Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
是非学びたい気になるテーマについて学んでいきます。

紳士のためのエンターテイメント

国立劇場2月文楽公演「心中天網島」(2月4日~21日まで *9日は休演)

近松名作集と題し、時代物と世話物あわせて3作登場する2月。初代国立劇場の最後近松名作集となりました。

第一部(11時~14時32分予定)の「心中天網島」。紙屋治兵衛と、よくできた女房おさん、そして遊女の小春を中心に物語は展開します。実際に起きた事件をもとに、近松門左衛門が書き、1720年に竹本座で初演されました。近松門左衛門は、身近に起きた事件を題材にする世話物というジャンルを「曽根崎心中」(1703年初演)で確立し、「心中天網島」を書いたのは、68歳のとき。代表作となりました。

提供:国立劇場 撮影:中村彰 道行名残の橋づくし (左)紙屋治兵衛:吉田玉男 (右)紀の国屋小春:豊松清十郎

とにかく、治兵衛が情けない。ここまで情けない男にどうして小春は惚れたのかと不思議に思うぐらいです。それほど色男だったと言うことでしょうか。「色男」っていう言葉、いま、通じるかしら(笑)。甲斐性もないのに遊女にうつつを抜かし、さらにその遊女がほかの客に、「本当は心中なんてしたくない」と言っているのを聞きつけ、怒って小春を踏んだり蹴ったり。

「それってどうなの」と思っていると、家に帰った治兵衛は、昼間からこたつにはいって寝ているしまつ。さらに、商売敵に女を身請けされそうになると、今度はプライドが傷ついたと奥さんの前でメソメソ泣くし、どうしようもない。しかし、女房おさんはそれを聞き、小春は「自分が夫と別れてほしい」と頼んだのを聞き届けてくれたのだから、気に沿わない身請けに、きっと自害すると気づきます。そして、身請けするためのお金を工面しようとするのですが、かないません。治兵衛と小春は、心中することになるのです。

 

紙屋治兵衛を遣うのは吉田玉男。治兵衛は、妻子がありながら小春と心中を約束する恋に命を懸ける男です。師匠の初代玉男が得意にしていた役のため、特別な思いがあるそうです。

女房のおさんは、重要無形文化財保持者の吉田和生。健気に、夫を最後の最後まで支える芯の強い女房を演じます。小春は、豊松清十郎。若く一途な遊女です。

提供:国立劇場 撮影:中村彰 天満紙屋内の段 (左)紙屋治兵衛:吉田玉男 (右)女房おさん:吉田和生

最初の「北新地河庄の段」では、金に物言わす太兵衛が小春に横恋慕し、嫌な奴ながらも笑いがこぼれる場面もあります。ほうきを三味線に見立て、治兵衛の悪口を言うさまは面白い。セリフはもとより、節回しのリズム感が絶妙です。

その後に続く太夫、竹本千歳太夫の義太夫のあまりの熱演に引き込まれます。「天満紙屋内の段」「大和屋の段」そして最後の「道行名残の橋づくし」。ここでは、4人の義太夫に5人の三味線で心中の場面を盛り上げます。

第二部は「国姓爺合戦」(15時15分~18時4分予定)。次回もお楽しみに!

*2023年2月8日現在の情報です*記事・写真の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

https://cross-over.sakura.ne.jp/

ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

おすすめのたしなみ