作り、糸を重ねることによって重層的な色を創り出します。壁紙もデザインしていて、1958年の作品はフィンランドの壁紙会社で今も製造されているとか。

具象から抽象へ。陶磁器からレリーフへ。まるで違う作家が手掛けたような作品群を見ることができるこの展覧会。自由にのびやかに才能を開花させ、とらわれずに表現していった作品を目の前にすると、余りにも魅力的で離れがたく時のたつのを忘れるのでした。

 

「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展

東京ステーションギャラリー

2019年4月27日(土)~6月16日(日) 10時~18時(金曜日は20時まで、入館は閉館の30分前まで) 休館日:5月6日、6月10日をのぞく月曜日、5月7日(火)展示室は一部を除き撮影可能です。

*2019年5月1日現在の情報です*記事、写真の無断転載を禁じます。*作品所蔵先はすべてタピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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