Taste of the gentleman

紳士のたしなみ

紳士のたしなみでは、紳士道を追求するにあたり、
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紳士のためのエンターテイメント

話題の映画『半世界』を、第31回東京国際映画祭で観る

稲垣吾郎ちゃんの記者会見に参加した第一印象は「アイドルじゃなくなっても、キラキラの服着てるんだ」というもの(笑)。いえいえ、俳優さんは、美しい衣装で舞台に上がってくれた方が嬉しいので、ありがたいのですが、作品での役どころが炭焼き職人だったので、その差に私の心がついていかなかっただけなのです。

 

©2018 TIFF

阪本順治二監督のこの作品『半世界』は丁寧につくられ、どこにでもあるような出来事を描き心に染み入る物語となっています。

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3人の同級生は、幼馴染。故郷で父親の跡を継いで備長炭をつくっている紘(稲垣吾郎)、三世代で中古車ディ―ラーを営みながら暮らす独身の光彦(渋川清彦)、家族を置いて一人で故郷に戻ってきた自衛隊にいた瑛介(長谷川博己)。

三人それぞれの人生があり、関わり合い、孤独になり、そこに自分の世界がある。地球という大きな世界を股にかけて生きてなくても、目の前にある世界が自分の生きる大切な世界なのだと、静かに伝えてくれます。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

 

稲垣さんは「世界って何なんだろうなと思ったし、小さいけれど皆それぞれの世界の中では主人公なんだなと思いました。そもそも自分がどういう人間なのかはわからないし、ピッタリな役かどうかはわからなくていいと思うんです。自分の環境の変化があって役者としての第一作目で自分でも知らない自分に巡り合えたことは幸せです」と語りました。

それを聞いて、私、本当に元SMAPの稲垣吾郎ちゃんの記者会見に出ているのだと実感。

©2018「半世界」FILM PARTNERS

 チェーンソーを持って木を伐採したり、頭にタオルを巻いてみかんを食べたり、確かにクールでかっこいい役を演じてきた稲垣さんとは一味違った役柄ですが、何の違和感もありませんでした。

 

「坂本監督が細かく演技指導してくださった。それこそ何十テイクも撮って、たとえばしぐさっていうのはしみついているのでとても難しいんですが、物を指さすシーンも、自分で言うのは変なんですが(笑)、僕だったら優雅にというところを、ぶっきらぼうにとか、ミカンの皮の向き方も男っぽくとか」。「今は『新しい地図』としてその地図を広げていくことに無我夢中です」と、語りました。

©2018 TIFF

 阪本監督は、「初めて会った時の印象が、ごまかさず、自分を前に出さず、たんたんと仕事をしていることから、本当にふっと炭焼き職人が浮かんだんです」とその役柄に行きあたったわけを話し、このテーマについては「日中戦争従軍カメラマンの小石清さんが発表した写真を見て、そこに映されていたのは中国のおじいちゃん、おばあちゃん、子供や動物でした。今、グローバリズムと言われていますが、名もなき人の営みも世界なんだという思いで作りました。間口が狭く、奥行きが深い作品を撮りたかった」と話していました。

誰にも、自分が主人公の自分の世界があります。それが物理的に広くなくても、立派でなくても、有名でなくても、そこに人生があります。一生懸命生きないと、いつ終わりが来るかわからない。ちゃんと現実を見つめ、逃げずに必死で生きなくてはと思わせてくれたこの作品、私は大好きです。

 

 

 

公開は、2019年2月から TOHOシネマズ日比谷他全国公開。

*2018年10月31日現在の情報です。*写真・記事の無断転載を禁じます。

岩崎由美

東京生まれ。上智大学卒業後、鹿島建設を経て、伯父である参議院議員岩崎純三事務所の研究員となりジャーナリスト活動を開始。その後、アナウンサーとしてTV、ラジオで活躍すると同時に、ライターとして雑誌や新聞などに記事を執筆。NHK国際放送、テレビ朝日報道番組、TV東京「株式ニュース」キャスターを6年間務めたほか、「日経ビジネス」「財界」などに企業トップのインタビュー記事、KADOKAWA Walkerplus地域編集長としてエンタテインメント記事を執筆。著書に『林文子 すべてはありがとうから始まる』(日経ビジネス人文庫)がある。

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ダンディズムとは

古き良き伝統を守りながら変革を求めるのは、簡単なことではありません。しかし私たちには、ひとつひとつ積み重ねてきた経験があります。
試行錯誤の末に、本物と出会い、見極め、味わい尽くす。そうした経験を重ねることで私たちは成長し、本物の品格とその価値を知ります。そして、伝統の中にこそ変革の種が隠されていることを、私達の経験が教えてくれます。
だから過去の歴史や伝統に思いを馳せ、その意味を理解した上で、新たな試みにチャレンジ。決して止まることのない探究心と向上心を持って、さらに上のステージを目指します。その姿勢こそが、ダンディズムではないでしょうか。

もちろん紳士なら、誰しも自分なりのダンディズムを心に秘めているでしょう。それを「粋の精神」と呼ぶかもしれません。あるいは、「武士道」と考える人もいます。さらに、「優しさ」、「傾奇者の心意気」など、その表現は十人十色です。

現代のダンディを完全解説 | 服装から振る舞いまで

1950年に創刊した、日本で最も歴史のある男性ファッション・ライフスタイル誌『男子専科』の使命として、多様に姿を変えるその精神を、私たちはこれからも追求し続け、世代を越えて受け継いでいく日本のダンディズム精神を、読者の皆さんと創り上げていきます。

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